キリンは背が高い事から目立つ動物のうちのひとつではありますが、野生のキリンについては意外に分からない事が多く、最近になって分ってきた事も多くあるそうです。

キリンの生態

偶蹄目キリン科のキリンは、アフリカ大陸のサバンナなどに生息し、長い舌でアカシアなどの高木の葉などを食べる大型の草食動物です。

キリンの舌は青黒い色ですが、長く役立つ舌を紫外線から守る為、表面にメラニン色素を含んでおりああいう色をしているのだそうです。

チャウチャウ犬の舌の色に似ていますね。

キリンが好む植物の葉には生物の体によくない成分も含まれていますが、キリンはその毒素を解毒する独自の唾液を出しています。

食事が済むと木陰などで休み反芻します。キリンの胃は4つです。

 

キリンは長い首を持っていますが、その為に心臓と脳との間に2m以上の落差を持つことになってしまいました。

頭を上げ下げしても脳震盪や立ち眩みを起こさないように、キリンの脳にはワンダーネットとよばれる特殊な毛細血管があります。

 

また、首が長い事により、低い位置にある心臓から頭にまで血液を送る為にはかなりの高圧が必要になります。

その為、キリンはとても頑丈な動脈を持っています。

 

頭との距離関係から、気管が長く肺も大きいのです。

そうでないと体内に必要なだけの酸素をうまく取り入れられません。

あの長い首は綺麗でもありますが、ヒトには分からない複雑さを抱えており、寿命を守る生命線ともいえる仕組みになっています。

 

良く知られているように、キリンの首の骨はヒトなどと同じ7つです。

一つ一つの骨が大きいため、首も長いようです。

これは高木の葉や木の芽を食べるのに適しており、サバンナに生きる草食動物としての知恵でしょう。

 

しかし、なぜそこまで長くなる必要があったのかは、よく分からないようです。

キリンの全長は頭のツノから脚の先まで4,5m~6mあり体重は1tにもなる現存する中では最も背の高い大型動物であり、脚のキック力も破壊的です。

 

そこまで首を伸ばさなくても良いように思ってしまいます。

長距離ではないものの、走るスピードも速いそうです。

頭部のツノは背後のものも含めて5つだそうですが、何故あるかは不明です。

 

キリンはあまり眠りません。立ったまま20分ほど眠るようですが、集中的に眠るのは1、2分だともいわれます。

たしかに天敵であるライオンなどの肉食獣も棲むサバンナではあまりに長く眠っていたら襲われてしまいますね。

動物園に飼育されているキリンは、もっと長く眠るそうですよ。

キリンは4種類?

最近になって、キリンには少なくとも4種類の種がいる事が分かったそうです。

キリンはキリン一種のみであとは亜種である、と考えられていました。亜種としてオカピなどがいます。

ところが今回アフリカ大陸に棲むキリンのDNAを解析したところ、それぞれがまったく異なるDNA情報であった事が、研究者たちを驚かせたとか。

アンゴラキリンやケープキリンなどはミナミキリン(約4万4500頭)、マサイキリンやキタローデシアキリンはマサイキリン(約3万2550頭)、アミメキリン(8660頭)、比較的北部に棲むヌビアキリン、ウガンダキリン、ユルドファキリン、ナイジェリアキリンはキタキリン(4550頭)となるそうです。

 

アミメキリンは日本でもよく飼育されています。網目模様がくっきりしており、赤茶色のような模様です。

この中ではキタキリンの生息数が少ない事から、保護の対象になるようです。

 

キリンはアフリカ大陸の南部から中央部などに生息していますが、生息地域は固まっているわけでもなく、どちらかというと点在しています。

またキリンは群れをつくりますが社会性はみられず、群れの中の個体が入れ替わる事もよくあります。その為、種が混ざっている事もありそうですが、DNA解析の結果としてこの4種についてはそれぞれ別の種のキリンらしい、とする考え方が出てきました。

キリンの寿命

キリンの寿命は野生の場合15~20年、動物園などに飼育されている個体で25年くらいだとされます。

稀に不慮の事故などで命を落とすキリンもいます。

 

ごく最近では、飼育下にある日本国内最高齢のオスのキリンが21歳で亡くなりました。

このキリンは国内では珍しいマサイキリンです。

 

日本国内で一番多く飼育されているキリンはアミメキリンで、今のところ約160頭だそうです。

動物園には珍しい動物を間近に見る事ができるという利点がありますが、生と死が交錯する場所でもあります。

 

実際にアフリカに住む人々はキリンの姿を実際に目にした事がなく、キリンを見て驚く人もいるらしいのです。

日本で初めてキリンの飼育が始まったのは、1907年で上野動物園だそうです。しかしこの時のキリンは非常に早く亡くなってしまいました。

不思議なキリン

キリンの生態の特徴のひとつにネッキングがあります。

オス同士がメスを取り合い、長い首をぶつけ合うのです。

 

普段はおっとり草を食む動物ではありますがこれだけの巨体ですから、大事な首をぶつけ合うのは迫力がある光景です。

しかしそれだけではなく、ネッキングが終了するとキリンはオス同士の交尾のような行動を見せるようです。

 

キリンの出産は多くて2頭、妊娠期間は約15ヶ月だとされ、キリンのメスは立ったまま出産します。

ネッキングのあとのオス同士の行動は、もしかしたらキリンにとっては本気の戦いの後のコミュニケーションなのかも知れませんね。

(ライター:おもち)