アシナガバチはスズメバチ科アシナガバチ属に分類されるハチの総称です。アシナガバチたちは何を餌としているのでしょうか?

アシナガバチの生態

アシナガバチの中で一番多く見かけるのは、市街地や民家にも巣をつくることがある、セグロアシナガバチかと思います。

セグロアシナガバチは、見た目がスズメバチに似ています。

体色は黄色で黒い縞模様が入り腹部にくびれがあります。

この腹部のくびれが、アシナガバチにとって大きな負担になっているともいえます。

 

アシナガバチは狩りを行います。ただ、このくびれすぎたスタイルによって自分では獲物を消化できません。

成虫の大きさは約25mm、茶色の翅が4枚あります。

顔も黄色っぽく複眼は茶系です。頭の方が下がった姿かたちは攻撃的な印象です。

 

アシナガバチは新しい巣を毎年作ります。

アシナガバチの巣はそこまで大きくはなく最大で直径15cm程のことが多いようです。

 

樹の繊維質と唾液でつくられ、形はいかにもハチの巣といった花托状です。

アシナガバチたちは、スズメバチよりも低い位置に巣を作る事もあります。

アシナガバチの一年

アシナガバチたちは、いつ頃どのハチが狩りを行うのでしょうか。

女王ハチ、働きバチは立場や時期により異なるものを餌としています。

春先

女王ハチは冬眠から覚めます。この時点ではまだ女王ハチ一匹です。

冬眠中にため込んだ卵を産まなければなりません。栄養不足なので花の蜜を摂取します。アシナガバチはヤブランの蜜を好むようです。

5月頃

女王バチは新しい巣を作り始めます。

このあたりで力尽きて死亡するアシナガバチの女王バチもいます。そうなるとその巣は捨て置かれます。

初夏から夏

巣が大きくなってくると、女王バチは産卵します。

幼虫たちが羽化し始め働きバチになりはじめるのはだいたい6、7月頃です。

 

働きバチの数が増えてくると、女王バチは漸く産卵に専念できます。

そのかわり、働きバチは新しく生まれた卵から孵化した幼虫に餌を与えねばなりません。

 

この時期狩りに出るのは働きバチです。この間はアシナガバチたちにとって過酷です。

酷暑で蛹からうまく羽化できなかったり、天敵のスズメバチがやってきたりします。

スズメバチたちの攻撃で巣が壊滅的な被害にあう事もあるようです。

晩夏から秋

そろそろ今年のアシナガバチの巣は終わりです。

女王バチが産んだ生殖能力をもつオスのハチとメスのハチが交尾を行います。

オスは死亡し、女王バチは翌年の為に冬眠します。

アシナガバチの狩り

狩りを行うのはアシナガバチの働きバチたちです。

卵から孵化し幼虫となった自らの姉妹(アシナガバチの場合、兄弟が混じる場合もあります)ともいえる子供たちに栄養補給をせねばなりません。

 

また、まだ女王バチ一匹で子がまだ幼虫の場合は、女王バチも狩りを行います。

芋虫に喰らいついて少しづつ肉を柔らかくし、巣へ持ち帰り与えます。

 

アシナガバチはスズメバチほど高速で飛ばないので、動きが遅い芋虫状の幼虫をよく狙います。

働きバチは顎で芋虫に食らいつき、前脚も使い芋虫の動きを止めます。

 

顎で皮を噛みちぎり、体液や内臓を絞り出します。芋虫は中身だけを取り出された肉塊になります。

それを顎や脚を使いまとめた状態にして、巣へ持ち帰ります。

 

アシナガバチの幼虫に与える際には、他の働きバチがいればその肉団子をより細かくして与えます。

また肉団子から滴った汁のようなものを飲み込んで巣に持ち帰り、それも口移しで幼虫に与えることもあるようです。

 

アシナガバチの働きバチたちは、バッタなどの昆虫も時には狙います。

一度に持ち帰ることが出来ない場合、分割して巣へ運びます。効率の良い狩りを行う必要があるので、一度獲物を見つけた場所にまたやってきます。

 

アシナガバチの働きバチの一生は狩りと餌やりに費やされます。

アシナガバチの幼虫が羽化し成虫になるまで、おおよそ20日だそうです。

 

子育てが落ち着くのは9月頃です。アシナガバチの天敵はスズメバチです。

スズメバチたちはアシナガバチの成虫も幼虫も捕食対象にしています。

 

狩りも育児も文字通り命がけです。

その重要な働きバチの餌は何かというと、幼虫から与えられる栄養です。

アシナガバチの働きバチと幼虫

巣の中で餌を与えられたアシナガバチの幼虫は、働きバチに糖分の多い栄養の入った液体を口移しで与えます。

アシナガバチは成虫になると、体型的な問題で固形物を消化できなくなります。

 

その為、栄養補給に適した糖度の高い液状のものを摂取するのです。

働きバチたちは妹たちがいないと生きていけませんし、幼虫も餌がなければ死亡します。

働きバチの日々もハードです。この間、命を落とす個体も少なくないのです。

 

このように育てられたアシナガバチの幼虫は時がくると、アシナガバチの幼虫は育室に蓋のようなものをして蛹になり羽化に成功すると、めでたく働きバチになります。

そしてまたほぼ同じ行動を繰り返していく事になります。

アシナガバチの狩り

アシナガバチの女王バチは花の蜜を食べ、幼虫たちは肉団子を食べ、働きバチは幼虫が分泌する栄養素を摂取しています。

子供の頃は肉食で大人になると流動食のようです。

 

昆虫の中には、幼虫時代に肉食でもりもり食べるのに、成虫になると諸般の事情でそうもいかないこともままあるみたいです。

アシナガバチの狩りの様子も見事なものですが、非常に過酷ですね。

(ライター:おもち)