子供の頃、ホタルが光るのを見たことがあります。自然の暗闇の中で見る動く光源は、不思議な感じがするものです。
人工的な明かりとはまったく違い、予測のつかない動きをします。
その時見たのはホタルの成虫でした。
揺らめく光がとても綺麗ですから、虫が苦手な方でもホタルには親しみを持てるかも知れませんね。
今回は卵が発光するらしい、ゲンジボタルのお話です。
ゲンジボタルの出身地
ゲンジボタルは日本産のホタルです。
生息地は主に本州・四国・九州で、日本にしか生息していません。
その為か、日本で「ホタル」というと「ゲンジボタル」を指すことも多いようです。
成虫の大きさは雄は1.5㎝、雌は2㎝ほどにもなり、日本に生息するホタルの中では最大級です。
ゲンジボタルの生態と特徴
ゲンジボタルの特徴は、卵から幼虫まで綺麗な水の中で育つ事です。
ホタルの種類の中には、一生を陸で過ごすものもいます。
日本では幼虫まで水の中で育つホタルはゲンジボタル、ヘイケボタル、ヒメボタルの3種類が確認されています。
「ホタルは水が綺麗なところにいる」というのは本当で、特にゲンジボタルは、水が汚れてしまうと生き延びられません。
引き合いに出される事も多いヘイケボタルも幼虫まで水中で育ちますが、こちらは多少水の汚れに強いようです。
ゲンジボタルの一生、卵から幼虫の時期を流れる水の中で育つ
ゲンジボタルが卵でいる期間はおよそ25~30日。
直径は0.5㎝程です。6月半ばから7月頃に水辺の苔に産みつけられます。
卵から孵化したゲンジボタルの幼虫は、水の中に入りカワニナという巻貝を食べて育ちます。
肉食ですね。盛んに養分を摂りながら翌年の2,3月頃になるまで、5,6回脱皮し流れのある綺麗な川で過ごします。
土の中の温度と外気温が14度程になった頃、幼虫は土の中にもぐり、サナギになります。
約ひと月後、6月から7月頃になるとサナギから羽化し成虫になって土の中から出てきます。
光る卵、ゲンジボタルはShining, Night and day
結論から言うと、ゲンジボタルの卵は発光します。
昼も夜も光り方は弱く成虫になった時の様な光り方ではないようですが、発光します。
ちなみにサナギになる準備ができて水の中から出てくる幼虫の時点でも、発光しているそうです(個体によります)。
成虫になってからは言わずもがな、発光します。
という事は光り方に差はあれど、ゲンジボタルは昼夜問わずほぼいつも発光しているようですね。これは驚きです。
なぜ発光するのか、光を出す生物について
生まれた時から発光しているゲンジボタル。こんなにも光る理由は何なのでしょうか。
まさか自己顕示欲の現れでもあるまいし、普通に考えると、光ると目立って天敵に襲われやすいのではないか、と思います。
しかしゲンジボタルの卵や幼虫が光る理由は、まだ解明されていません。
実は幼虫や卵が発光するホタルは世界中に多くいます。むしろ珍しいのは、成虫になっても光る事です。
そもそも光る生物は主に海に棲む生物に多くみられ、陸生のもので光るのは少数派だそうです。
何となく、ホタル=光る昆虫だと思ってしまいますが、それは当たり前に見られる光景というわけではないのです。
大人になったゲンジボタルの光り方
成虫のホタルが発光するのは、交尾の相手を探す為だとされています。
飛びながら光るのが雄で、葉などにとまり発光するのは雌です。
ホタルの種類によって光り方が違うのは、種類を間違えないようにする為らしいです。
確かに間違えると大変な事になりそうです。
すみませんでした、では済みそうにありません。
発光のメカニズム
成虫のホタルが光るメカニズムについても、はっきりとは分かりません。
お尻についている発光器が光る事は、はっきりしています。
光るメカニズムについてはお腹の部分にあるホタルルシフェリンという物質が酸素と関係して光るのではないか、と言われているようですが、まだ研究段階です。
ゲンジボタルは大人になると、ほぼ何も口にしません。
一応口は付いているのですが、それは摂食の為に使われていません。ミステリアスな虫ですね。
ゲンジボタルと人間との関わり
成虫のホタルは関西と関東で点滅の仕方が異なるそうで、光も強く体が大きいゲンジボタルはかなり人気のようです。
ホタルというと、光るから綺麗だけど寿命は短く儚い、という印象がありますが、大人になるまでじっと水の中や土の中で栄養を蓄え厳しい生存競争を勝ち抜き這い上がる姿は、どこかしら力強いものを感じます。
「蛍」は、夏の季語。「源氏蛍」「平家蛍」「夕蛍」「蛍火」など沢山の季語があることから、昔から人々がホタルを生物として、また日本古来の文化として愛でてきた様子がうかがえます。
ゲンジボタルのように発光する生き物は、自ら光を出しています。人間は光るものを発明できても、自ら光る事はできません(当たり前ですが)。
私たちには到底できない事をしているホタルを、珍しがって大切にしてきたのかも知れませんね。
(ライター おもち)