自生するシャクナゲを見た事はありますか。
あるとすればそれは過酷な高山やマイナスにまで気温が下がる地域だったかも知れません。
公園などにさりげなく植えてある気がするシャクナゲの季節はいつでしょう?
シャクナゲの特徴
シャクナゲはツツジ科の常緑低木樹です。
この植物の最大の特徴は分布地域がとてつもなく広い事です。
シャクナゲはヒマラヤ地方などの高地、中国の山地、アジアなどの温帯や熱帯、南半球のパプアニーューギニアが南限といわれるきわめて珍しい常緑樹です。
北欧のノルウェーでもごく自然に植えられています。
樹の高さは30cm~3mなどと幅があり、横幅も40cmほどのものから2mほどになるものまで地域によって様々です。
葉は厚く枝に対して互い違いにつきます。シャクナゲの花が咲くのは4月~6月頃です。
日本の庭木や緑地帯などに見られるシャクナゲの多くは交配種です。
花の色合いは赤系から白いもの、淡い桃色から黄色いものもあります。
シャクナゲの種類は多く、成長の仕方や外見の特徴は変化に富んでいます。
シャクナゲの秘密と越冬
地球の広い地域にあるシャクナゲは、中国北東部からヒマラヤにかけての標高が高い地域から生まれたのではないかと考えられています。
日本には富士山にハクサンシャクナゲというシャクナゲが標高2200mあたりに分布します。
これは樹木が生育できるとされる2500mに匹敵する高さです。
ハクサンシャクナゲもそうですが、シャクナゲの葉には過酷な地域に自生できる秘密があるようです。
シャクナゲの葉は厚みがあり光沢があります。常緑の低木樹にしては随分しっかりした葉です。
キバナシャクナゲというシャクナゲは、北アルプスの高山に自生しています。
一般的な温帯の常緑樹は、マイナス15度以下になると分布しないと考えられています。
ハクサンシャクナゲの分布する地域はマイナス20度以下になります。
気温が下がる地域にある常緑樹は、一般に葉に工夫をして蒸散を抑えると考えられています。
しかし、2000mもの標高とマイナス20度以下まで気温が下がる富士山麓では、土壌は凍り付き根から水分を得る事ができず、普通の常緑低木樹は枯れてしまいます。
ハクサンシャクナゲは冬が近づくにつれ、葉を枝から下げるようにしながら丸めます。
葉の表面からの水分の蒸発を最低限に抑える事で、凍結した冬の時季を耐えているのです。
こういったシャクナゲの行動は北海道に分布するシャクナゲにも見られるようです。
また、北アルプス付近では葉を丸め、雪が積もるシャクナゲの姿を見る事があります。
耐寒性、とよく言われますが、シャクナゲが必要としているのはもっぱら耐凍性であり、シャクナゲは驚異的な常緑樹です。
また、シャクナゲの葉には有毒物質が含まれています。
ヤクシマシャクナゲ
屋久島に咲くシャクナゲもまた、過酷な地域を選んでいます。
標高は1200m以上から山頂部です。ヤクシマシャクナゲの花の季節は5月頃からです。
気温は約22度ほど、最低でも20度くらいです。
花はピンク色で中央に雌蕊が1本、雄蕊が10本あります。
日本列島は南北に長いので季節の変化がはっきりしていますが、シャクナゲの分布している地域をみるとずいぶん違いがあるものです。
ヤクシマシャクナゲは屋久島の固有種です。
シャクナゲの季節
シャクナゲが多く自生するといわれているミャンマーではシャクナゲは国の花になっています。
また、ブータンでは標高3000m級のタフな土地にシャクナゲが自生しています。
花の開花時期は4月~5月だそうです。南半球のニューギニアではシャクナゲの季節は日本の秋から冬にあたります。
もちろん日本のシャクナゲの花の季節は初夏です。日本全国に一般的に見られる花であり、生育は比較的容易ともされます。
しかし、分布範囲が広くシャクナゲの花の時期は、越冬時期を除き世界規模で見るとほぼ一年中ともいえる不思議な花です。
(ライター:おもち)