極楽鳥花は、今にも飛び立ちそうな鳥の横顔に似ています。
花屋や園芸店などで見た事がある種は、恐らくstrelizia reginaeのorenge princeというものだと思います。
オレンジ色の嘴を開けた鳥の横顔のような植物です。
苞に包まれている嘴のような部分は萼片で、中には青系の花弁が見えます。
極楽鳥花の学名はストレリチア(strelitzia)で、多くの場合そのままストレリチアと呼ばれています。
極楽鳥花はその和名及び通称名のようなものです。
極楽鳥花を含むストレリチア科について
主な原産国は南アフリカです。バショウ科から独立しストレリチア科となりました。
ストレリチア科ストレリチア属で、ゴクラクチョウカ属ともいわれる事もあります。
ストレリチアの発見は1800年代以前の事らしいのですが、その特異な姿からか幅広く知られる事にはならなかったようです。
確かに何も知らずに初めて目にしたら、花ではないものに見えそうですね。
ストレリチアは南半球に点在しています。
今温室などで目にする事があるストレリチアは、花をつける種のレギネー、ジャンセア、バービフォリアなどがもとになっています。
他の地域に自生するストレリチアは、あまりに巨大な為そこまで多く流通していません。
オウギバショウという名前の植物は聞いた事があるでしょうか。
同じくストレリチア科でマダガスカルのストレリチアです。
旅人の木などといわれる事もあります。苞や花はありますが、ベージュのような緑のようなもので葉と見分けがつきにくいです。
姿が左右対称な事も特徴です。背丈は20mほどになります。
耐寒性がありある程度放って置いても大丈夫な為、吹き抜けのエレベーターなどがある大きな建造物の一階の隅などにひっそり置かれている事もあります。
あまりに大きいものは、かえって視界に入らない事がありますね。
極楽鳥花の特徴など
日本で目にするごく一般的な極楽鳥花は、レギネーという種がもとになっています。
丈は1m程度で葉は50cmくらいと比較的小ぶりであり、耐寒性に優れているので切り花になっています。
日本において耐寒性に優れている、という場合はだいたい摂氏5度くらいまでなら耐えられるというような意味です。
レギネーは背丈があまり変わらいので、温暖な地方で栽培されている事もあります。
花をつけるタイプのものはレギネーとジャンセアなどがそれに該当し、無茎種といわれます。
無茎というのは茎があまりにも目立たないものです。
極楽鳥花の特徴は水が少ない地域でも成長すること、茎や株などの成長の仕方が水平方向になっており背丈があまり変化しない事、成長が遅く特殊な成長方法の為に半永久的に生息できる点です。
なぜこのようになるかというと、植物が背を伸ばし生きていくのに重要な部分である成長点が、茎の下の方にある事が関係しているようです。
一般に植物の生長点は、更に上に成長する為茎の上の方にあったりします。
有茎のものは、ごく普通の植物と同じように茎を上の方に伸ばしていくタイプです。
極楽鳥花の種類
一般に極楽鳥花、と呼ばれている品種には以下のものがあります。
レギネー
苞がオレンジのものは、春と秋に開花します。
花芽が春先に付けばそのまま初夏まで咲き、または夏から秋に開花します。
真夏は花をつけない事が多く、種子から育てる場合も開花させるのは植えてから5年程かかるようです。
苞が黄色のものは、マンデラス・ゴールドといわれています。
ジャンセア
葉がないので、ノンリーフと称される事があります。
土から茎のようなものが突き出して急に苞や萼片、花をつけるものです。葉が全くないものから、中間種といわれる小さな葉のようなものがある種もあります。
レギネーの変異であるようでもあります。
やっぱり葉は要らないね、という事になって葉をつけなくなったのかも知れません。
成長は極端に遅く、不明点が多い為生育は困難です。
乾燥地帯に分布し、周りに何もないところに突然突き出ている植物です。
開花時期は1月~6月です。ジャンセアとバービフォリアがあり、苞が黄色またはオレンジ系です。
極楽鳥花を含むストレチアは、まだわからない部分が多くあるようです。
何といっても多き過ぎて、自生しているものを移動するのも困難が伴い、種子から発芽させるのにも開花するまで数年かかります。
開花時期なども個体差が多いようです。
苞の色の種類も多くはありません。また、真夏には咲きませんね。
ストレリチア属の中で一番大きい花をつけるのが、ストレリチア・ニコライ(strelitzia nicolai)です。
丈は5m以上になり花の部分は40cmにも大型化します。
花なのか苞なのかよく分からないような植物です。株も大型です。
花序も葉も人の顔よりずっと大きいです。
うまくいけば、種子もつくるようです。ストレリチア・ニコライはオーガスタという商品名で見かけますが、違うもののようです。
極楽鳥花の中ではレギネーが基本種とされているようです。花のない有茎のものも葉が大きく綺麗ですね。
極楽鳥花という呼び名について
極楽鳥花は姿形や生育なども変わっていますが、通称名のように使われる、極楽鳥花という名前はどこからつけられたのでしょうか。
極楽鳥という名前は、風鳥の別の呼び方のようでもあります。南半球の熱帯地方に生息する、フウチョウ科スズメ目の鳥です。
長い尾や羽などが非常に美しい事から、特にオオフウチョウという種類の鳥が極楽鳥といわれるようになりました。
いろいろな説があるようですが、欧米人が生きているフウチョウを初めて見たのは1800年代のようです。
海を渡る貿易が盛んになりいわゆる大航海時代が到来し、北半球の人々は見た事もない豊かな色彩の楽園のような世界を知り、そこに棲む美しい鳥たちを愛玩しました。
当時の欧州からすると、失ったはずの楽園を再び発見したような気持ちになったのかも知れません。
珍しい鳥を飼育することが金持ちの間で流行し、いかに美しく誰も見たことがない鳥を見つけるかが競われていたようでもあります。
生きていないフウチョウは、それより以前に知られていたようです。
綺麗な鳥を剥製にし、交易に使おうとしたという説があります。
真偽は不明ですが、ありそうな事ではあります。
極楽鳥およびフウチョウの英名はbird of paradiseですが、姿が美しいからなのか、生きていなかった為につけられた名前なのかはわかりません。
極楽鳥花
美醜というものは観方が変わればだいぶ違います。
極楽鳥花は種類は少ないですが、色の出具合などに個体差があるようです。
日本に本格的に持ち込まれたのは1980年代以降ですから、生育方法もわからない事だらけであり、極楽鳥花という幾分風変わりな呼び方が何故ついたのかも明確ではありません。
花としては好き嫌いがありそうですが、植物としてみるとユニークで関心を惹くものがあります。
日本にははっきりした四季の移ろいがあり、基本的に生きている花はいずれ枯れるものだという認識からずっと変わらないように見える草花は心情的に好まれないところもあるかも知れません。
荒野のような場所にずっと咲いている極楽鳥花のような姿は、花として少し怖いと思う人もいるのかも知れませんね。
極楽鳥という名称はごく普通の植物にはあまりつかないような気がしますから、そのあたりにも極楽鳥花という呼び名の由来が潜んでいるのかも知れません。
(ライター:おもち)