バーラルという動物を知っていますか?

ウシの用でウシでなく、ヤギの用でヤギでない、それならばヒツジなの!!??

今回はそんなバーラルについて、詳しくお話していきます。

バーラルの特徴

バーラルはネパールやチベット、ブータン、インド、パキスタン、中国南部などのヒマラヤ山脈からチベット高原にかけて分布しているウシ科の動物で、一見ヤギに似た感じを受けますが、顎髭がないのが特徴です。

 

いくつかの亜種に分けられていて、体色は青みを帯びた灰色や茶色を帯びた灰色、腹部は白くなっていますが腹部との境目は黒っぽくなっています。

雌雄共に角があり、オスの角は横に広がった感じで後上方に曲がって伸びていて、基底は太くて長さは80㎝程度に達するものもいます。

 

これに対してメスの角は短くて20㎝程度のものがほぼ真っすぐに伸びている状態です。

身体も雄の方が大きいのですぐに見分けがつきます。

バーラルの生態

バーラルは山岳地帯などの岩場のある斜面に生息していて、夏季には10~50頭程度の群れを作って、標高3500~5000m程度の高地で生活しています。

しかし、時に5000mを超えるところにも姿を見せることもあり、群れの数も食料事情によっては100頭を超える集団になることもあります。

 

餌の少ない秋になると1頭のオスを中心とした少数の群れになり、標高の低い所に降りてきます。

日中の間に活動して主に草を彩色しますが、餌の少ない時期にはハーブや樹皮、低木なども食します。

 

外敵はユキヒョウで、バーラルの子供はキツネや和紙などに襲われることもあります。

敵に襲われそうになると体を動かさず、岩の間でじっとしていますが、これは体色が保護色になっているため。

 

逃げる時には急な崖の斜面を素早く移動します。

繁殖期は11月下旬から2月頃。

 

妊娠の期間は4~5ヵ月程度で、一回の出産で1~2子を出産します。

メスは2年程で成熟しますが、オスは5~7年で完全に成熟して、角は45~55㎝程の長さになっています。

飼育下での寿命は20年程度と言われますが、野生では10~15年程です。

スーチョワンバーラル

スーチョワンバーラルはバーラルの亜種の1種で中国四川省に分布しています。

体色は茶色や茶褐色、灰色を帯びたような褐色で、角は雌雄両方共が持ちますが、体はオスの方が一回り程大きくなっています。

 

中国では岩羊とも呼ばれ、3000m以上の起伏の激しい山岳地帯に生息しています。

昨年6月に金沢動物園で2頭のスーチョワンバーラルの赤ちゃんが誕生し、話題を呼びました。

 

日本国内では金沢動物園の他にも群馬サファリパークに1頭、姫路セントラルパークに19頭、金沢動物園で12頭ほどが飼育されていて、金沢動物園にもオスメス6頭ずつの12頭が飼育されています。

動物園で飼育されているスーチョワンバーラルは繁殖期になるとオス同士の角突きが頻繁に行われるようで、顔面を負傷するオスが多くなるのだそう。

 

成獣になると体重は60kgほどになりますから、治療するのも大変。

通常は麻酔を打つことによってその間に治療するという方法なのですが、金沢動物園では伝統的な方法でバーラルの角をフェンスに縛り付けて固定し、治療を行っているようです。

 

ゲージの外から静かにバーラルの角にロープをかけることが出来たら、成功です。

また、比較的小さなメスの場合は力づくで抑え込んで治療することもあるようですが、意外に動きが速く、垂直にも移動するので捕まえるのは大変なのだそうです。

バーラルの現状

バーラルは現在食料として狩猟されている他、家畜の放牧地の拡大によって生息域が減少傾向にあります。

生息数の減少も懸念され、中国のある省では保護に乗り出したところもあります。

(ライター ナオ)