みなさん、テンジクザメと聞いてどんなサメを思い浮かべますか?
テンジクザメは小型で比較的穏和で人を襲うことのないサメです。
たいていの種は海底を這うようにして移動しています。
サメといえば凶暴なイメージですが、テンジクザメはまったく違います。
ここではそんな変わり者のテンジクザメを紹介します。
テンジクザメの生態
テンジクザメは、軟骨魚綱・サメ目・テンジクザメ科の海水魚の総称です。
テンジクザメ科には、以下のサメがいます。
テンジクザメ属……イヌザメ・シマザメ・テンジクザメ(シロボシテンジク)など8種。
モンツキテンジクザメ属……モンツキテンジクザメ、マモンツキテンジクザメ、ズキンモンツキテンジクザメ、インドネシアモンツキテンジクザメなど9種。
テンジクザメの多くが1メートルに満たない小型のサメで、胸ビレを使って這うように移動します。
モンツキテンジクザメ属は、頭部と胸ビレの上部に比較的大きな暗色斑があります。
テンジクザメ属、そのような模様はありません。
なお、鼻部のひげが発達していることや、鼻と口を結ぶ溝があることなどが特徴です。
その体型は、生活環境にそれぞれ適応しており、ウナギのように細長いクラカケザメや、腹背の高さに比べて左右の幅が大きいオオセなどさまざまです。
一般に1メートルくらいの小形のサメですが、トラフザメは2メートル近くになります。
ちなみにサメには珍しく卵胎生です。
またテンジクザメは夜行性で、干潮時に活発になります。
サンゴの間や下で休息していて、頭部が隠れさえすれば、他の部分がはみ出しても気にしないようです。
ときおり開けた砂地やサンゴ礁の上に出て、水流に向かって静止することがあります。
これは呼吸や捕食者の監視のためであるといわれています。
マモンツキテンジクザメの生態
マモンツキテンジクザメは、テンジクザメ科に属するサメの一種です。
このテンジクザメは歩きます。
マモンツキテンジクザメは、複雑なサンゴ礁の地形に適応しており、櫂状の胸ビレと腹ビレで地面を押しながら、体をくねらせて歩きます。
マモンツキテンジクザメが泳ぐときは、危険から逃れる場合ですが、残念なことに遊泳速度はあまり速くありません。
ちなみに、対ビレの軟骨が他のサメと比べて分離・縮小していて、ヒレを四肢のように用いることを可能にしています。
この動きによって、水から這い出して孤立した潮溜まりを行き来できたりします。
これはサンショウウオのような四肢動物との収斂進化であると考えられており、最初の地上性脊椎動物が進化するキッカケとなった行動と同等のものであると推測されています。
テンジクザメの生息域
テンジクザメは日本では高知県、長崎県、鹿児島県阿久根に分布しています。
海外では朝鮮半島、台湾、中国、インド、西太平洋に分布しています。
上述のエリアの沿岸の岩礁やサンゴ礁に生息しています。
テンジクザメの名前の由来
属名のNebriusは古代ギリシア語nebrisまたはnebridosに由来します。
黄色という意味で、皮膚の色に因んだものです。
ちなみにテンジクザメの英名はbamboo sharkです。細長いので泳いでいるところを上から見ると、まるで竹のように見えたのでしょうね。
テンジクザメの食性
動物食性で魚類や底生動物を捕食します。
テンジクザメの益害
テンジクザメは、捕まえると噛みつく可能性はありますが、基本的には人に危害を加えません。
動きが遅いことと、おとなしそうな外見であることから、海水浴客に捕獲されることが多いようです。
また飼育環境には容易に適応します。
そのため米国、カナダ、オーストラリアなどの多くの水族館で展示されています。
テンジクザメの人間との関り
テンジクザメは、古くから沿岸の釣りで漁獲されてきました。
日本では漁獲数が少なく、食用になることはあまりありませんでしたが、海外では食用となり市場にも出回っていました。
現在も食べられています。
またテンジクザメ科のなかでもシロボシテンジクは、最大100センチと小型なので、イヌザメについでマリンアクアリウムで人気の種となっています。
この2種は、テンジクザメ科のなかでも、底生性が強くて、あまり泳ぎまわりません。しかもテンジクザメ科はサメのなかでも温和です。
餌付けもしやすく飼いやすいようですね。
テンジクザメのまとめ
以上、テンジクザメはいかがでしたか?
海底を這いまわるサメというのは、なんだかユーモラスですね。
しかも穏和で人を襲うことがありません。
もし機会があれば、一緒に泳ぎたいサメです。
(ライター ジュン)