お花見などで有名な広い上野恩賜公園を歩いていると、あちこちにハトが集まってエサをついばんでいたり、どこからともなくたくさんのハトがバタバタと足元に寄ってきたりしますよね。

ここでは、公園や神社の境内などでよく見かけるハトではなく、もの悲しく響く鳴き声をもち、色彩がカラフルで美しいアオバトというハトに注目していきます。

アオバトは鮮やかな色彩の美しいハト

アオバトは、全長33㎝ぐらいの鳥でハトの仲間です。

全身がオリーブのような黄緑色をしており、頭から胸にかけては黄色、お腹は白、クチバシとアイリングがコバルトブルー、オスには肩に赤紫色の羽が見られます。

通常のドバトなどと比べると、とてもカラフルで美しい色彩のハトですよね。日本では古く緑色も青に含まれていたので「アオバト」と名づけられました。

アオバトはどこで見られる?

アオバトの生息地は、中国、台湾、日本です。

 

ほとんどは留鳥としてずっとその地で暮らしますが、北海道では夏に飛来してきて繁殖し、秋には本州に帰っていきます。

日本でアオバトが見られる場所として知られているのは、神奈川県大磯町照ヶ崎海岸と北海道小樽市張碓海岸です。

アオバトの鳴き声とは?

アオバトは鳴き声も特徴的です。童謡「鳩ぽっぽ」から連想する明るい声ではなく、「アーーアオーアオー」、「ウーウワァーオー」などともの悲しく唸るような声で鳴きます。

 

美しい姿にはそぐわず、アオバトの鳴き声は意外に大きく不気味な感じがするため、「アオー、マオー」などと聞こえることもあり、「魔王鳥」、「馬追い鳥」と呼ばれることもありました。日本の各地に伝わる昔話の一つに、継子が馬を放牧にいって馬を失い、それを継母に責められて日が暮れてからも馬を呼び続けているうちに1羽の鳥、アオバトになったというものなどがあります。

 

また、アオバトが鳴くと必ず天気が悪くなるという言い伝えが残っている地域もありますが、その根拠は不明です。

アオバトが見かけられるのは梅雨のころが多いからではないかとも推測されます。

アオバトの謎めいた生態

アオバトの生態は、現在もあまり解明されていません。

巣を見つけることがむずかしいためです。日本では低地や山地の森林に住んで、木の実や草の種をエサにしているようですが、抱卵や育児の雌雄関係、役割分担などは明らかにされていません。

きれいな緑色の体が保護色になり、森の緑に隠れてなかなか姿を見ることができないミステリアスな鳥なのです。

アオバトは海水浴をする?!

アオバトの観察地として有名なのが神奈川県大磯町と北海道小樽市の海岸ですが、アオバトはすみかにしている山地から、ほぼ毎日海岸に飛来してくることが知られています。

アオバトは何のために海岸にくるのでしょうか。

海水浴のためなのでしょうか?

 

アオバトは海岸に飛んでくると岩礁の上を飛び回り、岩場に降り立ちます。

そして窪みに溜まった海水にくちばしをひたして、吸い込むように飲みます。アオバトは、海水や温泉などの塩分を含む水を飲む世界でも珍しい鳥なのです。

 

なぜ塩分が必要なのかというと、木の実や種をエサとしているためナトリウムなどのミネラル分が不足するからではないかと考えられています。

台風が通過中で大きなうねりの波が磯に打ち寄せるような日は悲劇が起きてしまうことがあります。

アオバトたちが荒波の中で海水を飲もうして波に叩きつけられて命を落とすのです。アオバトたちにとって海水を飲むことは命がけともいえるのです。

地元民に愛されているアオバト

神奈川県の大磯町照ヶ崎の磯には、丹沢のブナ林帯で繁殖しているアオバトが毎日海水を飲みにやってきます。

日本で最も多くのアオバトが見られる貴重な場所であるため、神奈川県の天然記念物に指定されています。

アオバトは大磯町の「町の鳥」であり、アオバトがよく見られる時期になると毎月観察会が開かれます。

 

長い湘南の海岸線の中で、なぜこの海岸に集中的に来るのかというと、この海岸の岩礁に空いた窪みがほぼすべて海水を貯めやすい方向に開いているからだという説もあります。

 

もう一つのアオバトの観察地として有名な小樽市でも、アオバトは「市の鳥」として市民に親しまれています。

小樽海上観光船の名前になったり、小樽商科大学の研究論文データベースのマスコットキャラクターになったり、アオバトが街や市民生活のいろいろなところで使われています。

 

張碓海岸へ下りて行く山道の入り口付近には、札幌の俳人勝又木風雨の歌碑があり、「青鳩や 礁(いくり)つづきに小樽港」と刻まれています。

まとめ

ハトは平和の象徴としてオリンピックの開会式で放たれたり、日本でも童謡になったり、ハトサブレー、はとバス、いろんな企業の社名やロゴマークなどに採用されたり、私たちにはなじみ深い鳥です。今回アオバトというハトの存在をはじめて知りましたが、いつかぜひ小樽や大磯に行って、神秘的なアオバトの鳴き声を聞き、美しい姿を見たいと思いました。

(ライター sensyu-k)