体が細長くて脚がわさわさと生えている虫、見ただけでぞっとしますよね。

私たちはそれらの虫をいっしょくたに「ゲジゲジ」と呼んでいますが、そのなかでも小さめのゲジゲジは「ヤスデ」のようです。

今回はゲジゲジの仲間、特にヤスデについて調べます。

ゲジゲジと呼ばれた武将

「ゲジゲジ野郎!」という悪口がありますが、ゲジゲジは人から憎まれ嫌われてきました。

歌舞伎や人形浄瑠璃などのお芝居によくでてくる鎌倉時代の武将梶原景時は、「ゲジゲジ」と呼ばれていたといいます。

 

源頼朝から信頼を得て鎌倉幕府の成立に貢献した人物ですが、その後活躍する義経と対立し、頼朝に諫言して死に追いやることになった張本人とみなされてしまいました。

「下知じゃ、下知じゃ~」(命令だ、命令だ~)と頼朝の威光を背にいばりちらしていたから、「げちげち」→「ゲジゲジ」と呼ばれ敵役として定着してしまったとのことです。

見た目がゲジゲジな虫

「ゲジゲジ眉」という言葉がありますが、野生的で手入れが行き届いていないギザギザ眉のことをいいます。

ゲジゲジは、節足動物で多足類の一つの種類です。似たような外見をもつ虫に、ヤスデ、ムカデがいますが、それに並んでゲジゲジという種類もいるのです。

ゲジゲジ、ムカデ、ヤスデの見分け方

ゲジゲジとムカデとヤスデは別々の種なのですが、いずれも夜行性で暗くじめじめした場所を好んで生息していますが、これらはどう見分けたらいいのでしょうか。

ゲジゲジ(蚰蜒)

正式には「ゲジ(蚰蜒)」で、日本にいるのは、体長が2~3センチでのものと4.5~6センチの2種類のみ。

細く長い15対の脚をもち、触覚が長いのが特徴です。

 

ゲジゲジは素早く動くことができ、肉食で昆虫類やシロアリ、クモなどを捕らえて食べます。

特にゴキブリにとっては天敵で、体格がほぼ同等なゴキブリを長い脚に絡ませて捕えるとむしゃむしゃ食べてしまいます。

ただ、人を襲うことはなく、咬まれても人体に影響はありません。

ムカデ(百足)

細長い体は節でつながっていますが、1つの節に左右1対の脚が生えていますが、脚は短いです。

ムカデは多くの節をもち、オオムカデは21対、多い種では173対というものもいます。

 

体長は6~20センチ、ヤスデやゲジゲジより大きめで、小さな昆虫やクモ、ミミズなどを食べる肉食性です。

攻撃性が強く、しかも毒をもっており、咬まれると強い痛みがあり大きく腫れるので、注意が必要です。

ヤスデ(馬陸)

1つの節に2本以上の脚が生えています。脚は短く色が薄いので存在感がなく動きも緩慢です。

体長は1~2.5センチほどで、ムカデに比べると小さいです。

落ち葉や枯れ草など植物を食べます。

毒はもっていないのですが、踏みつけると臭い体液がでるので気をつけましょう。

ヤスデの正体

多足類の虫、ゲジゲジ、ムカデ、ヤスデの違いがわかっていただけたでしょうか。

ゲジゲジのような虫のなかでも、小さいのはなにかというと、体長が1、2センチのヤスデだと思われます。

ヤスデの足は短いのですが、1節から2対以上の脚がでているので、ムカデなどより脚が多く見え、もぞもぞ動く感じです。

動きがのろく、棒などで突っつくとクルリと丸く渦巻き状なって身を守ります。

 

雑木林や畑などの土中に生息し、落ち葉・枯れ葉、菌類・きのこなどの植物性のものを食べ、植物の栄養源となる有機物が豊富なフンをします。

さらに自分のフンの中に未消化の落ち葉などが混ざっていると二度喰いし、植物を完全に分解して土中の微生物を育成するので、良質な土作りには欠かせない存在です。

人を咬んだり、毒をもっていたりということはなく、見た目に反して益虫といえるのです。

ヤスデの大発生と異臭

ヤスデは、毎年秋に産卵し、土中で孵化して幼虫になり、脱皮を繰り返して体節を増やします。

冬を越し6~7月ごろ成虫になり地面へ出てきます。ヤスデの一生はほとんどが一年サイクルですが、キシャヤスデという種は、土中で幼虫として7年間過ごします。

そして8年目になると一斉に成虫となって地表へ現れます。そのため、特定の地域では8年ごとにヤスデの大発生が起こるといわれています。

 

山間部を走る鉄道の線路付近に大発生し、線路上で轢きつぶされたヤスデの体液で汽車の車輪がスリップして立ち往生してしまったという事故も起きています。

「キシャヤスデ」という名前は汽車を止めたということからつけられたということです。

また、ヤスデは人を咬むことはなく、毒をもっていることはないのですが、踏み潰されると不快な臭いを発します。外敵からの攻撃を防御するためです。

まとめ

ヤスデはムカデなどと同様に夜行性で、梅雨時などの高温多湿が続くと大発生し、家の中にまで侵入してくることがあります。

床下や窓のレール、通気口や換気口など、1ミリの隙間があると侵入できるからです。

 

家の周囲に落ち葉などを溜め込まず、風通しをよくし、不快害虫忌避剤などを撒いておくとよいでしょう。

土壌を改良する益虫とはいっても、ビジュアル的に不快感を感じてしまいますよね。

家の中への侵入されるのだけは避けたいものです。

(ライター sensyu-k)