きれいなものには毒がある。特に青い生物や植物には、他とは違う魅力がある気がします。
アイゾメヤドクガエルこと、藍染矢毒蛙
英名はdyeing poison dart flog、染められた矢毒蛙。
アイゾメヤドクガエルは、ヤドクガエル科の中では大きく、3~6㎝くらいまで成長します。
ギアナやブラジルなど、南アメリカ大陸北東部に生息する陸生のヤドクガエルの一種です。
彼らは皮膚呼吸をするため乾燥に弱く、熱帯地方の中でも降雨がある地域を棲み処としています。ペットとして人気があるらしいため、個体数はやや少なめです。
アイゾメヤドクガエルの特徴は、何といっても体色がド派手なこと。
濃い藍色と鮮やかな黄色の補色効果を意図したかのような大胆な色使いと暗号のような模様。
一度見たら忘れられません。個体によって、模様の出方や色加減が異なります。
高いぜ!身体能力
アイゾメヤドクガエルについて特筆すべき点は、高い身体能力です。
前脚の吸盤を使い、素早く木を登る姿はさながら忍者のよう。
また、後ろ脚の筋肉が発達しており、跳躍力もかなりのものです。カエルってこんなこともできるんですね。
カエルはとても小さな脊椎動物ですが、骨格は意外にもしっかりとしています。
現存する種の中では古参の部類に入る両生類は、海から上がってきた時に重力に耐えうる骨格を、長い時を経て得てきたと考えられます。
彼らは主に昆虫などの節足動物を食べます。
小さいアリなどを食べているようです。
摂食する昆虫から、毒を得ているのではないかと言われています。
毒より子育てに関心があるの
アイゾメヤドクガエルのメスは、雨季になると葉の上などに卵を産みます。
卵の数は多くても20個くらい。
それをオスが守り、卵から孵化した順番に幼生(オタマジャクシ)を水のあるところへ連れていきます。
ほほえましい光景ですね。
オスが積極的に卵や幼生を守っています。
他のカエルにはみられないヤドクガエル科特有の行動だそうなので、毒性よりもこの行動に関心を持つ研究者も多いようです。
Don’t Touch
それでも気になるその毒性。
アイゾメヤドクガエルの毒が、小さな体の中でどのように合成されているかは不明です。
飼育下のアイゾメヤドクガエルは野生の昆虫を食べないので、危険はないとされているようですが、確実なことはいえません。
派手な体の色は、あっしを食らうと後悔しますぜ、というアイゾメヤドクガエルからの親切なメッセージです。
姿かたちそのものが威嚇のように思える生物です。
青い生き物たちはどのように青くなったか
青く見える動物は、爬虫類や昆虫、両生類などにみられますが、多くはありません。
アイゾメヤドクガエルは青味が強く、またコバルトヤドクガエルという真っ青な体に黒い斑点があるヤドクガエルもいます。
両生類特有の分泌腺がある皮膚のぬめり感と相まって、とても鮮やかなブルーに見えますね。
動物の体の色には食べ物が影響しています。
食物に含まれる色素が体の色に出るのですが、ブルーの食べ物を食べても青い色素はを作ることはできないのです。
それがどうしてかは、まだ分かっていません。
青い色素がないのになぜ青く見える生き物がいるかというと、構造色という、色素とは違う光の仕組みを持っているからだそう。
青い色素を持っていれば、青以外の光を吸収し、青を反射します。
その個体は青い個体ということになります。
構造色とは、光の強さ弱さや錯乱などによって起こる光の現象です。
「青く見えるようにしている」という事で、青い色素をもっているわけではないようです。
面白いですね。
生物の色はいつからあるのか?
生き物が体に色を持ち始めたのは、おおよそ6億年前からだとされています。
古生代の初め頃でしょうか、地球上に骨格を持つものが出始めた頃です。
海で生命体が産まれた時代、それらの生き物たちは太陽の光のみを感知して生きていたので、色を知覚する器官はできていませんでした。
この時点では、まだ世界に色がなかったのです。
時はあっという間にどんどん流れ捕食生物たちの視覚が発達し、それに伴い被食生物も体の色に工夫をする必要が生まれ、徐々に生き物の色というものが意味を持ち始めました。
あるものは自分を守る為に、または繁殖の為に、体の色を必要とするようになったのです。
生き物たちはこのような数々の試行錯誤を繰り返して、自分にぴったりの色を見つけたのです。
(ライター:おもち)