「Here’s looking at you,kid」は、特に日本では映画史上最もよく知られている台詞のひとつかも知れませんね。
「カサブランカ(casa branca)」はスペイン語で直訳すると白い家です。
映画の中では店名ですが、数多のユリの中でも知名度が高いと思われる大輪の白いユリの名前になっています。
ユリの種類にはどんなものがあるのでしょうか。
ユリについて
ユリはユリ目ユリ科ユリ属の多年草の総称です。
秋に球根を植え付けると、初夏から夏にかけて開花します。
北半球の欧州からアジア、日本などに広く自生し、ユリの種類は96種程あります。
上記のカサブランカを含む交雑種オリエンタルハイブリッドなどを入れると、とてつもない数の種類のユリがあります。
日本に自生している主なユリは、イワトユリ、ウケユリ、エゾスカシユリ、オトメユリ、カノコユリ、コオニユリ、ササユリ、サクユリ、スゲユリ、タモトユリ、ヒメユリ、オニユリ、ヤマユリ、テッポウユリなどです。この中でヤマユリ、ササユリ、オトメユリ、カノコユリ、テッポウユリ、タモトユリ(野生のものは絶滅)、ウケユリ、イワトユリが日本固有種とされています。
数が少なく、絶滅危惧種に指定されている種も多くあります。ユリは水はけがよく、山中などの日当たりが良い傾斜地に咲いています。
ユリの仕組み
ユリの球根は下根という株を固定させるものと、上に伸びて栄養分や水を吸収する上根というものを持ちます。
種によって異なりますが、花弁は6枚です。
そのうち外側の3枚は萼片なので、内側の3枚が本当の花片です。
雄蕊は6本あり、中央に花粉がつきやすいように3つに分かれた柱頭が伸びています。
葉のつけかたも多様で、オニユリのようにムカゴを持つものもあります。
ユリの球根は食用にもなります。
日本にはユリの種類が意外に多いのは、ユリ根を食用として利用していたからではないかともいわれます。
食用になるのは主にオニユリなどの種で、園芸用の球根は美味しくないので食べてはいけません。
ユリには毒はありませんが、種類によっては猫によくないようでもあります。
ユリの学名はliliumです。ケルト語が語源とされ「li」は白い「rium」は花だそうです。
欧州に自生するユリは白い花だったようですね。英名はlilyです。
ユリの種類について
ユリは古くから自生していたようですが、交配が行われ品種改良がすすんだのは19世紀になってからのようです。
自生しているユリも充分綺麗なのがその理由のひとつでしょうか。
園芸種の元になったユリの原種は、真っ白いテッポウユリ、オレンジに斑点が入るヤマユリ、朱色系のスカシユリ、桃色のカノコユリなどです。
どのユリも日本に自生します。
交雑種の主なものは、一番良い香りがするといわれるオリエンタルハイブリッド系、オニユリなどが元になっているアジアンティックハイブリッド系などです。
現在花屋などで目にするユリの多くはオリエンタルハイブリッドの系統だと思われます。
何といっても見栄えがいいですからね。
花だけに大変華やかです。
オリエンタルハイブリッド系のユリは、日本固有種のヤマユリやカノコユリが元になっています。
ちなみにヤマユリは大変香りがよい花でもあります。
オリエンタル系の芳香は、ヤマユリが元になっているともいえそうです。
切り花としてのユリについて
ユリの品種は1990年代に入り激烈に増えたようです。
バブル期でもありますから、豪華な花が好まれたのでしょうか。
今はオリエンタルハイブリッドが人気のようですが、それ以前はアジアンティックハイブリッドが多く流通していたようです。
アジアンティックは花はやや小ぶりで、しっかりした花弁です。
香りがあまりなく、カラーバリエーションが豊富なことが特長です。
LAハイブリッドというのは新しいアジアンティックのようなもので、ロンギプーラム(L)といわれる華やかなタイプのユリとアジアンティック(A)を掛け合わせたものだそうですよ。ロス・アンゼルスとは無関係です。
形もよく香りも良く色合いもカラフルで輸送コストが抑えられる事などから、今後人気が高まる事が予想されます。
LAハイブリッドの誕生は1992年頃のようですが、ユリ産業の中でも大きな発見であったようです。
カサブランカなどのオリエンタルハイブリッド系のユリは、栽培が難しく綺麗に輸送するのにもコストがかかる事から、販売価格はやや高額になってしまいます。
LAだとそれが抑えられるという大きなメリットがあります。ユリは商業的にはまだ道半ばのようです。
ユリの色合いについては、ピンク系やパプル寄りの赤などはアントシアニン、黄色や桃色などはカロテノイド、白い花を咲かせるのはフラボノイドという色素によるものだそうです。
ユリの花言葉
このような経緯でユリの花がカラフルさを増した事から、花言葉も増えたようです。白いユリの花言葉は「純潔」、黄色は「陽気」「偽り」、オレンジは「華麗」「軽率」、ピンク系は「虚栄心」、赤色は「温かみ」など。
他にも品種により様々な言葉があるようですよ。
歩く姿は百合の花
「立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花」という言葉は、美しい人の形容としてしばしば使われます。
しかしなぜ百合は歩くのでしょうか。
諸説ありますが、百合が生薬として使われていたという経緯が関係しているのかも知れません。
ユリの球根を乾燥させ配合した鎮静などの効果を持つ「百合(びゃくごう)」という漢方薬があり、それによって元気になるので歩くようになる、などとされています。
芍薬は根を利用して「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」に配合したり、牡丹は根の皮を利用しこれも婦人病の症状に使用されます。
ユリ
ユリは豪奢な花です。
芳しい香りが長所でもありますが、少々好き嫌いがある花のように思います。
積極的に切り花として楽しむのもよいでしょうが、遠くに咲いているのを呑気に眺めるくらいが丁度いいような気がします。
高嶺の花といったところでしょうか。
(ライター:おもち)