日本全土に広く分布するイトマキヒトデは、国内において最もポピュラーなヒトデの一種です。

今回は、そんなイトマキヒトデの生態をみなさんにご紹介していきます。

イトマキヒトデの生態

イトマキヒトデはアカヒトデ目イトマキヒトデ科に属します。

最大直径(足の先端から反対側の先まで)は15cmにも達し、黒地に映えるオレンジ色の斑紋が特徴的です。

 

お腹側にびっしりと生えた管足で海底をゆっくりと移動しながら、貝類や生物の死骸などを捕食します。

 

基本的には五本足ですが、四本足や六本足、中には七本足を持つ個体も見つかっており、七本足の個体が発生する割合はおよそ0.1%という低い確率だそうです。

姿かたちが「苧環(おだまき)」と呼ばれる糸を巻くための道具に似ていることから、イトマキヒトデという名が付けられました。

イトマキヒトデには毒がある?

日本列島は海に四方を囲まれた島国であり、厳しい自然は人間に恵みと災害をもたらしてきました。

古来より日本において漁業とは食料を調達するために欠かせない主たる産業であり、クジラなど大型の海洋哺乳類から魚や貝、軟体動物に至るまで、ありとあらゆる海の恵みを食料としてきました。

 

しかし、同じ棘皮動物であるウニやナマコが珍味として広く知られているにも関わらず、ヒトデが人々の食卓に上ることはほとんどありません。

それは何故かといいますと、ヒトデは外敵から身を守るため体内に「サポニン」という有毒成分を蓄えているからです。

サポニンは鳥獣や害虫による食害や糞害を防ぐ忌避剤としても利用されています。

 

しかし、サポニンも少量であれば人体に悪影響はないようで、中国ではヒトデの串焼きが屋台で売られていたり、日本でも熊本県天草市では「ゴボンガゼ(キヒトデ)」と呼ばれるヒトデの卵巣を食す習慣がみられたりと、食材として全く認知されていないわけではありません。

 

但しイトマキヒトデとなると話は別で、中国ではイトマキヒトデを乾燥させたものを「海燕(かいえん)」と呼び、痴呆や冷え性などに効く漢方薬として重宝されているそうです。

ちなみに、キヒトデの卵巣は濃厚な風味がウニやカニ味噌を思わせ、非常に美味だそうです。

サポニンが含まれるヒトデの卵巣は生では食べられませんので、お気を付けください。

イトマキヒトデの飼育法

ヒトデって飼えるの? と驚かれた方も少なくないかもしれませんが、海水魚を取り扱っている熱帯魚ショップなどに赴くと、高い確率でヒトデの姿を見ることができます。

イトマキヒトデも例外ではなく、その可愛らしい外見からペットとしても高い人気を誇っています。

 

一般的な海水魚の飼育法に準じて飼育することが可能ですが、イトマキヒトデは比較的低い水温を好むため、夏場の高温には注意が必要です。

適温は20~25℃ほどですので、水槽用クーラーか空調管理を用意する必要があるでしょう。

水槽内に他の魚が数匹いれば食べ残しや糞などを食べるので、個別に餌を与える必要もありません。

ヒトデ専用の人工フードも販売されていますので、ヒトデだけを飼いたい! というマニアックな方も心配ご無用です。

 

前述したように、他の生き物の食べ残しや糞などを食べてくれるので、イトマキヒトデは鑑賞用だけでなく水槽内の掃除屋としての働きも期待できます。

水槽内の汚れに悩んでいるという方は、これを機にヒトデを導入してみては如何でしょうか。

 

意外と活発に動きまわるので、水槽内がより一層にぎやかになることでしょう。

但し、小さな貝類や珊瑚はヒトデに食べられてしまう恐れがありますので注意が必要です。

 

みなさんも海に行く機会があったら、イトマキヒトデを探してみては如何でしょうか。

色鮮やかで可愛らしい姿に感動すること間違いなしです。

(ライター:國谷正明)