エジプトのスフィンクス、三越前のライオン、沖縄のシーサー、神社の狛犬、獅子舞の獅子、これらはすべてライオンをモチーフにしたものです。

ライオンは、古代から権力の象徴や守護神、招福駆邪の縁起物として人々に崇められてきました。

そんな百獣の王と呼ばれるライオンの王者らしい動きや骨格の特徴について調べてみます。

ライオンはネコ科の動物

百獣の王、ライオンはネコ科の仲間であることは周知されていると思います。

動物園などでライオンを観察してみると、特にたてがみが立派なオスライオンは「威厳」・「風格」などの面では全く異なりますが、ネコそっくりのかわいらしい動きをすることがありますよね。

ネコ科のなかではトラにつぐ大型種で、現在はアフリカのサハラ砂漠以南に生息しています。

徐々に生息区域が狭まっており、インドライオンは絶滅の危機にあります。

 

ネコ科のなかでは珍しく社会性があり、メスと子ライオンとオスとの群をつくり、メスの集団はチームプレーで狩をします。

一方オスは縄張り争いをして群を守ります。

ライオンの骨格の特徴

ライオンの頭骨はトラに似ていますが、前頭部が凹んでいて平らになっています。

眼窩後部もやや短く鼻骨がより広く開いていますが、頭骨でトラとライオンとの区分はつきにくいようです。

ライオンの頭骨は、ネコなどと比べて目と鼻先の間が長いのですが、そのため大きな口を開けて獲物を咥えることができます。

またライオンの鼻筋が非常に高くて広いのは呼吸器官である鼻が発達していることを示しており、さらには肺が発達していることを証明しています。

ライオンとネコの違いとは?

さて、ライオンとネコの違いはなんでしょうか。

まず、見た目ライオンのオスにはたてがみがあり、メスより体が大きいことが挙げられます。さらに、しっぽの先に房状の毛が生えています。

骨格の面で比較すると、ネコの頭骨が丸っこいのに対して、ライオンの頭骨は目と鼻先の間が長いので大きく口を開けて吼えたり、獲物に噛み付いたりすることができる構造になっています。

ライオンのエレガントな動きの秘密

ライオンの動きは、百獣の王にふさわしく堂々としており、しかもエレガントですよね。助走もせずに音もなく高いところに飛び乗ったり、待ち伏せをして獲物が現れると瞬時に襲いかかったりすることができます。

 

ライオンの動きに適した身体の秘密は、骨があまり目立たず全体を覆っているしなやかな筋肉であると思われます。

馬は体重の20%が骨であるのに対して、ライオンの骨は体重の13%程度です。

 

さらにライオンの前後の脚は先端までよく動き、脚ばかりではなく胴部も非常にしなやかに動きます。

しっぽの動きの表情も豊かであり、それらがライオンの王者らしい動きをつくっているといえるでしょう。

ライオンの香箱座り

ネコの香箱座りとはどんな座り方かご存知でしょうか。

お腹を床にしてはいつくばって、前脚を胸の下に折りまげているというネコおなじみのリラックススタイルです。

英語では、食パンの塊に似ていることから、キャットローフ(cat loaf)というそうです。

 

ところで、エジプトのギザのピラミッドの隣に横たわっている大スフィンクスは、頭はファラオでライオンの体をもっています。

その座り方はネコの香箱座りそっくりですよね。ただ前脚はのばしているようですが。

動物園のライオンも香箱座りをしてくつろいでいる姿をよく見かけます。ネコのように前足を折り曲げていることもあるようですよ。

まとめ

百獣の王を従える権力の象徴としてのスフィンクスを見て、ヨーロッパの王様があこがれ門構えの前にライオンの石像をおくようになり、それがシルクロードを通って中国に伝わりました。

でもそのころの中国の人々はライオンを見たことがなかったので招福駆邪を司る架空の動物、獅子と混同され、それが朝鮮半島を経て日本に渡ってきました。

 

当然ライオンなど見たことがなかった日本人は、犬と混同したようです。朝鮮半島(高句麗/コマ)から渡ってきた犬として狛犬と呼びました。

日本に実際のライオンが渡ってきたのは江戸時代末期なので、日本では獅子や狛犬としてのかかわりのほうが深かったともいえます。

現在ではライオンは動物園の人気者です。動物園にいったら、その骨格や筋肉の動きをぜひ観察してみてください。

(ライター sensyu-k)