何とも恐ろしい名前の付いたエンマコオロギ。
名前の由来は前から見た時の顔が閻魔様にそっくりだからなんだとか。
そんな怖い顔をしたエンマコオロギの鳴き声はとてもきれいだってことをご存知でしたでしょうか?
今回はエンマコオロギの生態と鳴き声について詳しくお話ししていきます。
エンマコオロギの特徴と生態
エンマコオロギは日本本土に生息するコオロギの最大種。
最も身近な昆虫のひとつで、体長は3㎝ほど。
背面は一様に黒褐色、覆面は淡褐色ですが、体側や前翅は赤味を帯びています。
体つきは太くて短く、頭部から腹部までほぼ同じ幅で短く丈夫な脚がついています。
頭部は大きく、光沢のある半円形で口器がわずかに下向きに突き出ています。
若干ではありますがオスの方がやや顎が長く、メスは丸顔。
触角は細く、体よりも長いのが特徴です。
複眼の周りには黒い模様があり、その上には繭のように淡褐色の帯が入ります。
メスには長い産卵管があり、前翅の翅脈は単純に前後に直線的に伸びる一方、オスは産卵管がなく、前翅にやすり状の発音器や共鳴室を備え、翅脈が複雑な模様を成しています。
幼虫は体が小さく、翅がないこと以外は全く成虫と同じ姿ですが、脱皮の直後だけはやや胴長になる特徴があります。
終齢幼虫は成虫によく似ていますが、亜終齢になると前胸背後端に翅芽が現れます。
昼間は草木の茂みや枯草、資材などの陰に潜んでいて、夜になると周辺を徘徊し、灯火にも飛来します。
食性は雑食で植物の他に小動物の死骸なども食べます。
天敵は鳥類、ニホントカゲ、カエル、カマキリ、寄生蜂などで、敵が近づいた時には太い後脚で大きく跳躍して逃げますが、成虫は長い後翅を羽ばたかせて飛翔することもあります。
エンマコオロギの鳴き声
エンマコオロギのオスの成虫は鳴き声を発して他の個体と接触を図ります。
前翅を立てて擦り合わせて鳴くのですが、翅がやすり上になっていて共鳴させられるような構造なので、小さな体でも大きな音が出せるのです。
「コロコロリー・・・・」とも「キリリリリー・・・・」、「ヒヒヒヒヨヒヨヒヨ・・・」とも聞こえる鳴き声を出します。これらの鳴き方は本鳴きや誘い鳴きといわれ、通常長く伸ばします。特に誘い鳴きの時は前翅は高く上げずに優しく震わせます。
また、、オス同士が遭遇し、争う際は鳴き声が速く、短く切るようなおどし鳴きと言われる「キリリリリッ」という声になります。
夏の暑い時期には夜しか鳴きませんが、秋が深まり気温が低くなると昼でも鳴くようになります。
コオロギの鳴き声は気温のバロメーターにもなり、「Q10の法則」と言われているそうです。
通常、昆虫などの変温動物は気温により体温が変化しますが、体の中で酸素が触媒しており、この酵素は10度上昇すると約2倍反応を促進させるとされています。
17℃の気温で90回鳴くとしたら、27℃では180回鳴くということ。
特にオスのフタホシコオロギについては外部の温度変化とその時間の左右差がはっきりしていて、生化学的なものであると言われています。
エンマコオロギの種類
実は一言にエンマコオロギと言ってもいくつかの種類が存在していています。
成虫の顔が黒いことでエンマコオロギ特別され、本州中部以北と北海道に分布するエゾエンマコオロギ。
日本では南西諸島、九州、四国、紀伊半島までの温暖な地域に分布する外見上はエンマコオロギに似ていますが、オスの鳴き声のテンポが速く、春と秋の年2回発生し、卵で葉鳴く幼虫で越冬するタイワンエンマコオロギ。
小笠原諸島・母島の固有種でエンマコオロギより小型なムニンエンマコオロギ。
他ナンヨウエンマコオロギ、コモダスエンマコオロギです。
(ライター ナオ)