山の中で健気に小さく、それでいてしっかりと存在感のあるスミレ。
今回はそんなスミレのお話です。
スミレの特徴
スミレ科には16属850種があると言われていて、そのうちスミレ科スミレ属に分類される植物が400種ほどを占めています。
スミレ科全体としては樹木の方が多く、スミレ属はほとんど草本です。
スミレ属は現在進行形で種の分化が進んでいて、非常に変化が激しく、日本でも各地で変種や色変わりなどが見つかり、学名のあるものだけでも250程。
沖縄から北海道までの全土にわたって分布していて、固有種も多数あります。
道端や野原に咲くものもあれば、山奥の渓流のほとりに咲くものもあり、高山の花畑に咲くものまで様々。
日本産のものは全て草本で、河畔のヨシ群落生息するタチスミレのように背の高くなる例外もありますが、ほとんど背が低い草です。
スミレと人間の関わり
スミレは日本では野に咲く花の代表として知られていて、古くから親しまれて花のひとつです。
歴史上の人物ではナポレオン1世のスミレ好きが有名で、妻ジョセフィーヌの誕生日にはスミレを送っていたとのこと。
島流れになった時にも「スミレが咲く頃には戻ってくる」と言い残した話もあります。
また、ヴィクトリア女王もスミレが好きで、日記にはスミレについての記述が105回も登場し、特に晩年はスミレの栽培が盛んだったコート・タジュールで毎年休暇を楽しみました。ヴィクトリア時代のイギリスでは、スミレはその花姿から謙虚さや忠誠心の象徴とみなされていたのだそう。
欧米ではニオイスミレは香水や化粧品に加工されている他、観賞用植物としても様々な品種が作出されています。
また、古代ギリシャでは薬用に使われていたり、花が食用にされたりしていたのだそうです。
時代によっては頭痛やうつ病、便秘に効くとされていたこともありました。
日本のスミレ
日本には約50種類のスミレが自生していると言われています。
代表的な種類をいくつか紹介します。
タチツボスミレはスミレの中のスミレ!?
スミレの代表と言っても過言ではない花です。
ほぼ日本全土の平地から低山に分布していて、日当たりの良い道端や草原、森林地帯に見られる多年草です。
一応茎をのばして咲きますが、短いので根元から直接出ているように見えます。
葉は質が薄くハート型。
葉の付け根に径が1~2㎝ほどの薄紫の一輪の花を咲かせます。
アリアケスミレは花の色合いが繊細で、白地に紫の脈が入っています。
普通、スミレよりやや遅れて開花しますが、本州から四国、九州の日当たりの良い湿った場所に分布しています。
ヒメスミレは草丈が5㎝前後になるスミレで、花径葉1㎝程と小さいのですが、根が太くて長く、小さな鉢に押し込めると調子を崩して枯れてしまいます。
秋田県以南の本州から四国、九州の道端などに分布しています。
ノジスミレは花は青みが強く、少しよじれたように咲くのが特徴です。
普通全体に微毛があり、葉は横に広がります。
秋田県以南の本州から四国、九州の平地や低山に分布しています。
コスミレは花つきがとてもよく、時には株を覆うほど咲きます。
草丈は5~10㎝程と低く、葉は広くて先がとがった卵形をしています。
日本列島の広い範囲の平地や低山に分布しています。
マルバスミレは草丈が5~10㎝で花色は白か稀に薄いピンク色です。
日本列島の広い範囲の平地や低山に分布しています。
フィリゲンジスミレは草丈が5㎝余りで、花色は明るい赤紫です。
葉は卵形で、葉脈に沿って銀色の筋が入っています。
移植に弱く、植え替えは根を傷めないように注意します。
モンゴルから中国東北部、朝鮮半島、シベリア原産です。
トリアシスミレは草丈が10㎝程で、花の直径が3㎝強、明るい紫色を基本とした2色先のものがよく栽培されています。
北米大陸東部から南部が原産です。
アツバスミレはスミレの海岸型の変種です。
2色アツバスミレの名でバイカラーの株がよく市販されています。
千葉県以西の本州・四国・九州の太平洋側と伊豆諸島に分布しています。
(ライター ナオ)