昭和50年前後に制圧されたはずの南京虫が近年再び大発生の兆しを見せていると言われています。

しかも、市販の殺虫剤が効きにくい、南京虫だというのだから厄介です。

南京虫って?

南京虫はトコジラミといい、吸血性の寄生昆虫です。

床虫という場合もあります。

シラミと命名されていますが、シラミ目ではなく、カメムシ目トコジラミ科に分類されます。

トコジラミ科に分類される昆虫は全て吸血性ですが、そのほとんどは主に鳥類やコウモリ類を宿主としています。

 

成虫の体長は5~7㎜程度。

不完全変態で幼虫と成虫は大きさ以外はほぼ同じ形をしています。

また、成虫も翅を持ちません。

 

体色は吸血前は薄黄色からやや赤褐色ですが、吸血した後は吸血した血液が透けて見えるので、より濃い茶色になります。

成虫の形は卵形で、背腹軸に扁平です。

台湾トコジラミとは形態的によく似ていますが、トコジラミは前胸の縦横比が2.5倍程度であるのに対し、トコジラミは前胸の縦横比が2倍程度と少し細長くなっています。

 

雄成虫は腹部の末端が雌成虫よりも尖っていて、末端に良く尖った性器を持っています。

雌雄共に吸血し、幼虫、成虫に関わらず全生存期間を通じて栄養分を血液に頼るという特徴があります。

成虫に至るまでは5回脱皮を繰り返しますが、脱皮の前には必ず吸血しなければ成長できないということも知られています。

 

孵化から成虫までは約2~7週間かかります。

飢餓に強く、実験室内での実験では18か月間も無吸血で生存したという記録があるほど。

 

吸血は夜間に行わることが多いですが、厳密には夜行性でなく、暗ければ昼間でも吸血します。

灯を嫌い、壁の割れ目等の隙間に潜んでいて、翅を持たないので自力では長距離を移動することはできません。

 

しかし、人間の荷物や家具などに付くことでその分布を拡大してきた昆虫でもあります。

近親交配が不利にならず、日常的におこなわれていたり、ボルバキアという共生細菌がいないと正常な成長や繁殖が行われないことも明らかになっています。

南京虫に刺された時の症状

南京虫は刺すときに唾液を宿主の体内に注入します。

この中にはアレルギー反応を引き起こす物いう質が含まれており、痒みを生じます。

 

肌には2つの赤い刺し口の跡が残ると言われますが、実際は1つのことも多いようです。

寝ている時に刺され、無意識に掻いてしまい、出血で染まってしまうこともあります。

 

一度に数か所刺されることも多く、痒みが半端ないこともしばしば。

一匹の南京虫が何度も何度も周辺を指すこともあり、刺され跡は集中して残っていることも多いのが特徴です。

痒みは刺された日よりも2日後以降に強く感じることが多く、痒みが1~3週間続くだけでなく、刺し1~2ヶ月間程度消えないこともあります。

 

皮膚科での治療は通常は抗ヒスタミン薬の処方ですが、酷い時にはステロイドになることもあります。

貧血気味の方やアレルギー症状を持っている方は症状が激しく出ることもあるので注意が必要です。

ホテルの南京虫

ホテルに南京虫が出るという話は山奥のホテルや旅館ではちょくちょくある話でした。

しかし、最近は大都市のホテルでも南京虫が出ているというのです。

 

ちょっと前には南京虫の被害に合った宿泊客が施設を相手に訴訟を起こすケースなどもありました。

この理由として、外国からの旅行客が増加していることが指摘されています。

 

特に近年の中国人の爆買いは有名。

中国には南京虫も多く分布しており、彼らの荷物や服についてきた南京虫がそのまま日本にお土産として置いて行かれている、ということらしいのです。

 

しかも、その南京虫たちの中には日本で市販されているピレスロイド系の殺虫剤に対して耐性を持っていて、業者専用の有機リン系の殺虫剤か高熱蒸気によって駆除するしかないのだとか。

皆さん、ホテルに宿泊する際には十分ご注意を。

(ライター ナオ)