最強の水棲昆虫と言えば、おそらくタガメかゲンゴロウを思い浮かべる事でしょう。

もっとも、比較的東京に近い地域で幼少期を過ごした私にとってはあまり馴染みの深い昆虫ではなく、デパートのペットショップに売られていたり、友達がペットショップで買って貰ったのを見た事がある程度の思い出しかありません。

ゲンゴロウはかつては日本全域の水田などに棲息していましたが、水田の減少やブラックバスの無差別放流などに伴い、急激にその生息域を狭めています。

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常に水中で過ごしているように見えますが、実はその羽は飾りではなく、夜間に飛翔して水場を移動したり、灯火に集まることもあるようです。

また、幼虫期は水中で過ごしますが、蛹化する為に一度上陸して土や泥の蛹室を作って羽化を迎えるそうです。

さて、ゲンゴロウはそのイメージとは裏腹に、意外と生きた餌よりも死んだ魚や昆虫類や死に掛けの獲物を捕食する事が多いと言われています。

しかし、実はゲンゴロウは成虫よりも幼虫の時期の方が危険なプレデターなのです。

強力な麻痺毒を持つゲンゴロウの幼虫

ゲンゴロウの幼虫は大きな大顎と強力な麻痺毒を持ち、獲物に喰らいついてその大顎から麻痺毒と消化液を獲物の体内に注入します。

因みに人間がゲンゴロウの幼虫に噛まれた場合、周辺の細胞が壊死したり、蜂窩織炎に至ることもあるそうですので素手で触るような事はしない方が良いでしょう。

強烈な大顎の威力と麻痺毒の力で、ゲンゴロウの幼虫は自分よりも大きな獲物を捕食する事が出来るのです。

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ゲンゴロウって・・?

ゲンゴロウとは、甲虫目オサムシ上科に属する水生昆虫の総称のことで、ゲンゴロウ類と呼ばれることもあります。

単にゲンゴロウという場合には、ゲンゴロウ科に属するすべての種を指す場合もあれば、その中の代表種としてのナミゲンゴロウ(オオゲンゴロウまたはタダゲンゴロウ)を単独で指すこともあります。

紛らわしさを回避するため、ここではゲンゴロウ科の種全般を「ゲンゴロウ類」として表記し、代表種としてナミゲンゴロウを中心にした話にしたいと思います。

この場合、「ナミゲンゴロウ」または単に「ゲンゴロウ」として表記していくことにします。

 

ゲンゴロウ類は130種もいる!

ゲンゴロウ類は種類も多く日本国内では130種が知られています。そのなかで国内最大種がナミゲンゴロウ(オオゲンゴロウ)になります。

面白いことに、その他の種名では、ヒメゲンゴロウ、コガタノゲンゴロウ、マメゲンゴロウ、チビゲンゴロウ、ツブゲンゴロウなどといったナミゲンゴロウよりも「小型」であることを表す形容詞の名のついた種が多くいるのです。

なかにはオオヒメゲンゴロウという種もおり、一体このゲンゴロウは大きいのか小さいのかわからない・・というような種もいます。

かつてゲンゴロウ類はどこにでもいた!

ゲンゴロウ類は田んぼを始め、用水路や小川などの流れのゆるやかな水域、水草の多い池、湿地などに生息しています。

元々人間の生活域である田んぼやその周囲の用水路などには、ごく普通に見かけるほど多く生息していました。

ですから日本では、田んぼにいる昆虫の代表的な種でもありましたし、捕まえて食用にする地方もあったほどです。

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タガメよりもゲンゴロウは身近にいたけれど・・

私が子どもの頃は、タガメは地方でなければ生息していませんでしたが、ナミゲンゴロウに限らず、ヒメゲンゴロウなども近所の池などで割合よく見かけることがありましたし、ゲンゴロウを捕まえてきて飼育している友人も多くおりました。

ですからごく身近な水生昆虫というイメージだったのですが・・

現在ゲンゴロウは激減し、危機的な状況!!

ところが、近年ではその減少は著しくなってきています。

環境省のレッドリストには、代表種のナミゲンゴロウが絶滅の危険が増大しているカテゴリーの絶滅危惧Ⅱ類(タガメと同様)に登録されています。

その他のゲンゴロウ類の中には、さらに上位の絶滅危惧Ⅰ類(A・B)に登録されている種もありますので、もはや絶望的な状況といえるのかもしれません。

関東では絶滅地域が拡大中!

現実に、多くの自治体でゲンゴロウはその姿を消しています。

関東に限っても、東京都、神奈川県、千葉県では、代表種であるナミゲンゴロウは絶滅しています。

これは同じような生息域を持つタガメと比しても、同等かさらに深刻な状況といえるのかもしれません。

ただし東北地方や中部地方の山間部では、まだ池沼や水田の自然環境下で見かけることがありますので、その繁殖に希望が見出せると言えるかもしれません。

水田周囲の環境変化が原因!?

ゲンゴロウが激減した理由として、一番に考えられるのは、農薬の使用や水質汚染などによる環境の悪化で、おもな生息域である水田周囲の環境が激変したことが挙げられます。

それは、ゲンゴロウのみならず、そのエサになるような小さな昆虫類から藻や水草などの植物にいたるまで大きく影響しており、田んぼを中心とした生物たちの生活はもはや成り立たなくなってしまっているのです。

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ゲンゴロウが成虫になるやめには土が必要だった!

またゲンゴロウ類の幼虫は、さなぎになるために上陸して土中に蛹室(ようしつ)と呼ばれる空間を作り、そのなかでさなぎになります。

そのため、護岸工事や埋め立てなどで水際をコンクリートで固められてしまうと上陸することができなかったり、蛹室を作ることができませんので、羽化できない=成虫になれないのです。

ゲンゴロウ激減の一番の原因はブラックバスだった!!

しかしゲンゴロウが激減した一番の原因は、他にあるようです。

ブラックバスやブルーギルといった外来種の淡水魚に補食され、それによって壊滅的に数を減らしたと考えられているのです。

ある調査では、ブラックバス、ブルーギル、アメリカザリガニ、ウシガエルのうちどれか一種でも存在する水場では、ゲンゴロウ類は姿を消してしまうという報告もあります。

こういった外来の生物がいる環境を元に戻すことは不可能なので、かつてのようにゲンゴロウが繁殖することは、もう難しいのかもしれません。

ナミゲンゴロウはゲンゴロウ類の日本代表!

ナミゲンゴロウは単にゲンゴロウ、またはオオゲンゴロウとも呼ばれており、ゲンゴロウ類の代表種であり、国内最大種でもあります。

学名はCybister japonicusですから、直訳すると日本のゲンゴロウ(ラテン語では男性名詞)になります。

ただしナミゲンゴロウは日本固有種ではなく、日本全土のほか、朝鮮半島、中国、台湾、シベリアにまで広く分布しています。

愛嬌のあるアニメキャラ系!?

ナミゲンゴロウの成虫の大きさは3~4センチほどで、上から見ると卵型です。

頭よりもおなかの方が大きな形です。

体色は緑から暗褐色をしており、外側の一部は、縁取りをするように黄色の部分が取り巻いています。

表側は滑らかで甲虫類独特のつややかな光沢があります。

後脚は遊泳に適した形をしており、先端の符節には遊泳毛と呼ばれるブラシのような毛を持っています。

正面から見た顔は複眼が丸く大きく、表情がユーモラスにも見えるので、そのメタボ的な曲線を描く体型と相まって、なかなか愛嬌のある姿をしています。

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ゲンゴロウは交尾が長い!

ゲンゴロウの成虫は、春から夏にかけて生殖活動を行います。

交尾はおもに水中でおこなわれますが、交尾時間がとても長いので、その間の呼吸の問題が生じます。

ある調査では、1回の交尾時間の平均は162分であったとされています。ゲンゴロウも当然肺呼吸ですので、酸欠を起こす可能性も有り、繁殖期には交尾後のメスの死亡率が高くなる傾向があるというのです。

卵は細長いカプセル状

ゲンゴロウのメスは太い水草の茎をかじって穴を開け、その茎の内部に1~2個の卵を産みつけていきます。

卵は幼虫の形に似ており、細長いカプセル状をしています。

メスの尾部には、出し入れが可能な産卵管があります。

これは他の昆虫と異なり、針状ではなく扁平な形態をしています。

おそらくその産卵方法と、卵の形状に即したものと思われます。

ゲンゴロウのメスは年間で20~30個ほどの卵を産むと言われています。

メスは繁殖期に二度ほど交尾しますが、それだけで多くの精子を蓄えることができるので、シーズンを通じて受精卵を産み続けることが可能なのです。

また小型の種では、水草の表面などに数十個の卵塊を産みつけるものがいます。

 

ゲンゴロウの幼虫は肺呼吸!

産みつけられた卵は、およそ2週間で孵化します。

孵化した幼虫は、そのまま水の中に入り、さなぎになるまでの間、水中生活を開始します。

幼虫は成虫と同様に水中を生活の場としながらも、肺呼吸をして生きています。

尾部にある気門と呼ばれる部位を水面から出し、気管の中に空気を取り込んでいます。

ですからゲンゴロウの幼虫は、その体長に応じた水深の場所で活動をしているのです。

 

ゲンゴロウの幼虫は異形!

ゲンゴロウの幼虫は、成虫とは似ても似つかない、すごく長いケムシのような、あるいは短めのムカデといったような、細長くトゲトゲしい形態をしています。

蝶とイモムシの親子関係と同じくらい、まったく似ていません。

むしろこの恐ろしい異形のムシが、あのユーモラスで愛嬌のあるゲンゴロウになるとは信じられないほどです。

ゲンゴロウの幼虫は、6つの単眼を持ち、触角が数本以上伸びています。

そして頭部には、クワガタムシのような、あるいはシロアリの兵隊アリのような、大きなハサミ状の突出した大アゴがあるのです。

かなり目立ちますし、これによってかなり獰猛な印象を与えています。

 

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ゲンゴロウの幼虫は成虫よりもデカい!

ゲンゴロウの幼虫は、水中で脱皮を繰り返しながら成長し、終齢(3齢)幼虫ともなると長さは8センチにも及びます。

驚くことに、成虫の2倍ほどの大きさにもなるのです。

大きいばかりでなく、実は大変危険なムシでもあるのです。

私はムカデが大嫌いなのですが、その理由はあのクネクネする節のある身体と、強力な毒を持った大アゴの存在があるからです。

実はゲンゴロウの幼虫は、そのムカデと同じような性質を持っているのです!

ですから私はムカデと同じくらいにゲンゴロウの幼虫を恐れていました。

ゲンゴロウの幼虫は獰猛なプレデター!

ゲンゴロウの幼虫は完全な肉食性であり、その性格は非常に獰猛で、凶暴ですので、動くものなら何にでも襲いかかります。基本的に生きた獲物しか補食しない、生まれついてのプレデター(捕食者)なのです。

幼虫の大アゴは鋭利なトゲを持ったハサミ状をしており、強靭で、獲物をガシッと捕まえることができるのです。この大アゴを使って獲物を捕食します。

しかもその大アゴの内部は注射針のように中空になっており、獲物の体内に麻痺を起こさせる麻酔様物質の毒液と消化液が注入できるような構造になっているのです。

毒で麻痺させ、消化液を注入!

ゲンゴロウの幼虫は獲物に襲いかかると、その大アゴではさみ込んで、まずは毒液を注入して獲物を麻痺させてしまいます。

ですから自分の身体よりもかなり大きな獲物であっても果敢に攻撃を挑み、狙います。

麻痺させてしまえば、勝ちですから・・。

毒液が浸透しておとなしくなったところで、今度はその体内に消化液を注入します。

消化液によって溶けた組織を肉汁として吸うのです。これを体外消化といいます。クモやタガメなどと同様の効率の良い消化方法なのです。

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共食いもする獰猛さ!

ゲンゴロウ類の幼虫には、特定の獲物しか狙わない狭食性といわれる種と、好き嫌いがなく、いろいろな生物を補食する広食性といわれる種がいます。

このことに関しては、まだ研究がほとんど進んでいませんので、どの種が狭食性か広食性か、あるいは狭食性の種にしてもどんな獲物に特化しているのかということも多くの種で判っていません。

またゲンゴロウ類の幼虫は、特にエサが不足していない状況であっても、共食いすることが知られていますので、その獰猛さはかなりのものであると言えます。

幼虫の狩猟方法!

ゲンゴロウ類の幼虫には、水草のかげなどで獲物を待ち伏せして捕らえるタイプと積極的に獲物を探しまわって狩りをするタイプがいます。

中にはヒメゲンゴロウのように幼虫が集団になって獲物に襲いかかる種もいます。

ただしライオンのような連係プレイを見せるわけでなく、それぞれが勝手に食いついていくといったところです。

ナミゲンゴロウの幼虫の獲物たち!

ナミゲンゴロウの幼虫はかなりの広食性です。

孵化したばかりの1齢幼虫はおもにミジンコやボウフラなどの小型の生物を狙います。

齢を重ねながらアカムシ(ユスリカの幼虫)やヤゴ、最終齢(3齢)になるとドジョウ、メダカやオタマジャクシなどの大型の生物を狙います。

場合によっては自分の身体よりはるかに大きなカエルやフナなどの小動物にも食指を伸ばしますが、毒液で麻痺させてしまうので、いとも簡単に捕食してしまうのです。

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昆虫を食べないと育たない!?

自然な状態では、ゲンゴロウの幼虫は水面に落ちてきたバッタやコオロギなどの昆虫類もよく捕食しています。

飼育下では、こういった昆虫類をエサとして与えているかどうかが、ゲンゴロウの成虫への羽化に関わっているようなのです。

オタマジャクシや小魚だけを与えて昆虫類を捕食しない場合、羽化率(成虫になれる割合)が低下してしまうと言われています。

確かなことはいえませんが、昆虫類の持つたんぱく質などの栄養素が羽化の成否に関わっているのかもしれません。

またゲンゴロウの幼虫はエサが不足していなくても共食いをすることがありますが、それもそういったことが原因なのかもしれません。

人間にとっても危険な生物なんです!

ゲンゴロウの幼虫は、獰猛な性格と相まって、なんにでも襲いかかる傾向がありますので、むやみにつかまえようと不用意に指などを近付けると、その大アゴで咬まれることがあります。

毒素と消化液が含まれているので、大人であってもかなりの痛みと腫れを伴いますし、場合によっては組織の壊死や炎症を起こしてしまいます。

傷口の周囲が蜂窩織炎(ほうかしきえん)を起こしてしまう重篤な状態に発展することもあるのです。

蜂窩織炎は化膿性の炎症で、細胞を壊死させるもので、顕微鏡下では蜂の巣のように見えることからその名がつけられました。

ですからゲンゴロウの幼虫は人間にとっても大変危険な恐ろしい昆虫だと言えるのです。

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それに対して成虫は、その愛くるしいスタイルや、肉食といってもあまり攻撃性が強くないので、安心できる昆虫だといえるのですが・・。

獰猛なゲンゴロウの幼虫がエサを食べなくなる!!

ゲンゴロウは卵から幼虫、さなぎを経て成虫になる完全変態の昆虫です。

幼虫は、孵化後1~2カ月経過すると、さなぎに変化する蛹化(ようか)が始まります。

蛹化が近づくと、あれほど獰猛であった最終齢幼虫はエサになる生物に見向きもしなくなります。

そして日没1~2時間後に上陸をして、蛹化に適当な場所探しを始めます。

水際近くによい場所を見つけると、頭を使って穴を掘り始めます。そしてその土中に潜り込み、さなぎとして過ごすための楕円形の蛹室(ようしつ)を作ります。

種によっては、穴を掘らず、泥を積み重ねて蛹室を作るものもいます。

いざ、さなぎに!

蛹化を迎えたゲンゴロウの幼虫は、この自作の蛹室の中で1週間ほどの前蛹期を経てさなぎになり、やがて羽化を迎えます。

ゲンゴロウ類は、この時期のみは水中生活をせずに、陸上で生活するのです。

さなぎでいる期間は、10日から2週間ほどです。そしていよいよ成虫へと羽化します。

羽化は2時間ほどかけて蛹室内でおこなわれます。

ゲンゴロウは羽化をして成虫になってもすぐに蛹室を出ません。

これは身体の硬化に時間がかかるためで、ある程度体が硬くなってからでないと外では生活できないのです。

身体が硬化していないと、大型の同種の固体や他の昆虫などに狙われることがあるからです。

こうして蛹室内で1週間ほど過ごし、ようやく地上に這い出して、再び水中を中心とした生活を送り始めます。

新成虫は8月から10月にかけて出現してくるのです。

ゲンゴロウは飛び回る!

ゲンゴロウ類は水中生活に適した水の抵抗の少ない流線形の身体をしています。

実際にほとんどの時間を水中で過ごしますが、すべてというわけではありません。

ゲンゴロウの成虫も立派な翅を持っていますので、タガメやミズカマキリ等と同じ水生昆虫として、夜間は活発に飛び回ります。飛翔能力はかなり高いと言えます。

他の条件の良い水場へ頻繁に移動したり、街灯に集まったりすることもあります。

ただしナミゲンゴロウでは、飛び立つ場合には一度上陸しなければなりません。

水面から直接は飛翔できないのです。

ただし一部の種では、水面から直接飛び立てるものもいます。

成虫は翅の下に空気を溜めこむ!

ゲンゴロウの成虫の後脚は太く長く扁平で、ブラシ状の毛が生えており、高速で泳ぐことに適しています。

水生昆虫のなかでも遊泳能力は抜群だと言えます。

ゲンゴロウは肺呼吸ですので、水中で呼吸することができません。しばしば水面に上がってきて、翅の下に空気を溜めこんでからまた潜っていきます。

ところがほんのわずかですが、尾部に気泡を残しておき、そこで空気(酸素)の入れ替えを行なうことが可能なのです。

まあ予備のボンベのようなものですが、これがあることで潜水時間は飛躍的に伸びることになります。

したがって水中に溶け込んだ酸素(水中酸素濃度)が少ないと活動が悪くなり、溺れてしまうこともあるのです。

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オスには吸盤が付いていた!

ゲンゴロウのオスの前脚には、その先端のカギツメ(符節)の一部が扁平に拡大して、吸盤状になっている部分があります。

これは交尾の際に滑って離れてしまわないように、この符節の吸盤を使ってメスにしがみついているのです。

またメスの身体、特に背中に相当する部は、オスに比べて滑沢ではなく、溝やシワが発達しています。

このことも、交尾の際にオスがメスの身体につかまえやすくなっているあらわれだと考えられています。

ゲンゴロウの成虫は穏健派!?

ゲンゴロウの成虫はもちろん肉食性なのですが、幼虫ほど獰猛というわけではなく、生きた獲物に対して積極的に襲いかかるわけではありません。

むしろ、死んで間もない小魚や弱った昆虫類などを摂食することの方が多いようです。

幼虫と異なり、通常は共食いをしませんので、複数の個体を同じ水槽等で飼育をしても問題ないと言えるのです。

ゲンゴロウの成虫はガリガリかぶりつく!

ゲンゴロウは幼虫も成虫も嗅覚に優れているので、水面に落ちてきた昆虫や、傷ついた魚などのニオイをかぎ取り、集まってくることが知られています。

成虫のアゴの力は非常に強く、オニヤンマやカマキリさながらにガリガリと獲物をかじります。

幼虫の体外消化とは異なり、体内消化です。

ただし、幼虫同様に消化液を口から吐き出して、その一部を溶かしながら摂食するというスタイルをとります。

ゲンゴロウは冬も元気!?
ゲンゴロウの成虫の寿命は3年ほどです。飼育下では5年も生きることがあります。
したがって数度の越冬もするのですが、自然環境下でのそれは、よくわかっていません。凍結した水面の直下で活動している姿を目撃されたこともあるので、他の水生昆虫のように冬眠をしたり、活動を低下させたりするわけではないようです。

飼育下において、冬期でもゲンゴロウは通常通りの活動をしていることから、特別に越冬準備をすることはないと考えられているようです。

私も子どもの頃にゲンゴロウを飼っていましたが、冬期にゲンゴロウの活動が低下していたような記憶はありません。

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ゲンゴロウは甲羅干しをする!

ゲンゴロウの成虫の特徴的な行動として、甲羅干しが挙げられます。

これは時々水面から出て陸に上がり、日光の下に身体をさらすという行動です。

爬虫類のように体温を調節したり、身体に付いた細菌類などの殺菌や翅のメインテナンスなどのために定期的にしているようです。

甲羅干しをしないと死んでしまう!

飼育下で水槽に水を張っただけにして甲羅干しのできない環境にしてしまうと、ゲンゴロウの身体にはミズカビなどが付着してしまい、それが拡がって死んでしまうこともあるのです。

ゲンゴロウを始めとした水生昆虫を飼うときには、水は浅めにしてやり、必ず大きめの石や流木などを足場として水面から出るように置いてやらなければなりません。

水生昆虫といえども肺呼吸ですから、水中でおぼれてしまうこともありますし、陸上でも活躍することをお忘れなく!

ゲンゴロウを飼育する場合

ゲンゴロウ類の成虫は比較的飼育が簡単です。

捕まえてきたゲンゴロウは、淡水魚と同じような水槽で飼うのに適しています。

ゲンゴロウの成虫は共食いをすることが少ないので、複数匹を同じ水槽で飼ってもかまいません。

ただし種類が違うゲンゴロウを一緒にすると、大きい種が小さな種を食べてしまうことがありますので注意が必要です。

幼虫の飼育は気を遣う!!

ゲンゴロウ類を卵から、あるいは幼虫から飼う場合、幼虫の取り扱いは非常に神経を使います。

幼虫はとても獰猛ですが、神経質でもあるので注意が必要です。

まずエサについてですが、ゲンゴロウ類の幼虫は、生きている生物しか食べません。

そのステージ(齢)によって1齢はミジンコ類、2齢ではアカムシ(ユスリカの幼虫)、3齢ではオタマジャクシなどが中心になりますが、種によって好む獲物が異なります。

また、エサを与え過ぎて食べ残しが出てしまうと水質が悪くなってしまいます。

みずからの食べ残しが原因といえども、ゲンゴロウの幼虫は水質にとても神経質なのです。

ですから水槽にろ過装置を設けるか、それができなければ毎日水を換える必要があります。

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飼育のヤマ場は蛹化!

ゲンゴロウの幼虫を飼育するにあたってのヤマ場は、蛹化(ようか)=さなぎになる=です。

成虫になれるかどうか・・

最終齢(3齢)幼虫は蛹化が近付くと、エサをまったく食べなくなります。

それを合図として、同じ水槽内に蛹室を作るための土(カブトムシ用の昆虫シートで可)を入れてやるか、別に準備した水槽に移してやるかしなければなりません。

幼虫は、水から上がると、さなぎになるための準備を陸上でおこなうからです。

ゲンゴロウの幼虫は、土中に穴を掘って蛹室を作り、その中でさなぎになって羽化を待ちます。

羽化は蛹室内で行われるので、通常自然下では目にすることはできませんが、飼育下であるならその様子を観察できる可能性はあります。

蛹化に近づいた幼虫がいつまでも上陸できないと、1〜2日のうちに死んでしまうことがありますので、そのサインを見逃さないようにしてください。

 

成虫の飼育は比較的簡単!

幼虫に比べて、ゲンゴロウの成虫の飼育はそれほど難しくありません。

成虫に与えるエサは、必ずしも生き餌でなくても構いません。

刺身や、煮干しなども食べますので、エサ探しに苦労することはありません。

ただし、こうしたエサは水を汚すので、こまめな水換えは必要になります。

もう一つ注意するのは、甲羅干しができるように石などを置いて足場を作る必要があることくらいです。

多摩動物公園の昆虫園では、ナミゲンゴロウには成虫、幼虫ともに自家養殖した生きたコオロギを与えているそうです。

盛んに食べられているゲンゴロウ!

実は、ゲンゴロウは中国でも、ベトナムでも、割合メジャーな食材として、素揚げや炒め物などにしてよく食べられているのです。

今でこそゲンゴロウは絶滅の恐れのある希少種ですが、たくさん生息していたころは日本でも貴重なタンパク源としなる食材として、よく食べられていた地方もあるそうです。

甲虫ですから、外皮は硬いのでそのままでは食べ辛そうです。

炒めただけのものなら、全身を食べるというよりも、翅の下の身を中心に食べるそうです。

味は意外と美味で、評判は良いなどと聞きますが、いかがなものなのでしょうか・・

 

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龍にとりつくシラミ?

ゲンゴロウの英語名は、Diving Beetle・・つまり水に潜る甲虫という、イメージそのものです。

中国名では龍虱(りゅうしつ)になります。

龍にとりつくシラミ(虱)なのです。う~ん、「言い得て妙」なのでしょうか・・?

ゲンゴロウは漢方薬の材料としても、煮干しにして、その粉末を用いることがあります。

その効能は腎臓をサポートして、「夜尿症(おねしょ)」に効果があるとのことです。

ゲンゴロウのニセモノたち

ゲンゴロウにも、よく似たニセモノたちがいますので、ご紹介します。

ゲンゴロウモドキはゲンゴロウ科ゲンゴロウモドキ属に属する種です。

その名の通り、ゲンゴロウによく似ていますが、同じゲンゴロウ科に属しますので当たり前ですよね(笑)

本家のナミゲンゴロウより一回りほど小型です。日本国内では3種が生息していますが、いずれも絶滅危惧種に指定されています。

またゲンゴロウダマシという種もいます。

同じオサムシ上科のゲンゴロウダマシ科に属しますので、ゲンゴロウモドキ属よりは遠い種になりますが、姿形は本家のナミゲンゴロウにそっくりです。

いずれもゲンゴロウにごく近い正式な種です。人間が勝手に「モドキ」だの「ダマシ」だのと名付けただけですので、ちょっとかわいそうな存在です。

 

タガメとゲンゴロウ

タガメとゲンゴロウはお互いに水生昆虫として最もメジャーであり、人気についても一二を争うほどの存在です。

ただし獰猛さと大きさではタガメが勝り、ゲンゴロウはおとなしくユーモラスなイメージが強いと言えます。

ともに絶滅危惧Ⅱ類に指定されており、近年はその数が激減しています。

飼育下であっても、数の減少から近親交配が進んでいるため、増殖すること自体がかなり難しくなっているようです。

このため水族館でも展示を中止することが増えているようなのです。

ゲンゴロウの名の由来

ゲンゴロウとは、まるで人名のような名前ですよね。

この名前の由来については、諸説あるのですが、ちょっと興味深いものもあるのでご紹介しておきます。

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強欲代官の源五郎!

むかしむかし、あるところに貧しいけれど親孝行な男の子がいました。

病気の母を懸命に看病しながら暮らしていました。ある日、木の精霊があらわれて、男の子に「うちでの木槌」を与えました。

その木槌は、人を救うためならいくらでも金を出しますが、欲望のために振るとだんだんと身体が小さくなるというものでした。

男の子はその木槌で小判を出し、高価な薬を買って母親の病気を治すことができました。

この話が噂になって強欲な代官源五郎の耳に届きました。

源五郎は男の子から木槌を取り上げると、自分のものにしてしまいました。

ある日、源五郎の姿が見えなくなったので、村人がこぞって代官屋敷に出向きました。

そこには、小判が山のようにあり、中から一匹の虫が出てきました。

源五郎は欲望のために木槌を振って次々に小判を出したので、どんどん身体が小さくなり、とうとう虫になってしまったのです。

それ以来、村人たちはこの虫を「源五郎」と呼ぶようになったというのです。

ゲンゴロウブナ!

もう一つはゲンゴロウが、琵琶湖に生息しているゲンゴロウブナの幼魚を好んで食べるからだというものです。
ではゲンゴロウブナとは?ということになりますよね。

ゲンゴロウブナはヘラブナ!

ゲンゴロウブナは、別名ヘラブナと言い全国各地の河川や池沼にいます。

もともとは琵琶湖の固有種でした。ゲンゴロウブナのうち、特に体高の異常に高いものを品種改良して、それを全国に放流したものがヘラブナと呼ばれているものです。

ちなみに琵琶湖周囲で作られている珍味「ふなずし」の原材料になるのはゲンゴロウブナの近似種の「ニゴロブナ」です。

「ニゴロ」は、ゲンゴロウブナに似ているという意味の「似五郎(にごろう)」からきているそうです。

このフナの腹を割いて内蔵を取り除いた部に飯を詰め、重石を乗せて漬込んで、醗酵させたものが「ふなずし」です。

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ゲンゴロウと雷神

ゲンゴロウブナの「ゲンゴロウ」の語源にも逸話が残っています。

むかしむかし、源五郎という男がおりました。

ある日、源五郎は天狗に豆をもらったそうです。その豆をまくとグングン伸びて、天に届くほどの大木になりました。

源五郎はその木に登ってみました。てっぺんまで行くと雷神に出会いました。そして雷神に頼まれて、雨を振らせる手伝いを始めました。

源五郎は、おもしろがって雨を降らせていると、地上に大きな水たまりができました。

そのうちに足を滑らせてしまい、源五郎はまっさかさまに落ちていき、雨でできた大きな大きな水たまりにボッチャーん。

そこでフナになりました。その大きな水たまりは琵琶湖になった・・という話です。

堅田の漁師の源五郎!

その他にも琵琶湖の西岸、堅田という地の漁師源五郎が語源だという話があります。

一つは、応仁の乱の頃、漁師源五郎は都にフナを売り歩いていました。味がよく、大変評判がよかったそうです。

そのうちに大納言家の姫君に恋をしてしまった源五郎は、気持ちを伝えるために腹に恋文を忍ばせた焼きフナを姫に献上し、見事に恋が成就した・・というものです。

また、漁師の源五郎が大きくて立派なフナを捕らえました。それを安土城主に献上しておおい褒められたということから、琵琶湖の大型のフナをゲンゴロウブナと呼んだというものもあります。

さらに、堅田の源五郎という魚屋が大きなフナを専門に売りさばいていたから、都ではそれをゲンゴロウブナと呼ぶようになった・・というものもあります。

昆虫のゲンゴロウは・・・?

はたして琵琶湖の淡水魚であるゲンゴロウブナと、日本全国にいる昆虫のゲンゴロウと、その名前に関わりがあるのかどうか・・

ですが、ゲンゴロウブナの稚魚を食べるから、その虫がゲンゴロウになったというのでは、ちょっと本末転倒のような気がするのですが・・(笑)

(ライター:オニヤンマ)

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