カイガラムシも一応虫の一種です。
何もないところからどこからともなくわいてくる、などという事は現実的にありません。
あれらは何処からやってきていつの間に増えるのでしょうか?
カイガラムシの一年の動き
カイガラムシは非常に種類が多いのですが、ここではごく一般的にみられるカイガラムシの行動についての話です。
カイガラムシの卵~1齢幼虫
カイガラムシはカメムシの仲間なので、卵から生まれます。
カイガラムシの卵は小さく、白い綿のようなものに包まれています。
この綿の中には数百個ものカイガラムシの卵が入っています。産み付けられるのは木の枝などです。
卵は10日から15日程度で孵化し、カイガラムシの一番小さい幼虫は1mmくらいです。
地域により差がありますがこの1齢幼虫は6月から7月に出現します。
脚も3対あり、歩いたり移動することもあります。この初期の幼虫時代から既に背がろう状のもので覆われ始めます。
2齢幼虫
このころになると、カイガラムシの幼虫は越冬します。
木の枝の皮のちょっとした隙間などで冬を越します。
こういう行動がみられるのは7月から9月頃が多いとされます。
3齢幼虫
カイガラムシのオスは、小さい翅をつけて飛ぶことができるようになります。
カイガラムシのオスは非常に小さく、交尾行動を行うと死亡します。
また、メスのカイガラムシはろう状のもので覆われ始めると移動が不可能になります。
おおよそ9月頃になると生殖が開始されますが、実はカイガラムシは卵の数も多く次々に孵化し木に張り付くという行動を繰り返し続けているので、カイガラムシたちは順次増え続けます。
カイガラムシが出やすい時期として夏頃、となっているのは、このころになるとカイガラムシの成虫の数が増え既に木に張り付いていて目に付きやすい状態になっている事が多いからです。
カイガラムシたちは基本的に年中活動しています。
成虫
越冬したカイガラムシたちは3月頃になると新芽や若い枝に集まります。
これが延々と繰り返されます。成虫の見た目は、白く見えるわらじ虫のような外見です。
カイガラムシの害を防ぐ為には、越冬させないことが重要です。
カイガラムシは成虫になってしまうと、背の部分を覆う白いろう状のものは薬剤をはじく為、駆除は困難になります。
また、カイガラムシのメスの成虫、卵、2、3齢幼虫にも農薬のようなものをはじくようです。
カイガラムシの害
木肌にびっしりついているカイガラムシの集団ですが、あれはメスです。カイガラムシのメスは成虫になると木にとりつき脚をなくしてしまいます。
翅もないので移動せず樹液を吸って栄養としています。生存に必要なだけの栄養を取り、分泌した排泄物を背の部分に覆うような姿になります。
カイガラムシの成虫は本来暗褐色ですが、背が白いのは排泄物をろう状にしたものです。
ほぼ糖分でできている物質なので、アリやその他細菌などがぞろぞろ集まってきます。
木の枝や葉などに黒っぽく動くものを発見したら、カイガラムシと共生しているアリの一種である可能性があります。
また、このことで引き起こされるのは、すす病です。すす病もカイガラムシの分泌する糖分を栄養とし発生する糸状菌がもとになる病気です。
葉の表面に黒いすすがついたような状態になってしまいます。樹木の被害はひとつではなく、いくつかのものが合わさって出てくる場合も多くあります。
カイガラムシの増え方
カイガラムシの卵はどこからやってくるのか、というのもよく分からない事のひとつです。
メスが木に固着した状態でどのように卵をもつのかというと、カイガラムシは単為生殖でも産卵可能だからです。
全てのカイガラムシが行うというわけでもないようですが、カイガラムシは動かないのに増える要因として、単為生殖を行う事が考えらえます。
このためやはりカイガラムシを成虫にしてしまうと、増えていく可能性がありまた脚をなくして木肌に固着しているので取り除くことが困難になるのです。
カイガラムシたちはなんらかの隙間によく入り込みます。果樹の被害に多く見られるヘタの間に入るカイガラムシなどのように、袋で覆っても袋の隙間に入り込みます。
カイガラムシはよく入り込み、それを利用して何となく増えていく、といった行動をしているようです。
木に張り付けばカイガラムシは生きていられます。
たとえ木の養分を吸いつくし心中するような状態になっても彼女たちはひたすら張り付きます。
なぜなら脚も翅もなくそれ以外に生存方法はないからです。
カイガラムシは風により移動し、また別の木に張り付くともいわれます。
カイガラムシは非常に小さく幼虫であればなおさら風に乗っていくことも可能であり、一匹であっても単為生殖は可能であることが多いからです。
カイガラムシの幼虫の越冬を防ぐ
カイガラムシの背を覆うろう状のものは様々な薬をはじきます。
そのため、カイガラムシの幼虫および成虫を防ぐ予防策のようなものが有効といえそうです。
カイガラムシの幼虫たちは木と表皮の間に入り込んでいます。
木にクラフト紙などでできたものを巻くバンド誘殺という方法だと、隙間に入り込むタイプの虫に効果が期待できます。
巻くのは遅くても9月頃です。このバンドは、12月以降に外して焼却処分します。
または、木の粗肌(ソヒ)削りという事も有効なようです。
冬の剪定が済むと粗皮削りを行います。表面がデコボコしているような木肌を専用の道具で削ります。
最近は水圧を利用した噴射式のようですが、昔は鎌で削っていたそうです。これも皮の間にいる害虫被害を防ぐ為に有効な手段です。
樹木の構造もまた面白くできていて、表面が中身、のような感じでもあります。
表面に見える木肌は古い組織の部位です。
たまにぼこぼこした木の皮がはがれている状態の木を見かけますが、古い組織が自然にはがれている場合もあります。
カイガラムシについて
カイガラムシの生態は異様にも思えます。カイガラムシたちは非常に小さく、隙間に入り込み時には風にのって移動し増えていきます。
卵から生まれるのは確実なことですが、カイガラムシの種類は国内だけでも400種はいるといわれており、はっきりした生態が不明の種類もいるようです。
そのため、一応カイガラムシの天敵といわれる寄生蜂などがいますが、ある種のカイガラムシにしか効果は期待できません。
薬剤を使用する場合もあるようですが、カイガラムシの背を覆うろう状のものには効かない時期が多く地道な作業が必要になります。
日々何気なく口にしているかもしれない果物などはこのような努力の積み重ねで結実したものです。
(ライター:おもち)