アマミホシゾラフグ、何ともロマンティックな名前の付いたフグ。
2014年に見つかった新種で、行動もとってもユニークなんです。
アマミホシゾラフグの生態
アマミホシゾラフグはフグ目フグ科シッポウフグ属に分類される体長15㎝ほどの小型のフグ。
日本では奄美大島の南沖、大島海峡、琉球諸島近海の海底25mほどの所に生息しています。
白い水玉模様が特徴で、体の後ろ部分が茶色で腹部には白色と銀白色の水玉模様があります。
肉食性で群れを作らず、単独で行動し、背ビレなどを使った独特の泳ぎ方がフグ科の特徴。
大量の水を飲み込んで体を大きく膨らませることも出来ます。
オスは春から夏にかけて、海底の砂で尾ビレや背ビレを使って、器用に円形状の独特の模様の入った産卵床を作ります。
その大きさは直径2mほど。
30本ほどの均一な幅で作りあげられる模様は意図的というよりは、彫り上げた砂をわきによけるという一定の動きをすることによって、自然と模様が出来ているという感じ。
フグがデザインを考えて芸術的に模様を描いている、というわけではなさそうです。
1週間程かけて作り上げられるこのミステリーサークルはメスの産卵場所になります。
オスはメスをこの産卵床の中央に誘い、産卵させます。
魚類の多くは体外受精ですから、メスが卵を産み、その卵にオスが精子をかけるという方法。
産卵後、オスは中央の受精卵を守り、時にはヒレを使ったり巣作りの時に集めていた貝殻を使ったりして受精卵に新鮮な空気や水を送り、献身的に卵を守ります。
縄張り意識も強くなるので、サークル内に入ろうとする他の生物を、もともと膨らんだ顔を更に膨らませて!?追い払います。
オスの献身的な行動で、受精卵は1週間ほどで孵化し、子供たちは無事サークルから巣立っていく!?というわけ。
ちなみに、このミステリーサークル、ライオンのオスの鬣のように、オスのシンボル的要素が強いらしく、より上手にミステリーサークルを作ったオスが持てるのだとか。
そして更に、シンボルとしての要素だけでなく、物理的にも卵が海水の動きで流さないような構造になっているというのだから、なんと賢いことか!!
アマミホシゾラフグが発見された経緯
アマミホシゾラフグが発見されたのは2012年。
1995年頃から、ダイバーたちの間では海底に不思議な手の込んだミステリーサークルがあるということは話題になっていました。
しかし、それを誰が何のために作っているかは謎に包まれていたのです。
NHKの生物番組、ダーウィンが来た!がその正体を突き止めました。
フグの第一人者である国立科学博物館の松浦啓一の更なる調査の後、アマミホシゾラフグが新種であるということが判明。
夢のある名前を!ということでこの名前が付けられたと言います。
ニューヨーク州立大学の国際生物種探査研究所は珍しい生態などから、特に注目したい新種のトップ10を発表しているが、アマミホシゾラフグもこのトップ10に選ばれました。
年間1万8000もの新種が見つかる中、日本の新種が選ばれたということはとても名誉なことで、奄美大島のフグは世界に知られることになったのです。
アマミホシゾラフグのまとめ
アマミホシゾラフグは2012年に見つかったシッポウフグ属に分類される新種のフグ。
体長は15㎝ほどで、星空のような無数の白い斑点を持っている。
オスはミステリーサークルのような美しい模様の円形の産卵床を海底に作る。
ミステリーサークルはメスへのアピールでもあり、受精卵が流されないための工夫でもあると考えられる。
ニューヨーク州立大学の国際生物種探査研究所の発表する注目したい新種トップ10にも選ばれ、世界中に知られる存在となった。
(ライター ナオ)