田んぼや用水路、池の水を覗いてみると、たくさんのおたまじゃくしとタニシの姿が見える景色、日本の農村地帯の原風景といえ、昔はこのような風景がどこにでも見られたものです。

今では田んぼの中の生き物もほとんど見かけなくなり、タニシという言葉には郷愁さえおぼえるほどですが、今タニシはペットとして注目を浴びています。

なぜタニシを飼ったほうがいいか、エサには何をあげたらいいかなどについてまとめます。

タニシとは?

タニシとは、タニシ科の淡水巻貝の総称で、南米と南極大陸を除く各大陸の淡水に生息している巻貝です。

貝は全て右巻きです。貝の大きさは1~8cm程度で、5cm以下のものが多く見られます。

 

水田や池沼などの泥地に棲み、冬は泥中にひそんでいますが、春になり水が温かくなると、泥の上を這い回ります。

オスの個体とメスの個体がいる雌雄異体で、卵は産まず稚貝をお腹で育ててから産む卵胎生です。

頭に1対の触覚をもち、その根本の外側に目がついています。オスの右の触覚は生殖器になるため曲がっているなどの変化が見られ、メスとの区別がつきます。

日本のタニシ

稲作の普及とともに水田や水路が多く見られる日本では、人々とタニシの関わりは深く食用としてきた地域もあります。

日本に生息しているのは、マルタニシ、オオタニシ、ナガタニシ、ヒメタニシの4種です。

マルタニシ

貝の大きさは約4.5~6cm、日本中に生息しています。

乾燥に強く、農閑期の水田や干上がった溜池などでも泥に潜って耐えますが、極度の乾燥や水質の汚染、汚濁などには弱いので、現在では絶滅危惧種に指定されています。

オオタニシ

貝の大きさは約6.5cmと少し大型です。

乾燥して干上がることのない池や沼、湧き水がある場所を好み生息しています。

日本中に見られ大型なので食用に利用されてきました。

ナガタニシ

貝の大きさは最大7cmで、琵琶湖のみに生息しています。

殻高は最大7cmほどになり、他種よりも貝の色が緑がかっています。

これも大型なので食材に使用されてきました。

ヒメタニシ

貝の大きさは約3.5cm、水田、池沼、用水路など日本のタニシの中ではもっとも多様な環境に棲むことができます。

また汚染にも比較的強いので、日本でもっともよく見られるタニシです。

タニシは何を食べるのか?

タニシは水槽面にこびりつくコケや藻類を主食としていますが、そのほかにも水槽の沈殿物、微生物などなんでも食べる雑食の面ももっています。

タニシの食性は、

  • 刈り取り食者(グレイザー):物の表面に着生する藻類を削り取って食べる。
  • デトリタス食者:水底の沈殿物を食べる。
  • 濾過摂食者:水中の懸濁物をエラで集めて食べる。

の3つの面をもっており、タニシはかなりの状況変化のなかでも生き延びることができます。

タニシによる浄化作用

タニシの食性をみればわかるように、タニシを水槽に入れておくと、水底に溜まった他の生き物の食べ残しや微生物及びその死骸などを食べます。

そして石や壁面の苔などを削ぎ落として食べます。さらには、水中に漂っている小さな微生物などの養分をエラでこして食べます。

このように水質浄化の効果はかなりのものなので、タニシは、優秀なクリーナー生体、つまり水槽の掃除屋さんと言っても過言ではありません。

タニシの飼育方法

【用意するもの】

  • タニシ:自分で捕まえるか、ペットショップで購入(例:ヒメタニシ100~300円、マルタニシ800円程度)
  • 水槽
  • 底床用の砂・大磯砂など
  • 水:カルキを抜いたもの。できれば弱アルカリ性の硬水

【注意点】

  • エサは特に不要。
  • 飼い始めで水がきれいすぎるときは、水草を植えるか植物性の人口飼料を与える。
  • 逃げないように蓋をする。
  • 温度は0~35℃ぐらいまで生存可能。寒くなると砂にもぐったりして冬眠するが、水槽全体を凍らせないようにする。直射日光は避ける。

メスとオスを一緒にしておくと、6~8月ごろに3~5mmの稚貝が産まれるかもしれません。

ヒメタニシは、世界中から嫌われ者として有名なジャンボタニシなどと違って爆発的に増えることはありません。

 

卵胎生なので、卵が子貝になるまで体内で保護して、1回で数個から十数個ずつ産み落とします。

卵を産み、爆発的に増えるような種は日本在来のタニシではありません。

まとめ

そういえば、学校などで飼っていたメダカの水槽には、タニシが入っていたような記憶があります。

あれは、特別にエサをやる必要もなく、水質浄化に役立つからだったかもしれませんね。

メダカなどを飼っている方は、タニシも一緒に飼育してみてはいかがでしょうか。

(ライター sensyu-k)