冬の寒空の中、自らの存在を強く主張するかのように咲く寒椿。

その色と独特の可愛らしさは、殺風景な冬の景色の中でホッと心和む存在でもあります。

今回はそんな寒椿についてのお話です。

寒椿の特徴

寒椿はツバキとサザンカの交雑種でツバキ目ツバキ科ツバキ属に分類される常緑中低木です。

枝が横方向に伸びるので、背丈が1mほどと高くなりすぎず、生け垣などとしても最適ですが、獅子頭や立寒椿と呼ばれる品種は背丈が高くなります。

関東地域ではこのシシガシラという品種を寒椿と言っているのだとか。

葉は暗い緑色をしていて、細長い卵形。互生していて、葉の先端はとがっていて、縁には鋭い鋸歯があります。

寒椿の花

寒椿の花は花びらと雄蕊が合わさったツバキの特徴と、花びらが一枚ずつ散るサザンカの特徴を合わせ持っていて、冬に花を咲かせる代表的な植物でもあります。

代表的な花の色は薄紅色ですが、赤や白、桃色もあり、花も八重咲や一重咲き等様々。

 

花芽をつけるのは5~6月頃ですが、開花時期はその名の通り冬の寒い時期で、11~2月頃で、花径は5~7㎝あります。

一番の見ごろは11~12月にかけてで、満開の花を咲かせます。

花の香りは強めで、長い時間をかけて次々に咲いては散り、咲いては散りを繰り返します。

寒椿の種類

寒椿の種類には渋い名前の付いたものがあります。

例えば「昭和の栄」は獅子咲きと呼ばれる大小の花びらが不規則につく獅子頭の園芸種で、真っ赤な花びらが特徴です。

勘次郎葉幹が上に向かって伸び、八重咲で濃いピンク色の花を咲かせます。

寒椿の育て方

寒椿は日当たりの良い場所を好みますが、直射日光が直接当たるような場所では葉が焼けてしまうので、やや遮光が必要です。

水はけの良い場所に梅雨の時期に植え付けるのが最適です。

 

バーク堆肥や腐葉土、漉き込んだような土に浅めに植え付け、上から乾燥鶏糞を少量与えます。

剪定は開花後の3~4月に行い、花芽の出来る時期には控えます。

 

病害虫ではチャドクガに注意が必要です。

チャドクガが発生したら、スミチオン乳剤などを散布したり、卵塊を焼却します。

増やすときには6~7月頃、挿し木をして増やします。

寒椿とサザンカの違い

サザンカとツバキは同じツバキ科の植物で、花などもよく似ていると言われますが、少しずつ違いがあります。

まず、花の時期がサザンカは10~2月であるのに対し、ツバキは12~4月です。

 

また、花の散り方も違います。

サザンカは花が大きく完全に開いて、散るときには花びらが一枚ずつ散っていきますが、ツバキは花がカップ状に咲き、完全には開ききらず、散るときにも花ごとポタっと落ちます。

 

葉の様子も違います。

サザンカの葉はギザギザして毛が生えているのに対して、ツバキはギザギザも毛もありません。

 

もう一つ紛らわしいものには春咲きの椿があります。

これは花の時期が違うので、わかりやすいですが、花に香りがほとんどなく、おしべは筒状、少し内側に丸まったような形で咲くのが特徴です。

しかし最近では園芸種などで交雑したものも多く、サザンカと寒椿を区別することはとても難しくなっています。

寒椿の花言葉etc

寒椿の花言葉は「謙虚」「愛嬌」「申し分のない愛らしさ」と言ったもの。寒空の中で咲く姿や、比較的日陰でも花をつける様子から付けられたと言われています。

また、寒椿はその凛としたいで立ちや、風景の中でひときわ目立つことで、芸能や文化の面でも多く取り上げられています。

 

俳句の世界では冬椿ともいわれ、晩秋の季語として多くの歌人が取り上げてきた花でもあります。

また、近代になってからは、映画のタイトルや森昌子、大川栄策などの演歌歌手のシングル曲のタイトル、山口百恵の曲などでも使われています。

(ライター ナオ)