水中のギャングと言われるタガメ。
ギャングと言えども、しっかり子孫は残し命を繋いでいます。
そんなタガメの卵、あなたは見たことがありますか?
タガメの特徴と生態
タガメはカメムシ目コオイムシ科に分類される昆虫です。
日本最大の水生昆虫で、日本最大のカメムシでもあり、かつては食用にされていたこともありますが、現在では生息数が減り、絶滅が心配されている昆虫でもあります。
北海道を除く日本全土に分布し、国外では台湾、朝鮮半島、中国に分布しています。
水田や水草が豊富な止水域に生息しており、かつては田んぼを代表する昆虫でしたが、農薬の普及や護岸の環境破壊により、数が減少しました。
体長は50~65㎜、メスの方が大型で、オスの個体で60㎜を超えるものは珍しいと言われています。
体色は暗褐色で、若い個体には黄色と黒の縞模様があります。
肉食性で魚やカエル、水成昆虫などを捕食、時にはヘビやカメなどの爬虫類やネズミなどの小型哺乳類も捕食します。
鎌状の前脚で捕獲して、針状の興奮を突き刺し、消化液を送りこみ、消化液で溶けた液状の肉を吸うので、タガメに捕食された生物は骨と皮膚の実が残ります。
自分よりも体の大きな獲物を捕食することも多く、獰猛で水中のギャングという別名もあるほど。
タガメの繁殖と卵
タガメの繁殖期は5~6月で、この頃になるとオスが腹で一定のリズムで水面を叩く求愛行動が見られ、これによって起こる並みによってメスを呼び寄せています。
交尾や産卵は日没後に行われ、水面上にある杭や植物の茎などに60~100個程度の卵を産み付けられます。
産卵時に種類によって、メスのお尻からは白い泡のようなものが出ますが、それがオスの精子とまじりあい、卵をくっつける役割を果たします。
それらの卵はオスが世話をするのが通常です。
オスは卵に覆いかぶさったり、近くの水中で卵を見守り、時折水から上がって濡れた体をさかさまにして口吻を通して卵を湿らせ、乾燥しないようにします。
卵の時の最大の天敵はアリだそうで、タガメのオスが卵の回りにいることでアリが近づかなくなるのだそう。
アリが襲ってくると前脚でアリを払いのけたり、稀に青臭いバナナのような臭いを発して撃退します。
産卵されたばかりの卵は固く、小さいのですが1週間から10日ほど経つと、卵は徐々に膨らんではちきれんばかりにパンパンになります。
やがて卵の上部がパカッと割れて、孵化します。
孵化は夜から朝にかけてが多く、乾燥しすぎたり、孵化が途中でうまくいかなくなると卵を半分出たところで死んでしまう場合もあります。
孵化後はすぐに水に落ち、水中生活を始めます。
孵化後すぐの時は透明な黄色をしていますが、数時間後には黒の縞々模様が入ってきます。
タガメの種類
タガメは世界に20種類以上の近縁種がいると言われていて、どの種類も現地では水生昆虫の王者的存在になっているようです。
日本のタガメと比べると体は大きいのですが、前肢が小さい種類いが多いようです。
ナンベイオオタガメは南アメリカに分布する世界最大の水生昆虫で、その体長は100㎜以上にも達します。
また、ナンベイタガメも南アメリカに生息する90㎜程の体長を持つ種類です。体の大きさに比べて細身なのが特徴です。
メキシコタガメはメキシコに生息し、体長は45㎜程。日本のタガメよりも小型です。
オーストラリアタガメはオーストラリア北部の止水域に生息し、体長は60㎜ほどで、日本のタガメとやや同じ大きさです。
東南アジアや日本でも八重山諸島に生息しているタイワンタガメはオスの成虫にキンモクセイのような芳香があると言われ、食用にされています。大きさは90㎜ほど。
アフリカにいるタガメも同じく90㎜程でケニアやナイロビに分布しています。
以上、水中のギャング、タガメについてのあれこれでした。
(ライター ナオ)