世の中に不可思議な生態をもつ生物は数あれど、アルテミアほどではないのではないか、と思うほど、アルテミア・サリーナは不思議な生物です。

英語での通称名はシーモンキーです。

 

40年ほど前に日本でも飼育キットが流行していたようなので、聞いたことがある方もいるかも知れません。

彼らの寿命をはかる事ができるとすれば、それはどれくらいなのでしょうか。

アルテミアの生態

アルテミア・サリーナは甲殻類の一種です。

背甲をもたないタイプの生物で、ミジンコやカブトエビなどと近い種のようです。

 

卵生で、塩分濃度の高い塩湖に生息しています。

主な生息地として、アメリカユタ州のグレートソルト湖、フランス、中国などが知られています。

 

現在の日本には生息していません。

塩田があった頃にはどうもいたらしい、といわれますが、真偽は不明です。

 

アルテミアが好む塩分濃度は、おおよそ5%から15%ほど。

海水の塩分濃度がだいたい3,5%である事から、その濃度の高さがよく分かります。

 

アルテミアの英名はbrine shrimpですが、塩水に棲む小さいエビ、のような意味です。

塩分濃度が濃い塩湖では通常の生物は生息できないので、成体になってもたった1cmほどの小さなアルテミアには、天敵らしい天敵はいません。

 

アルテミアが孵化するまでは約40日ほどです。甲殻類特有の最初の幼体の姿であるノープリウス幼生になると、藻などを食べるようになります。

目は1つで、赤い色をしています。体は半透明で脱皮すると目は黒く、2つになります。

ミジンコも隻眼ですが、あまりに小さいので肉眼では確認できません。

 

アルテミアは原始的な構造をした生物です。第2触角といわれる頭の上の方の触角を使い、泳ぎます。

あまりに小さいので、泳ぐというよりちょっと漂っている、みたいにも見えますね。

 

アルテミアが成体になるまで約40日、脱皮は12回ほどだそうです。

成体になるとオスとメスがつながって泳ぎ、交尾を行う事もあります。

 

体は相変わらず透明です。

アルテミアの仲間には9種いるようですが、中には単為生殖を行うものもいるようです。

アルテミアの卵について

わざわざ塩分濃度が高い水を選びひっそりと生息しているアルテミアですが、卵の時代はどう過ごしているのでしょうか。

アルテミアのメスは、環境が良ければ300程の卵を次々に送り出します。

塩湖が干上がったり生息環境が幼体の成長に適さない状況になると、耐久卵というものになります。

 

アルテミアの卵の大きさは0,2mm程です。

卵の成分にトレハロースという卵が干からびない為の物質を持っており、そのことがアルテミアの卵の特徴です。

 

耐久卵を持つ生物は、卵が孵化し生きていけるような状況になってから孵化します。

アルテミアの卵に関しては、10年~20年ほど、卵の状態で環境が適した状態になるのを待ち、生存条件が整えば一日程度で孵化するという事が可能になっています。

アルテミアの寿命など

寿命とは、当たり前ですが産まれてから死ぬまでの期間です。

アルテミアの場合、耐久卵になるかすぐに孵化できるかにより寿命が異なりますね。

成体の寿命は約3ヶ月とされています。

 

アルテミアの祖先は古生代に生まれているそうです。

生物の大量絶滅を何度か乗り越え、今も変わらず生息しています。

 

1億年ほど前からいたにも関わらず、発見されたのは割と最近です。

あまりに小さすぎた事や体が透明であること、塩分濃度が高い水中には生物は存在しないのではないか、という思い込みのようなものがそうさせたのかも知れませんね。

 

アルテミアのような微小な生物の研究ができるようになった要因の一つに、顕微鏡の飛躍的な進歩があります。

望遠鏡と比べるとその進化の仕方はゆっくりめではあるようですが、ヒトには肉眼では見えないものを見たい、という欲求も多くあるようです

 

昨今では生物はいないだろう、と考えられていたような環境下で生きる生命体も発見されるようになりました。

アルテミアのような生物を見ていると、我々の寿命のとらえ方や定義のようなものは存外狭いのかも知れないな、と思ってしまいますね。

最近のアルテミア

アルテミアは手軽に短期間で孵化させる事ができる生餌として、ペットショップなどで魚の餌として売られています。

天然の餌という事で、安心・栄養価も高いという売り出しです。

 

商品名としてはブラインシュリンプエッグというものが多いようです。

熱帯魚などの飼育をされている方にはおなじみかも知れません。

アルテミアについて

最近はリバイバル的にアルテミア、もといシーモンキーの生育キットが販売されています。

 

1970年代くらいに日本でも流行ったとの事です。

当時のパッケージを見るとさすがにギャップを感じますが、ぎょっとしたのはアメリカで販売されていたという、シーモンキー人形です。

 

はっきり言って、アルテミア本体とは一見何の関連性もないように見えるデザインでありインパクトは強烈ですが、当時としては価格も高いようです。

アルテミアも不可思議ですが、我々ヒトもずいぶん不可思議な事を考えるものですね。

(ライター:おもち)