みなさんは「リンゴドクガ」という名前を聞いて、どんな虫を思い浮かべるでしょうか。

リンゴのような模様のある毒蛾? リンゴを食べる毒蛾?

残念ながら、どちらも正解とはいえません。

今回は、驚きに満ちたリンゴドクガの生態をご紹介していきます。

リンゴドクガってどんな虫?

リンゴドクガは、チョウ目ドクガ科に属します。

北は北海道から南は屋久島まで沖縄県を除く全国各地に分布しており、その名のとおりリンゴやナシ、サクラなどバラ科の樹木の周辺でよく見ることができます。

リンゴドクガの成虫の生態

リンゴドクガの成虫は、全長約2.0cm前後、翅を広げたときの大きさは4.5~6.0cm前後とやや小ぶりです。

4-5、7-8月にかけて見ることができます。

外見は蚕に似て、全身を白くふかふかした柔毛で覆われており、マスコットのような愛らしい姿をしています。

 

また、危険を感じると擬死(死んだふり)をするという珍しい習性を持っています。

死んだふりをするときにはお尻から体液を撒き散らすという徹底ぶりで、真に迫った死にっぷりはこの習性を知らなければ思わず騙されてしまうほどの高い完成度を誇っています。

擬死を行うことでリンゴドクガの体には大きな負担が掛かってしまってしまいますので、可愛いからといってむやみに触らないようにお気をつけください。

リンゴドクガの幼虫の生態

リンゴドクガの幼虫は、前述したリンゴやナシ、サクラといったバラ科の樹木の他に、クヌギやコナラなどのブナ科の樹木やブルーベリーなどのツツジ科、ヤナギやクルミなど様々な植物を餌として成長します。

全長は最大でも3.5cm前後と小ぶりですが、全身を長く密集した毛で武装しているため、実際よりもかなり大きいように見えます。

その体色は蛍光黄色や緑色、赤色や白色など、バリエーションは様々です。

 

リンゴドクガの成虫が危険を感じると死んだふりをするのに対して、幼虫は刺激を受けることで体に大きな黒い斑紋が出現します。

鳥類や大型の昆虫類などの天敵を威嚇するためだといわれていますが、その効果のほどは定かではありません。

リンゴドクガには毒がある?

リンゴドクガは、その名のとおり毒を持っています……と思わず言いたくなるところですが、実際は一生を通じて無毒です。

あれほど毒々しい外見をしている幼虫も、触ったところでなんの害もありません。

“見掛け倒し”とはまさにこのことですが、毒を持っているような外見を装うことで外敵からその身を守っています。

この記事を読んでいるほとんどの方は、リンゴドクガの幼虫の姿を見て、「毒がありそうだから近寄りたくない」と感じたことでしょう。

リンゴドクガの幼虫の擬態は、少なくとも人間に対しては抜群の効果があるようですね。

リンゴドクガと人間との関わり

リンゴドクガの幼虫は、前述したように様々な種類の樹木を餌としているため、樹木を食害する害虫として駆除の対象にもなっています。

また、その毒々しい外見から、強い毒を持つ害虫だと誤解されてしまうことも少なくありません。

一方では、幼虫、成虫ともに愛嬌のある姿をしていることから、愛好家の間ではペットとしての人気も高いそうです。

リンゴドクガの飼い方は?

リンゴドクガの幼虫は非常に目立つ外見をしています。

サクラやヤナギ、クヌギやコナラ、カエデやポプラなどの樹木に生息していますので、それらの植物を発見したら、注意深く観察してみましょう。

リンゴドクガの幼虫を捕獲したら、止まり木とともに、餌となる葉っぱを数枚採取します。

 

それらのものを大きめのプラケースなどに収容したら、直射日光の当たらない風通しの良い場所に置いておきます。

適切な環境を保ち、餌となる葉っぱを切らさないようにしておけば、幼虫はいずれ繭を作ります。

羽化した成虫は、一切食事を摂らず、幼虫時代に蓄えた栄養分を消費することで生き延びます。

ひとしきり観察をした後は、生息地に放してやりましょう。

リンゴドクガの幼虫を見つけたら、勇気を出して手を触れてみては如何でしょうか。

一生懸命に威嚇する可愛らしい姿が見られるかもしれませんよ。

(ライター:國谷正明)

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