中秋の名月にお団子とともに飾って祝う秋の七草、7つの名前をあなたは全部言えますか。
ハギ・キキョウ/クズ・フジバカマ/オミナエシ/オバナ・ナデシコ、などと七五調にして声に出して繰り返すと覚えやすいですよね。
その秋の七草の一つの「女郎花(オミナエシ)」とはどんな花なのか調べてみました。
「女郎花」ってどんな花?
オミナエシは、沖縄を除く日本全土や中国、東シベリアの日当たりのよい草原に見られる多年草です。
背丈は100cm~150cmぐらい、開花時期は7月~10月ごろです。
黄色で花びらが5枚の清楚な花がたくさんまとまって咲きます。
万葉集や源氏物語にも登場し、古くから鑑賞の対象となってきた花です。
根を乾燥させて煎じると解熱や解毒作用があるとして漢方薬としても使用されてきました。
切り花にできますが、独特の強い臭いがするので注意が必要です。
「女郎花」の名前の由来は?
オミナエシという名前は、「オミナ」=「女」、「エシ」=古語の「ヘシ(圧)」の意味で、美女を圧倒するほどの美しさということから名付けられたと言われています。
また古くは、餅米を使ったおこわを「男飯」、粟(あわ)ごはんのことを「女飯」と言っていました。花が粟つぶのように黄色くつぶつぶしていることから「オミナメシ」、転じて「オミナエシ」になったのではないかという説もあります。
また、オミナエシに「女郎花」という漢字が当てられたのは、平安時代なかばごろからです。
おもしろいことに「男郎花(オトコエシ)」という植物もあります。
立ち姿や花のつき方はそっくりですが、花は白く、オミナエシよりも力強く見えるそうです。
「女郎花」の「女郎」とは?
オミナエシと日本人のかかわりは古く、和歌や謡などによくでてくる植物の一つです。
宮中では、左右二組に分かれた双方が女郎花の花に歌を添えて出し合い、優劣を競う遊び、「女郎花合わせ」もよく行われていたようです。
「一人のみ 眺めむよりは 女郎花 我が住む宿に 植えて見ましを」(壬生忠峯):一人で遠くからうじうじと眺めているより、女郎花のような美しいあなたをうちに囲って独り占めしたい!
「女郎花 秋の野風に うちなびき 心ひとつを 誰によすらむ」(藤原時平):女郎花のような娘さんよ、秋の風に吹かれてふらふらとなびいていますが、あなたがこころを寄せているただ一人は誰なんですか?
「女郎花 多かる野辺に 宿りせば あやなくあだの 名をや立ちなむ」(小野美材):女郎花が咲き乱れている野辺の近くで泊まったら、女好きなんていう噂が立ってしまうかも。
このような和歌が有名ですが、美しい女性をオミナエシにたとえています。
現代人が「女郎」というと、遊郭で働く女性、「遊女」をイメージしますが、もともとは若い女性全般をさす言葉であり、必ずしも遊女的な女性を指していたとは言えませんでした。身分が高い家出身で後宮に仕える女性をさしていた時代もありました。
「女郎花」の花言葉は?
オミナエシの花言葉としては、「親切」、「美人」、「はかない恋」、「永久」、「忍耐」などが知られています。
奈良のいにしえから男性がイメージする女性像にかかわる言葉ではないでしょうか。
男性が女性に、女性の美しさや性格のよさをたたえるために贈るのがよさそうです。
「はかない恋」などのややマイナスのイメージもあるので、贈るスチュエーションには注意も必要です。
また、オミナエシは8月16日の誕生花にもなっています。
プラスのイメージの花言葉を添えてプレゼントするとよいでしょう。
まとめ
現代に咲く色とりどりに鮮やかな花と比較すると、オミナエシは山野にひっそり咲いている地味な花というイメージです。
けれどもいにしえの時代は、美女をも圧倒する美しい花ととらえられていたんですね。
今年のお月見のときには、お団子ばかりに目を向けず、オミナエシの清楚な黄色い花をじっくりと鑑賞してみましょう。
(ライター sensyu-k)