樒という植物をご存知でしょうか。

余り馴染みのない植物かもしれませんが、今回は樒について詳しくお話します。

樒の特徴

樒はマツブサ科シキミ属に分類される常緑小木、高木の一種です。

中国、台湾、大韓民国と日本に分布し、日本では本州では宮城県と石川県以西、四国、九州、沖縄県に分布しています。

 

高さは10m程度になり、胸高直径は30㎝となり、樹皮は暗い灰褐色になり、老木になると縦の裂け目を生じ、若枝は緑色です。

葉は枝の先端に集まってつき、短い葉柄を持つ楕円形から倒卵形を帯で長さ5~10㎝、深緑色で艶があります。

 

葉の質はやや厚く、何となく波打ったようになることが多く、葉の先端は急に突き出して鈍端です。

花は葉の付け根から一つずつ出て3~5月に咲き、花弁は淡黄色で細長くややねじれたようになります。

花の径は3㎝くらい。

 

果実は天平で周囲に8本の突起が出ていて、上面が裂開し種子が出ています。

種子は褐色で艶がありどんぐりを押しつぶしたような形をしています。

樒の毒性と成分

樒の花や葉、実、更に根から茎に至るまで全てに毒の成分が含まれています。

特に種子にアニサチンなどの有毒物質を含み、それは果実に多く含まれます。食用すると死亡する可能性があり、その毒には用心しなければなりません

 

実際に植物としては唯一毒物及び劇物取締法によって劇物に指定されています。

樒の種子はややシイの実に似ていて誤って食べて死亡した例もあります。

また、スパイスの一種であるトウシキミの果実である発覚が指揮も果実に非常によく似ているので樒の果実をトウシキミの果実と誤認して料理に使用して食べることで中国を起こす事故が多いと言われています。

 

第二次世界大戦以前は樒の果実を実際に日本産スターアニスとして出荷して海外で死亡事故などが発生しています。

中毒症状は嘔吐、腹痛、下痢、痙攣、意識障害などで先述しましたが、最悪の場合は死亡します。

 

家畜は一般的に毒性のある草を食べないのですが、樒に関してだけは誤飲することも多く、問題になっています。

アニサチンの他にはシキミ酸なども有毒成分で、これは芳香族アミノ酸の前駆物質で、タンニンの主要成分である没食子酸の前駆体でもあります。

樒の呼び方や伝承

樒は地方によってはシキビ、ハナノキ、ハナシバなどとも呼ばれています。

語源は四季を通して美しいことが四季美=シキミ、シキビになったという説や実の形から敷き実となったという説、有毒なので悪しき実からついたなど色々あります。

 

空海は青蓮華の代用として密教の修法に使い、仏前の供養用に使われていたと言われています。

一年中継続して美しく、手に入れやすいので日本では俗古来よりこの枝葉を仏前墓前に備えています。

 

葬儀には枕花として一本だけ備え、末期の水を供ずる時は一葉だけ使い、脳幹に葉などを敷き臭気を消すために用います。

茎、葉、果実は共に一種の香気があり、日本特有の高木として自生する樒を用いて行います。

葉を乾燥させ粉末にして抹香、線香、丸香としても使用します。

 

樒には毒気がありますが、その香気で悪しきを沈める力があるともいわれ、インド、中国などには近縁種の唐樒があり、実は薬用として請来されていますが日本では自生していません。

古代においてはサカキと同様に神社でも用いられたと言われ、現在でも京都市の愛宕神社などの神事にはサカキではなく、樒が使われています。樒を刺した水は腐りにくいのが特徴です。

 

材は数珠などに利用されます。

花言葉は「猛毒」「甘い誘惑」「援助」

寺院や境内に植えられることの多い植物ですが、近年は樒の中まで赤系などの花を咲かせる種が導入されていて、庭木として人気を得てきています。

(ライター ナオ)