キンモクセイは、モクセイ科・モクセイ属の常緑小高木樹で、モクセイ(ギンモクセイ)の変種です。
ここではキンモクセイとその実について紹介します。
キンモクセイの生態
キンモクセイは、9月下旬から10月中旬に、強い芳香のある橙黄色の小さな花を枝に密生させて咲かせます。
特に夜間は、近くになくても香りが感じられるほどに強く香ります。
キンモクセイの属名「Osmanthus」は、ギリシャ語の「osme(におい)」と「anthos(花)」に由来しています。
キンモクセイは、ギンモクセイの変種とされ、日本では、雄株のみが植栽されているといわれています。
キンモクセイに果実がついたといわれることもありますが、大概はギンモクセイのようです。
ギンモクセイにも芳香はありますが、キンモクセイほど顕著ではありません。
また、ヒイラギモクセイは、ギンモクセイとヒイラギの雑種と考えられていますが、原産地は不明です。
葉は楕円形で縁にとげのある粗大鋸歯が規則正しく並んでいます。花は白色で芳香があり、各地で生け垣などに利用されています。
なお、中国南部原産で、日本には江戸時代に渡来しました。
キンモクセイの実と季節
キンモクセイの実は、日本ではなかなか見ることができません。
大きさはクコの実ほどで、1月~3月に結実したキンモクセイが確認されています。
なかには5月に目撃した人もいます。
キンモクセイの実の色は、薄い緑ですが、熟れると紫がかってくるようです。
1箇所から5~8程度の実がなり、1つの枝にはそれが3つほど、キンモクセイの枝はよく分岐しよく伸びるので、遠くから見ると実は密集しています。
キンモクセイのその他雑学 その1
キンモクセイは、雌雄異株なのですが、日本には雄株しか入っていないので結実しません。
平たい言葉でいうと、「日本にはオスしかいないので、実がならない」ということです。
中国のキンモクセイには、実がなっています。
ただ、現在では中国からたくさん苗を導入していますので、次第に見られるようになってきています。
それでもあまり見かけないのは、キンモクセイの苗が雄株と雌株の見分けがつきにくいからです。
中国の植木市場も、雄株なのか雌株なのかに無関心なので、わざわざ区別して売りません。
これがどうやら、キンモクセイの実が日本でなかなか見られない理由のようです。
キンモクセイのその他雑学 その2
キンモクセイは、主に庭木として観賞用に植えられていますが食用にもなります。
花冠は、白ワインに漬けたり、茶に混ぜて桂花茶と呼ばれる花茶にしたり、蜜煮にして桂花醤と呼ばれる香味料に仕立てたりします。
桂花蟹粉、桂花鶏絲蛋、桂花豆腐、桂花火腿などのように、鶏卵の色をキンモクセイの花の色に見立てて名づけられた卵料理は多いです。
また、キンモクセイの花の砂糖漬けを飾るなど、実際にこの花が使われる料理もあります。
キンモクセイの花は、甘めでしっかりした強い香りであることから、日本において汲み取り式便所が主流で悪臭を発するものが多かった時期には、その近くに植えられることもありました。
その要因から、トイレの芳香剤として1970年代初頭から1990年代前半まで利用されていたため、キンモクセイの匂いからトイレを連想する方も世代によっては多いです。
ちなみに、秋の季語です。
キンモクセイのその他雑学 その3
キンモクセイの花は、強い芳香を放ちます。
芳香はギンモクセイよりも強く、香りの主成分はβ-イオノン、リナロール、γ-デカラクトン、リナロールオキシド、cis-3-ヘキセノールなどです。
これらの成分のうち、γ-デカラクトンは、モンシロチョウなどへの忌避作用があることが判明しています。
キンモクセイのまとめ
以上、キンモクセイについていかがでしたか?
キンモクセイは香りが強いので、トイレの芳香剤として古くから使われてきました。
でも、だからこそ、キンモクセイの匂いからトイレを連想してしまう人もいるわけで……
そのせいもあって、いい匂いと思わない人もいるようです。
なんだかややこしい状況ですけど、いい匂いであることは間違いありません。
もし公園などで見かけたら、匂いに注目してみてください。
(ライター ジュン)