人間の脳には「海馬」といわれる器官があります。海の馬という名前のもととなったとされる生物がタツノオトシゴです。

タツノオトシゴは魚類であり、トゲウオ目ヨウジウオ科のタツノオトシゴ属という魚の総称です。

タツノオトシゴが何かを食べているところを見た事があるでしょうか?というより、彼らが動いているところをよく見た事があるでしょうか?

タツノオトシゴの生息地や種類

タツノオトシゴは日本近海にも生息し、温帯から熱帯の海の浅瀬などに分布しています。

日本近海にいる一般的なタツノオトシゴの成体の大きさは5cm~14cmほどです。

日本近海付近に生息しているタツノオトシゴの中で一番体が大きいのはイバラタツ(hipocampus histrix)です。

全長15cmほどで、体表のトゲが多いようです。日本近海に生息するとされるタツノオトシゴは、オオウミウマ、イバラタツ、サンゴタツ、クロウミウマ、ハナタツ、タカクラタツ、タツノオトシゴなど8種ほどだそうです。

外見はよく似ていて茶系の事も多く、海の中でとっさに種類を見分けるのは難しいようです。

タツノオトシゴの近縁種について

より温暖な海域ではもっと大きいタツノオトシゴの仲間もいるようです。

オーストラリア付近に生息している、ウィーディーシードラゴンは同じヨウジウオ科でタツノオトシゴと近縁です。

 

大きさは最大で40cm以上にもなるそうですが、外見の特徴である口にあたる部位が長く、ストローのように獲物を捕食するそうです。

タツノオトシゴとの違いは、尾をどこにも巻きつけない事です。

 

ウィーディーシードラゴンたちは、オーストラリア近海でただ漂っています。

池袋のサンシャイン水族館でその姿を見る事ができます。

タツノオトシゴの体の仕組み

タツノオトシゴの体の仕組みは誰もが一度は気になった事があるのではないでしょうか。

特になかったとしても、ふと、そういえばあれはなんなのかな、海にいるから魚?くらいは思った事があると推測されます。

 

タツノオトシゴの体表には硬い甲板があります。硬い体表は、タツノオトシゴが事情により干からびてしまっても形はそのままです。

また、タツノオトシゴの骨格標本を見ると規則的に並ぶ脊椎も見えます。

 

以上の事などから、タツノオトシゴの生態には色々奇妙な点があるにしろ、れっきとした脊椎動物であり魚類の一種である事が分かります。

首のようなくびれた部位にエラがあり、エラ呼吸をしているようです。

タツノオトシゴの特徴

タツノオトシゴは魚類でありながら泳ぎが不得意です。背ヒレ、胸ヒレ、尾ヒレなどはありますが泳ぎ回る魚類の中では決して活発とは言えず、タツノオトシゴは少し不憫です。

いっそ、海にうまれなければよかったのかも知れません。そのためなのか、タツノオトシゴは丸まった尾で海藻や珊瑚につかまっています。

タツノオトシゴによく似た生物として「タツノイトコ」「タツノハトコ」といった、より混同しやすくなりそうな名前をもつ生物もいます。

タツノオトシゴの餌と捕食について

タツノオトシゴは餌を求めてどこかへ行く術を持たず、飛び出た口から超小型の甲殻類のアミやプランクトン、小魚などを吸い込むように捕食します。

タツノオトシゴ自体が小型なのであまり大きいものは食べなさそうですが、体より大きな甲殻類を吸引する事もあるといわれます。

タツノオトシゴが餌を吸い込む際には奇妙な音がします。強く吸引しているのです。

タツノオトシゴは肉食です。魚類は一般に動体視力に優れるといわれます。タツノオトシゴの視力は0.1程度だとされている事が多いようです。

 

割と近視です。餌を得るために必要ではないかと思われるような感覚器は他にないようなので、動くものがやってくれば吸引するという事なのでしょうか。

じっとしているタツノオトシゴには武器もないので、さぞ天敵が多かろうと思いきや、タツノオトシゴを好んで捕食する種は多くはありません。

むしろ少ないと言えるほどです。あまりにもじっとしているので、他の海の生物たちからは生物と認識されていないのかも知れません。

タツノオトシゴの卵胎生

タツノオトシゴの生殖方法はよく知られています。タツノオトシゴは雌雄異体の海魚です。

春から秋にかけて交尾時期になるとタツノオトシゴのメスはオスの腹部にある育児嚢に産卵管を挿入し、卵を産み付けます。

 

タツノオトシゴのオスは腹部の育児嚢の中で卵を育てます。

育児嚢の中で孵化した稚魚を育て、海に出ていけるようになる頃にタツノオトシゴのオスはお腹から稚魚たちを出産します。

 

育児嚢には開口部分があり、そこからミニチュアのようなタツノオトシゴたちがふわふわと出てきます。

タツノオトシゴの稚魚は暫くの間、浮遊しているようですが、エサは食べます。

 

タツノオトシゴの寿命は1年~5年ほどとされますが、生息海域によって結構違うようでもあります。

お腹が膨れているタツノオトシゴがいたらそれはオスという事になります。

タツノオトシゴと人間の関係

タツノオトシゴは小さな甲殻類を捕食する肉食性の魚類であり、生きたものしか餌としません。

動かないわりによく食べるといってもいいほどです。タツノオトシゴ自体にも珍しい点が多くあります。

 

昔の人たちもそう考えたようで、安産のお守りとされている事もあります。

ペアを作ると長く続き、タツノオトシゴの2匹の空間がハート形に見え、交尾の際に求愛ダンスのような行動を見せる事からも縁起が良いとされています。

 

タツノオトシゴは視力が良くないようですので、このくらいの距離でないと他の何かと間違えてしまう、などという事を防ぐ為の知恵なのかも知れません。

あるいは「la solitude dex personnes」のように2人だけの孤独、というような状況なのかも知れません。

 

タツノオトシゴの姿形は、編み物が好きな人の中にはつい編んでみたくなる形をしているとも言えるでしょう。

規則的な形を編むのに適したカギ針編みは、タツノオトシゴの脊椎の連なりを表現するのに向いています。

 

目のあたりからぐるぐると編んでいくと楽しそうです。十二支の中で辰のみが架空の動物であり、年賀状などには想像上の「竜」ではなく「辰」が使われる事が多いです。

また、日本の十二支には猫が入っていませんが、ベトナムの十二支には猫もいます。

 

実際にベトナムの猫年には猫の記念切手が発売される事があります。

そしてベトナムの干支では「辰」と「竜」は別の生物とされているようです。

タツノオトシゴの造形美

そのシンボリックな姿形は建築物にも見られ、バハナの某ホテルの外壁にはタツノオトシゴの顔の文様があり、インドではよりスタイリッシュになったタツノオトシゴを模した立体塑像まで存在するようです。

 

日本でも建築物に利用される事はあるようですが、埼玉県の浦和市にあるとあるホテルのロビーの天井にはヒレが大きくなったタツノオトシゴが飾られているようです。

なぜ人間はこんなにタツノオトシゴに興味津々なのでしょうか。

 

脳を発達させた人間にとってタツノオトシゴという生物は、多くの分野で想像力の対象になってきたようです。

タツノオトシゴに関するひとつの疑問として「いつも横向き」というものもあります。

 

画像を見ても、本物を見ても、動画を見てもタツノオトシゴは横を向き、縦泳ぎのような事をしています。

タツノオトシゴの正面の顔は細く、目が出っ張っています。

 

どう見ても魚の顔であり口が長い事もあり、ひょっとこの様に見えなくもありません。

やはり横向きの方がsea horseという名前が似合うように見えます。

(ライター:おもち)