「葛(くず)」と「かずら」という植物があります。
これらは、普通の人だと違いがわからないという方が多いと思います。
「葛(くず)」と「かずら」は別の植物なんでしょうか?
そこで今回は葛とかずらについて、違いなども含めてみていきましょう。
葛とかずらってどう違うの?
葛とかずらというのは、両方ともつる植物に分類されます。
つる植物は自分の体ではなく、ほかの樹木をたよりにして高い場所に茎へ伸ばすという、他力本願な植物です。
ご存知のようにつる植物もほかの植物と同じように光合成によって栄養をとるわけですが、この場合太陽の光が大事となるので背が高くなったほうがほかの植物より有利にエネルギーを得られますね。
背が低い植物では、樹木の下でわずかに通る光で光合成をしていますが、つる植物は樹木を支えにして高く伸びることができるのでこの点がちゃっかりさんです。
「クズ」というのはマメ科の植物ででんぷんが含まれていて「葛粉」「くず餅」「くず湯」の元になっている植物でです。「くず湯」って、飲んだことはありませんか?私も一度飲んだことがありますが、あれってトロッとしてておいしいんですよね。「くず餅」なんかもおいしそうです。
「かずら」はつる草の総称で、クズの別名です。
つまり、 葛とかずらの違いというのはなんのことはない、名前の呼び名の違いなだけなんですね。
ただ、いろいろな植物に「何々かずら」という名前になり、葛かずらと言われることもあります。
知っておくと自慢できる!?葛の豆知識
ではここでせっかくなので、葛(かずら)のいろいろな豆知識なんかをご紹介しましょう。
葛はマメ科の多年草で、日本が原産の植物です。
葛の花は美しいディープパープルで、藤の花が上向きになっているような形状です。
「葛粉」「くず餅」などのほかにも、せき・風邪の生薬である「葛根湯」というお湯にもなっています。
根はものすごい巨大で、掘り出すのはかなり大変であり、これを精製するのも特に手間が必要となります。
なので、巷に出回っている葛粉などには「ばれいしょ」等が混じっていて、100パーセント純粋の葛粉というのはかなり珍しいでしょう。
さらに、丈夫な繊維が取れるという葉・茎から「葛布」といわれる織物ができて、昔は衣服としても使われていたのです。
現在は生活雑貨・土産物として、ごくわずかな専門店により小規模での生産が続けられています。
葛布は静岡県掛川市の特産品になっています。
つる植物というのはその形状から、「引っ張りに強い」という性質があります。
この性質を利用して茎をロープとして代わりに使ったりします。
ほかにも牛馬の飼料にもなったりして、日常生活のさまざまな用途で役立てられているという、人間にとってとても便利な植物なんです。
しかし、マメ科でありながら実にはあまり利用価値がなくて、ほとんど食べられることがありません。
味がおいしくないということもありますが、調理しにくくて食べにくいことも原因とされています。
夏になると一日に1メートルも茎を伸ばして、茎から根が出てきて繁茂しますが、その旺盛さがハンパありません。
茎の先端を切ると、勢いよくジャバっと水が吹き出るほどです!
昔の人たちも、この葛が持つ生命力には畏敬と驚嘆の念を抱いていたでしょう。
また、葛は日本において古くから文化的な題材として扱われていて、葛独特の小さい葉を意匠的に表現した家紋が多く存在しています。
「秋の七草」のひとつにも数えられるていて、秋の季語として俳句にも詠われています。
陰陽道の天才、安部清明の母親は「葛の葉」という名前の狐で、この母親を題材にした歌舞伎や読み物もたくさんあります。
全然「クズ」じゃないですね!
葛とかずらは呼び名が違うだけだったんですね。
現在はエネルギー不足が問題となっていますが、葛からバイオエタノールを抽出する研究も行われているそうです。
「クズ」とは、あまりよくない呼び名なんですが、ぜんぜんクズではない、昔から人間にとって活用されてきた植物ですよね!
ライター:nabex