オケラは子供の頃に馴染みのあった歌、「手のひらを太陽に」の中でも歌われている、日本に定着している昆虫です。
最近ではその姿を見ることはあまりなくなってしまったでしょうか?
馴染みのない人には下半身がコオロギで、上半身がエビのようなちょっと不気味な昆虫かもしれませんし、ヤゴのように成虫は一体何になるの?と思っている人もいるかもしれません。
今回は、そんなオケラについて詳しくお話ししていきます。
オケラは実は興味深い点をいくつも持つ、魅力の昆虫なのです!
オケラの成虫と幼虫の違い
まずは本題のオケラの成虫と幼虫の違いですが、両者の違いは大きさと色そして翅の有無です。
形状は孵化したときから成虫と同じ形をしています。
食性も成虫、幼虫共に雑食で、植物の根や種子は幼虫のうちから食すことが出来ますし、成虫になってからはミミズや小昆虫などを捕食しています。
幼虫は透き通った黄色っぽい色をしており、初めは翅がありませんが、何度か脱皮を繰り返すうちに翅が生え、体は大きくなり、色もだんだんとこげ茶色になっていきます。成虫の大きさは30㎜程度。
幼虫のうちはよく跳びはねますが、成虫になると跳びはねるというよりはよく走ります。
幼虫は集団で生活し、いずれ親の巣穴を離れて分散していきます。
オケラは成虫でも地上に姿を現すことはほとんどなく、ましてや極小さい幼虫は地上に出てくることはありませんから、通常目にすることはほとんどありません。少し大きくなり、色が濃くなった幼虫は石の下や地表近くの土の中で見ることはあります。
オケラはオケラ、成虫になってもオケラなのです。ヤゴからトンボのような劇的な変化は残念ながらない、というのが結論です。
オケラの特徴
ケラ科の昆虫は世界中に生息しています。
大形の種類では成虫が50㎜にもなります。
全身に短いビロードのような毛が密集し、触覚や脚は短く、頭部と前胸部は卵型をしています。
尾端には触覚と同じくらいの長さの尾毛が2本あるのも特徴的です。
最大の特徴は前脚で、モグラの前脚のような形をしています。
この前肢で土をかき分けて土中を進み、巣穴を作ります。
オケラの生態
オケラの巣穴は地中深くにねぐらとなる縦穴と、そこからエサを探すために縦横無尽に掘られたトンネルからなります。
水分が多く、柔らかい泥地や湿地を好み、幼虫の頃から小さな手で土をかき分けて進みます。
オケラは水中では毛が水を弾いてかなりの速度で泳ぎ、翅を広げて跳ぶことも出来ます。
地中ではショベルカーのようにトンネルを掘り進むという水陸空を自由自在に動き回れる昆虫。
オスは初夏になると巣穴を共鳴室代わりにして鳴き、声を大きく響かせます。
鳴き声は「ジー」とも「ビー」とも聞こえる連続音で、日本では昔からミミズの鳴き声と勘違いされてきました。
卵は巣穴の奥に泥で繭上の容器を作り、その中に産み付け密閉します。
親はそばにたまって卵を保護します。
天敵は鳥類やカエル、イタチ、タヌキ、モグラなどで、特にムクドリはケラの多くいる環境ではケラを摂食していることが知られています。
近年ゴルフ場ではオケラに芝の根を食い荒らされるという事例が増えており、特にスプリンクラー近くの芝や池の周りなどによく現れているそうです。
日本全土で生息数は減ってきていると言われているオケラですが、思わぬところで生き残っているようです。
植物のオケラ
ちなみにですが、オケラは日本人特有の呼び方で、本来はケラと言います。
日本にはキク科の植物でオケラという名前の多年草が存在していて、日当たりの良い山野に自生し、根を乾かして薬用にしたり、若芽を茹でて食用にしたりしています。
昆虫とは全く関係はありません。
(ライター ナオ)