この記事をご覧になっているみなさんの中には「カケス」という名前に聞きなじみのない方もいるかもしれませんが、自然豊かな地域にお住いの方や鳥類愛好家の間では非常にポピュラーな鳥類のひとつです。

今回は、そんなカケスの生態をみなさんにご紹介していきます。

カケスの生態

カケスは、スズメ目カラス科に属します。

体長30~35cm前後と、一般的な鳩と同じくらいの大きさをしています。

灰色がかった褐色の羽毛と鮮やかな青・黒・白色の翼が特徴的で、屋久島以北の日本全土に広く分布しています。

ネズミなど小型の哺乳類や昆虫の他、植物の種子や果実などを捕食する雑食性です。

小動物や昆虫などの獲物が少なくなる冬場には、夏から秋にかけて集めた木の実を食べて春を待ちます。

カケスの名前の由来

カケスは漢字で「懸巣」と表します。

名前の由来には諸説あり、木の枝から垂れ下げて「懸」けるように「巣」を作ることから「懸巣」と呼ばれるようになったという説や、「カケ」という鳴き声に鳥を指す接尾語である「ス」を組み合わせたものであるという説があります。

 

また、古くは「カシドリ(樫鳥)」と呼ばれていましたが、その由来にも、前述したようにカシやナラなどの木の実を蓄える習性があることから名付けられたという説と、「かし」こい鳥という意味から取られたという説があります。

カケスの種類

日本には本州で一般的に見られるいわゆるカケスの他にも、北海道に生息するミヤマカケス、奄美大島に生息するルリカケスがあります。

ミヤマカケスは、本州のカケスと比べて頭部の羽毛の茶色味が強いという外見的な特徴があります。

 

ルリカケスの体長はカケスやルリカケスよりひと回りほど大きく、その名の通り頭部・翼・尻尾の羽毛が濃い瑠璃色を呈しています。

また年々その生息数が減少していることから、鹿児島県の絶滅危惧2類に指定されています。

カケスと人間との関わり

知能の高い鳥類といえばオウムやカラスが有名ですが、カラスの仲間であるカケスも同様に高い知能を有しています。

特に物まねを得意としており、他の鳥や獣の鳴き声、林業従事者が木を伐採する際に用いるチェーンソーの音や車のクラクションの音などを巧みに模写することができます。

 

さらに、雛から人間に育てられた個体は人語を覚えることもあるそうで、一部では物珍しさから飼育を試みる人たちが絶えなかったそうです。

野生のカケスが他の鳥類や動物、人間の声や機械音を物真似するのは、主な天敵である大型の猛禽類の目を欺くためではないかと考えられています。

また、地面や樹皮などに隠した食料の場所をすべて正確に記憶しているという話もあり、もしかしたら我われ人間にも劣らない優れた記憶力の持ち主といえるかもしれません。

カケスの鳴き声

上記では物真似のレパートリーについて説明いたしましたが、カケスの本来の鳴き声がどのようなものか、みなさんはご存じでしょうか。

そのヒントは、カケスの英名にあります。

 

カケスは英語圏で「Eurasian Jay」と呼ばれています。

「Eurasian」は「ユーラシアの~」という意味ですが、「Jay」はカケスの鳴き声を音写した一節となっています。

 

直訳するならば、「ユーラシアに生息する『ジェー!』と鳴く鳥」といったところでしょうか。

実際に聞いてみるとカラスの声をすこし甲高くしたような鳴き声で、たしかに「ジェー、ジェー!」と聞こえるような気がします。

 

カラスやスズメ、ハトなどと比べると見かける機会の少ない鳥であることは確かですが、日本全土に広く分布していることから、カケスに出会うことはそれほど難しいものではありません。

「ジェー!」という鳴き声が聞こえたら、その場でじっと耳を澄ませてみましょう。

運が良ければ、カケスが上手な物真似を披露してくれるかもしれません。

(ライター 國谷正明)