サルコスクスは、白亜紀前期のアフリカに生息していた巨大なワニの仲間です。
白亜紀(1億4500万年前~6600万年前)は、ジュラ紀(2億年前~1億4550万年前)に次ぐ恐竜全盛の時代であり、その末期にティラノサウルスが登場してきます。
つまりサルコスクスはワニの先祖といえる存在であり、絶滅してしまった恐竜たちと同時代を生きていた爬虫類なのです。
サルコスクスは史上最大級のワニだった!
サルコスクスは、推定で全長11~12メートルと考えられています。
この大きさは、北アメリカ大陸に棲息していたデイノスクスとともに史上最大級のワニとされています。
ただし両種ともに完全な全身骨格はまだ発見されていませんので、その大きさは発見された頭骨等身体の一部からの推定値に過ぎません。
巨大な頭部と全身の半分ほどの骨だけが発見された!
サルコスクスの化石は、1964年にサハラ砂漠南端のニジェール共和国で頭蓋骨の一部(歯と装甲板)がまず見つかりました。
その後、2000年の同国テネレ砂漠の発掘調査で長さ1.6~1.8メートルにもなる成体の頭蓋骨3つと幼体の頭蓋骨3つなど、全身のおよそ半分ほどの化石が見つかっています。
サルコスクスはガビアルに近い!?
現存するワニ目は、アリゲーター科、クロコダイル科、ガビアル科に分けられています。
発見されたサルコスクスの頭骸骨は幅よりも長さがまさりますので、アゴの部分が細長いガビアル科に近い形態といえます。
しかし、ガビアルよりも幅は広く、鼻先が特に太くなっていますので、ガビアルのようなアゴの脆さは見受けられません。
これに対してもう一つの巨大なワニの先祖であるデイノスクスはクロコダイルに近い形態をしています。
サルコスクスは大型の魚類を食べていた!?
サルコスクスの化石が発見された付近では他の恐竜の化石も数多く見つかっています。
それらの恐竜の化石の胃の中からは淡水生の大型魚類やカメなどの一部が見つかっています。
現在砂漠であるサハラ地域も、当時は緑豊かで大きな川が流れる環境であったと推測されています。
したがって、サルコスクスはそういった川辺で生活しており、大型の魚類や水辺にやって来た小型の恐竜などを捕食していたと考えられています。
サルコスクスの寿命は、60年ほどだと考えられています。
サルコスクスの模型はパリで見られる!
2007年8月から、パリにある自然史博物館にサルコスクスの実物大の想像模型が展示されています。
ここでは全長12メートル、体重10トンと表示されています。しかしこのデータは前述したように、あくまで推計値です。
ワニの獲物の捕らえ方!
サルコスクスの長いアゴは、現存する種でいうとガビアル科のインドガビアルやクロコダイル科のオーストラリアワニ(ジョンストンワニ)やクチナガワニを連想させます。
したがってその働きや食性、獲物の捕え方もそれらと近いものであると想像できます。
アリゲーター科のワニが大型の獲物に咬みつき、身体を捻ってその肉を食いちぎるのに対し、ガビアル科のワニは水中で素早い動きをする小型の魚類を、長い口吻を左右になぎ払うように振り回して捕えます。
サルコスクスはヒトを襲うか?
サルコスクスの歯は上下に100本以上あり、一度獲物に咬みつくと容易には抜けない構造になっています。
インドガビアルの細長い口は折れやすく脆いのですが、幅広で鼻先が頑丈なサルコスクスの口吻は、頑丈な構造です。
したがってガビアル型、アリゲーター型のどちらの使い方もできたと推定できます。
インドガビアルがヒトを襲わないのに対し、もしサルコスクスとヒトが共存していれば、捕食対象になっていたかもしれません。
サルコスクスは大きな声で鳴いていた!?
サルコスクスにはインドガビアル同様、口吻の端にコブ状の隆起があります。
インドガビアルはこれを使い、爆発音に近い大きな鳴き声を発しますので、サルコスクスも大きな鳴き声を出すことが可能であることがわかっています。
インドガビアルでは、オスが求愛のためにこの鳴き声を発するのです。
サルコスクスの全身骨格は発見されるか?
今後、さらに発掘が進みサルコスクスの全身骨格の発見などがあれば、もっと詳しい生態がわかってくることでしょう。
大いに期待しましょう。
(ライター オニヤンマ)