南京虫はどのような虫なのでしょうか。そして虫としての正式な名前は何でしょうか。
南京虫について
南京虫とは、カメムシ目トコジラミ科のトコジラミの通称名です。
生息地は欧州、ロシア、中国などのユーラシア大陸、アメリカ、アジア、日本など殆どどこにでもいます。
人間にくっついて移動範囲を広げています。南京虫はトコジラミのことです。
以下はトコジラミという虫の主な生態や刺された際に関する内容なので、トコジラミとします。
トコジラミの生態と特徴
トコジラミは、人間および動物の血を吸い栄養とする虫です。トコジラミは卵から産まれます。
トコジラミのメスは一度に5,6個の卵を産卵し、一生に産卵する卵の数は200個ほどだとされます。
摂氏30度前後がトコジラミの生育にはちょうど良いようです。
産卵場所は特に決まっておらず、わりと適当な場所です。卵は2週間ほどで孵化します。
この1令幼虫も吸血します。血で腹を満たすと脱皮し、それを5回ほど繰り返して成虫になります。この間ほんの1、2ヶ月とされ、サイクルがはやいのも特徴です。
冬眠もし、夜行性なので吸血時以外は暗いところに集団で集まっているようです。
ただし冬眠とはいってもトコジラミがいる場所は暖かい場所であることが多く、ホテルの一室などにいる可能性はあります。
おもに壁のちょっとした割れ目、シーツとシーツカバーの隙間、人間に近いあらゆる隙間にいるようです。
活動が活発になる時期は日本の気候だと5月から10月ころともいわれますが、暖かい屋内に入り込んでいる場合、ほぼ一年中いることにもなります。
トコジラミは成虫のオスもメスも幼虫も吸血するという厄介な虫です。餌がなくても1年ほどは生きているようです。
しかも卵の大きさは1mmほどで成虫になっても5,6mmですから、人間の目で発見するのは困難であるといってもいいでしょう。
トコジラミの吸血について
トコジラミの英名はbed bugです。その名の通り、寝具の周辺に生息していることが多いようです。
シーツの隙間、布団とカバーの間など、人間がよく使うものにくっついて生きています。
トコジラミは、就寝中の人間の露出した皮膚から吸血します。吸血時間はわりと長く、20分を超えることもあります。
人間が動くと吸血部位を変えたり、吸血しやすい箇所にすこし移動するためです。
トコジラミの唾液には麻酔効果のある成分が含まれており、刺された時にすぐに気づきにくいのです。
痒みはアレルギー症状なので痒くなるまで時間差が大きく、おおよそ1~3日後とされます。
また、数回刺されていても症状が出ない人もいれば、痒くてたまらない人もいます。
30日から60日ほど経ってから痒みが出る場合もあり、こういった場合は遅延型アレルギーです。渡航先から帰国した後に症状が出るケースなどです。
病気の媒介をする虫ではないものの、就寝中に痒くてたまらない状態になると、眠りが浅くなったり、患部を掻きむしり皮膚疾患を引き起こすことがあります。
痒みは長くつづくこともあります。トコジラミは小さくどこにいるのか分かりにくいので、気持ち悪さが増します。
痒みをともなう症状はダニによるものと似ていますが、トコジラミの方が体が大きい虫です。
吸血後のトコジラミ
トコジラミの体は本来褐色ですが、吸血するにつれ赤みを帯びていきます。
吸血後には、糞のような点々を残します。ごく小さな黒いシミのようなものです。
トコジラミは小さい体にしてはたくさんの血を吸いますので、体が膨れてしまいます。
そうなると狭い隙間に潜り込むことができないので、必要な栄養を摂ると残りは血交じりの排泄物にし、体外に出します。これがトコジラミの糞であり、血糞とよばれます。
治療法について
トコジラミに刺された場合、どうすればよいのでしょう。
トコジラミは2か所点のような咬み後を残すといわれますが、1つの場合もあります。
刺されただけで掻きむしっていない場合、ステロイド系の塗り薬または抗ヒスタミン剤を使用します。
知らないうちに皮膚を掻きむしり、二次的な皮膚疾患になった場合は、皮膚科を受診します。
トコジラミの呼称について
南京虫は、国内ではもういない虫であるとされてきました。
このように昔多かったけど近年被害が増えているような虫の被害が頻発しているらしい理由のひとつに、建物のつくりが昔と違うことがあります。
多くの建物は温暖で人間が使用するものも増えています。
隙間に入って移動できるほど小さな虫にとって、好都合なのです。
南京虫とよばれる由来のようなものは、はっきりしていません。
南京虫もといトコジラミは、もともと世界各地に生息している虫であり、日本には江戸時代に入ってきたようだといわれます。
当時は舶来のものに南京、という言葉をあてることもありました。例として南京錠があります。
南京錠は持ち歩き可能な利便性がある錠前のことです。
というわけで、特別に中国大陸に生息する虫というわけでもなさそうです。
南京虫はなぜ増えたのか
トコジラミによる症状が増えたようなのはなぜでしょうか。
日本国内では1970年代ころにはほぼいなくなったとされており、増えたようなのはここ10~20年ほどの間だそうです。
強い薬剤を使わなくなったこと、人の移動がふえたこと、一番の理由は殺虫剤に強いトコジラミがいることなどのようです。
(ライター:おもち)