ヤシガニの特徴

ヤシガニはエビ目ヤドカリ下目・オヤドカリ科に分類される甲殻類の一種です。

陸棲甲殻類だけでなく陸上生活をする節足動物全体の中で最大の種ともいわれています。

インド洋の最西端からミクロネシアまで幅広く分布し、各地でそれぞれの呼び方があります。

体色も明るい紫色から茶色まで生息域によって様々です。

 

ヤシガニの名前のイメージからヤシの木に登ってヤシの実を食べると思われがちですが、実際の食性は腐敗した死肉でも食べる雑食性。大きな鋏脚で椰子の実の硬い繊維も切り裂くことが出来ます。

銀の食器や鍋などのキラキラと光るものを持ち去ることから、英語では泥棒椰子などと呼ばれることもあるようです。

ヤシガニの生態

オスはメスよりも大きく、体長は40㎝を超え、脚を広げると1m以上、4kg以上に成長します。

体は頭胸部と腹部に分けられ、10の肢をもちます。

2本の前肢は巨大な鋏になっていて、挟む力は体重の約90倍の強さを持っています。

 

 

海外で見つかった最大級4kg個体に換算すると、その力は約337kg・fになり、ライオンの噛む力に匹敵するほどです。

前肢の次に並んでいる3対の肢は小さなハサミになっており、陸上歩行に適した形になっています。

また、垂直に椰子の木を登ることも出来、昇るときも降りるときも頭を上に向けます。

 

最後の1対の肢はとても小さく、鰓の掃除に使われ、普段は鰓の中に折りたたんでしまっているので外部から確認することはできません。

腹部は普段、頭胸部下側に曲げて折りたたむ形で行動し、腹部にある鰓室は水分を溜めこむことにとても適しています。そのため、多湿な環境であれば空気中の水分を鰓室に取り込んでおくことによって、鰓で十分に呼吸することが出来ます。

 

逆に、水中では鰓室と鰓が水分で飽和してしまうために呼吸することが出来いという、陸上に特化した甲殻類です。

ヤドカリの仲間であるヤシガニは若い個体の時、カタツムリの殻やヤシの実などを殻として使いますが、成体になると体に見合う殻がなくなってしまいます。

しかし、その頃には腹部はキチン質や石灰質によって覆われているので硬く、カニのように尾を体の下に隠すことで身を守ることが出来ます。

 

普段は湿度の高い岩の割れ目やハサミで地下に掘った穴を住居として、乾燥しないように入り口を大きな鋏で塞いでいます。

主食は椰子の実の胚乳やイチジクなどの果物で、雑食性で時には共食いすることもあり、殻の形成に必要なカルシウムは他の動物の殻を食べることで補っていると考えられています。

繁殖期は5~9月で、メスは自分の腹部の裏側に卵を産み付け、メスは数か月間卵を抱えたまま生活します。

 

10~11月の満潮時になると波打ち際に入水して孵化したゾエアと呼ばれる幼生を一斉に放出します。

繁殖ができる生態になるまでの期間は4~8年程で、寿命は50年程と考えられています。

沖縄のヤシガニ

日本では沖縄・宮古島、八重山諸島にヤシガニは生息しています。

沖縄本島では既に絶滅したと考えられていましたが、2006~2010年にかけて行われた調査では生息が確認されています。

2013年宮古島では地域と期間を定めてヤシガニの捕獲を禁止しています。

 

一方でヤシガニは郷土食として宮古島で食べられており、飲食店などでもその味わいを堪能することが出来ます。天然記念物なので宮古島でしか食べることはできないようです。

ヤシガニそのものに毒性はないのですが、ヤシガニの食べたものによっては毒を蓄えることが報告されていて、実際に中毒で死亡した例もあるようなので、素人が野生種を捕まえて調理するのは危険です。

 

味はエビのようなカニのような味わい。味噌も濃厚で美味なのですが、難点は食べにくい事。

カニやエビ以上に殻を割って中身を上手に食べるのは難しいようで、味と値段とのバランスを考えると…といったところのようです。

ご興味のある方はぜひ宮古島で食べてみて下さい。もしかしたら、近いうちに食べられなくなってしまうかもしれませんよ。

(ライター ナオ)