蝶でも、蛾でも子供の頃野外の虫たちと戯れた経験のある人なら、翅についている粉のようなものが手についてしまった経験がある人も多いのではないでしょうか。

今回はそんな鱗粉に関するお話です。

鱗粉の種類

鱗粉は粉と書きますが、実際に顕微鏡で見てみると、瓦のようなものが規則正しく綺麗に並んでいるのがわかります。

鱗粉にはいくつかの種類があって、主に腹部に当たる後翅の内側周辺に見られる毛の変化したもの、翅を彩るためにいくつかの色素が含まれるもの、そして多くの種類のオスが持っている発酵鱗です。

鱗粉の役割

鱗粉の役割には4つあります。

まず、翅を彩る役割。

そして、水をはじく役割。

 

香りを放ち、交尾の時にメスを惹きよせる役割、そして温度調節をする役割です。

翅を彩るのは、既に皆さんご存知のように、蛾の翅には色々な模様が入っていて、非常に美しい模様や敵を寄せ付けないための模様が入っています。

 

この模様を作っているのが、鱗粉というわけ。

水を弾くのは鱗粉の持っている構造の特性です。

 

雨に当たってもそれをはじき返す力を持っており、雨に濡れた後でもすぐに飛び立つことが出来るようになっています。また、汚れもつきにくくなっています。

万が一鱗粉がはげ落ちたりすると、翅が濡れてしまって飛ぶことも出来なくなります。

 

香りはオスが持っていることが多く、子孫を残すためには必要不可欠な役割と言えるでしょう。

暗い色の鱗粉を持っているということは、より太陽の熱を吸収しやすく、体を温るのに役立ちます。

逆に暑すぎる環境では、明るい色の鱗粉を纏っている方が体温が上がりすぎずに済みます。

鱗粉の色について

蛾の翅の色は翅についている鱗粉によるものです。

色素により発色されるものと、鱗粉の形によるものの2つに分けられ、さらに色素によるものの中にはメラニン系の色素、オモクローム系の色素、プテリン系の色素、フラボノイド系の色素などに分けられるようです。

蛾の鱗粉の害

日本には500種類ほどの蛾が生息していると言われていますが、その中で鱗粉に毒がある種類はわずか数種類。

ほとんどの蛾は毒を持ちません。その割合は1%にも満たないと言われています。

 

しかし、毒は持っていなくてもアレルギー症状を引き起こす原因になることは確かです。

アレルギーの原因と言えば、代表的なものは花粉ですが、鱗粉は花粉よりも更に大きな粒子をしています。

 

しかも、虫の体の成分よりも鱗粉の成分の方がはるかにアレルギー反応が起こりやすい糸いわれ、特に翅などに触るのは危険とされています。

特にアレルギー性鼻炎には注意が必要で、万が一鱗粉に触ったりし場合は手を洗って鱗粉を洗い流しておくようにします。

かぶれる鱗粉

ドクガやチャドクガ、マイマイガの鱗粉にはかゆみやかぶれを引き起こす毒があるとされ、それが名前の由来にもなっていますが、実はこれは厳密には鱗粉の毒ではなく、鱗粉のように見える極小さな針が刺さることによって引き起こされる現象です。

 

万が一触ってしまった場合にはテープなどを使って針を丁寧に取り除くことが必要です。決して石鹸でこすったりしてはいけません。

鱗粉のついた服はすぐに着替えるようにします。

 

その後、ステロイド剤や抗アレルギー剤により治療を行います。

一般的に7~10日ほどで治癒するとされていますが、それ以上かかる人もいるようです。

鱗粉のまとめ

鱗粉は極度に怖がるようなものではありませんが、それでもそれなりに注意が必要です。

蛾を駆除したりするときにはゴーグルやマスクをして、安全を確保してから駆除を行うようにしましょう。

そして、万が一触ってしまったり、かぶれが見られる場合はすぐに処置するようにしましょう。

(ライター ナオ)