ペットのエサとして利用されるミルワーム。
名前を聞いたことのある人も多いのではないでしょうか。
でも、このミルワームって一体何?
ミルワームの利用
ミルワームは小動物の資料として飼育されるようになった昆虫です。
一部がモデル生物として生物学研究の場で用いられる他、主として動物園やペット飼育の現場で生餌として利用されています。
資料としての利用には、強靭な外皮に覆われているので脱皮直後の外皮が白く柔らかい個体を与えるのが良いとされています。
カロリーは高いのですが、ミネラルなどの栄養バランスはそれほどでもなく、爬虫類や両生類のエサとして利用される割には、それだけでは十分ではなく、カルシウムを補う必要があります。
市販の炭酸カルシウムの粉末をミルワームにまぶして与えたり、野菜くずやドックフードなどを一緒に与えると良いとされています。
カロリーだけは高いので、させた個体を復活させるのにも良好です。
ミルワームを与える時、丸呑みする両生類には頭を潰してから与えなければ、体内に入ってから内臓を食い破る可能性があるので注意したい。
サシガメや肉食性のアリ、ジグモやサソリモドキなどの一部の肉食性昆虫の飼育ではほとんどミルワームを主食にして飼育繁殖が成り立っています。
2015年、ミルワームは発泡スチロールを食べて分解する能力があることがわかり、話題を呼びました。
発泡スチロールはミルワームの腸内微生物によって堆肥と二酸化炭素に分解され、排出されているということが明らかになったのです。
ミルワームの正体
ミルワームとして古くから飼育されているのは、コメノゴミムシダマシとチャイロコメノゴミムシダマシという甲虫です。
日本国外でミルワームといった場合は一般的に後者をさし、分子生物学や分子遺伝子額の研究にも使われています。
コメノゴミムシダマシは高温に強く、熱帯から温帯に広く分布しますが、本来はインド原産と考えられています。
日本でも貯穀害虫として野生化しており、特に商業的な増殖は行われていません。
幼虫の多色が暗いのでダークミルワームと呼ばれています。
チャイロコメノゴミムシダマシは低温に強く、温帯の冷涼な地域に広く分布しますが、もともとはヨーロッパ原産と考えられています。
日本で野生化しているという報告はなく、商業的に増殖され、ミルワームとして流通しています。
つまり、ミルワームの正体はチャイロコメノゴミムシダマシの幼虫なのです。
幼虫の体色が黄褐色なので、イエローミルワームと呼ばれています。
これら2種類が小動物のエサとして飼育増殖されるようになったのは20世紀に入ってからと考えられており、商品化されるようになったのは第二次世界大戦以降のことなのだそう。
1990年代になってからは以前からアメリカで増殖業者が多かったツヤケシオオゴミムシの幼虫が流通するようになり、このミルワームは今までのものよりはるかに大型で、成長したときの体長は140㎜にも達するのだそう。
大きいという特徴から、ジャンボミルワームやジャイアントミルワームと呼ばれ、流通しています。
また、このほかにも類似した生態のコクヌストモドキやガイマイゴミムシダマシのような何種かのゴミムシダマシ科の甲虫が飼育動物の飼料やモデル生物として研究所や動物園と言った専門的機関において飼育、繁殖されていますが、ペット産業や趣味的動物飼育の世界では一般的ではありません。
ペットショップやホームセンターではジャイアントミルワームが1匹10~30円ほどで販売されています。
飼育しやすいゴミムシダマシ科の生き物
ゴミムシダマシ科の生物はもともとは乾燥した土地で地表に落ちたイネ科の植物の種子や腐植質、動物の死体などを食べて生活していて、人間が食物を貯蔵するようになると屋内に生活圏を広げてきました。
このような生物は飼育もしやすく、ふすまやパン粉などを飼料として簡単に増やすことが出来るという訳なのです。
(ライター ナオ)