日本にはたくさんの童謡があり、数十年前に作られた歌が今でも歌われていることは珍しくありません。

その童謡のうち「里の秋」という歌に焦点をあてていきます。

里の秋とは

里の秋とは日本で作詞作曲された童謡で、日本の歌百選にも選ばれたヒット曲です。

作詞は斎藤信夫、作曲は海沼實で、歌い手は川田正子です。

 

1948年にレコードが発売されたとても歴史のある曲です。

日本の歌百選に選ばれた背景には、小学校などの音楽教材として長い間採用されてきたという実績がありました。

 

この日本の歌百選とは、2006年に作られたものです。

文化局とPTA全国協議会が協力して、童謡・歌謡曲などから101曲を選出しており、親子で長く歌い継いでもらいたいという目的があります。

 

百選と言っているのにも関わらず選出した結果101曲になってしまったのは選びきれなかったということが理由だそうで、それだけ日本には素晴らしい楽曲が存在しているということの証明なのでしょう。

歌詞の紹介

もともと里の秋の歌詞は曲として作られたのでなく、太平洋戦争の最中に戦地に向かった父に向けた慰問文として書かれたものでした。

それは「星月夜」という曲名で現在の里の秋と1番と2番の歌詞は同じですが、3番と4番に関しては異なるものでありました。

 

それが曲名と歌詞が変更され今の里の秋が完成することになったのです。

曲名もまるっきり変わることとなり歌詞も半分が変えられました。

 

3番と4番に関しては削除され新しく現在の3番の歌詞があてられました。

なぜ歌詞が変えられることになったのでしょうか。

 

それは歌詞の内容が、軍国主義にのっとったものであり軍事力を優先させるような思想に基づいていて、戦後の日本にはふさわしくないと考えられたからです。

3番と4番はこの思想が前面に表現された歌詞でした。

 

当時の歌詞の3番は、戦争に旅立った父親の健闘を祈っている様子が書かれています。

4番は、自身も大きくなったら父親のように兵隊となって国を守るといった歌詞になっています。

 

現代の日本は戦争を起こさないという立場をとっているため、今となってはこのような歌詞の曲が作られることは普通ありません。

歌詞が変わっていない1番では、静かなふるさとの秋夜を母親と二人で過ごしているようすが歌われています。

 

そして2番では夜空の中戦争に向かった父親を思う歌詞になっています。

そして歌詞が一部変更となった現在の3番は、健闘を祈るのではなく、無事に帰ってきますようにという内容になっています。

歌詞に出てくる夜鴨とは?

そんな秋の里の2番では「夜鴨」という言葉が歌詞に入っています。

具体的歌詞の一部を抜粋すると「鳴き鳴き夜鴨の渡る夜は・・・」となっています。この夜鴨とはいったい何なのでしょうか。

そもそも鴨はカモ科の鳥類で、日本において様々な地域で見ることができます。

川や湖にいることも多く、可愛い見た目から人気もある鳥です。

 

公園にある池にいることも多いですが、そのとき数羽の子連れで泳いでいる鴨もよく見かけます。

鴨の種類によっても変わってきますが、基本的に鴨は子連れの団体で過ごすことや、夫婦の2羽でつがいになって生活していることが多いです。

 

しかしオスの鴨はメスが子育てをする時期になると離れていってしまう習性があります。

そのため秋の里の歌詞において鴨は父親を彷彿させるような存在であるとも考えられています。

鴨に例えて旅立ってしまった父親を思い出す様子を2番では歌っているのです。

秋の里に出てくる夜鴨は父親を連想させる

秋の里は後世に継いでいって欲しいと選ばれた日本の歌百選の一つですが、その歌詞の内容は歴史的な背景を持っています。

戦争を肯定するような歌詞まで含まれていて改訂されることにもなりました。

夜鴨を引き合いに出して、遠くにいる父親を心配する内容となることで戦後の時代にも即した歌となったのです。

ライター yuki_1