近年繁殖数が増え、いまやわたしたちにとって最も身近な猛禽類ともいえるチョウゲンボウですが、その生態はあまり知られていません。
今回は、そんなチョウゲンボウの生態をみなさんにご紹介していきます。
チョウゲンボウの生態
チョウゲンボウは、ハヤブサ目ハヤブサ科に属する小型の猛禽類です。
体長30~35cm前後と、一般的な鳩と同じくらいの大きさですが、鳩に比べて大きな翼をもっており、翼開長は80cmにも達します。
灰色がかった頭部と、黒褐色のまだら模様の入った明褐色の翼、そしてチーターのような目の下の「ティアマーク」が特徴的です。
渡り鳥の一種で、夏季には本州北部から中部にかけて繁殖を行い、冬季になると日本全国にふたたび渡来します。
食性は完全な肉食性で、ネズミなど小型の哺乳類や小鳥、昆虫などを好んで捕食します。
チョウゲンボウの名前の由来
チョウゲンボウは漢字で「長元坊」と表します。
チョウゲンボウという名前の由来には諸説ありますが、その多くは、長元というお坊さんがその名の由来になっていると語っています。
また、チョウゲンボウが空を飛ぶ姿がトンボのように見えることから、トンボを意味する方言である「ゲンゲンボ―」を重ねて「鳥ゲンゲンボ―」と呼んでいたものを縮めて「鳥ゲンボ―」→「チョウゲンボウ」となったという説もあるのですが、どうも強引すぎるような気もします……。
チョウゲンボウの種類
日本国内で一般的に見られるいわゆるチョウゲンボウの他に、アカアシチョウゲンボウやアメリカチョウゲンボウなどの近縁種があります。
アカアシチョウゲンボウは、夏季に中国東北部や朝鮮半島北部で繁殖し、冬季になるとアフリカ南部に渡来して冬を越します。
その過程で日本を訪れる「旅鳥」の一種で、その名の通りの赤い脚が特徴的です。
アメリカチョウゲンボウは、南北アメリカ大陸を行き来する渡り鳥で、ペットや鷹狩のパートナーとして高い人気を誇っています。
チョウゲンボウと人間との関わり
チョウゲンボウは本来、断崖に巣を作り、農耕地や草原で狩りという習性が知られていましたが、繁殖数の増加に従ってか、近年はビルや橋桁など都市部の人工物に営巣する姿が目につくようになってきました。
小型ながらも紛れもない猛禽類であるチョウゲンボウが狩りをする姿は、力強くダイナミックで、非情な弱肉強食の世界が我われの生活のすぐ隣に息づいていることを再確認させてくれます。
また、前述したようにペットとしても高い人気を誇っていますが、猛禽類には体調不良を隠す習性があるため、チョウゲンボウの飼育には豊富な知識と経験が必要となります。
チョウゲンボウの鳴き声
チョウゲンボウは普段、ゴムを擦るような甲高い「キュッ、キュッ!」という声で鳴きますが、繁殖期になると求愛や縄張りを主張するため「キィキィキィキィ!」と早いテンポで連続的に激しい鳴き声をあげます。
チョウゲンボウの鳴き声は非常によく響き、遠く離れた場所からでもその存在を認識することができます。
チョウゲンボウは、猛禽類の迫力と小鳥の愛らしさを持ち合わせた稀有な生き物で、他の猛禽類にはない唯一無二の魅力の持ち主です。
間近でその生態を観察してみたくなる気持ちはわかりますが、現在はフクロウカフェやエキゾチックアニマルカフェなど、チョウゲンボウをはじめとする珍しい生き物と手軽に触れあえるショップが充実していますので、飼育を検討する前にいちど実物に会いに行ってみては如何でしょうか。
飼育をする際には、なにかあったときのために猛禽類を診てくれる動物病院を見つけておくことを忘れないようにしてください。
(ライター 國谷正明)