タコといえば、日本では馴染みのある食材です。

しかし、欧米では悪魔と言われ忌み嫌われています。

当記事では、なぜタコが悪魔と言われるようになったのか、その謎に迫ります。

タコの生態

タコは、頭足綱・鞘形亜綱・八腕形上目・タコ目に分類される動物の総称です。

海洋棲の軟体動物で、おもに岩礁や砂地で活動しています。淡水に棲息するタコは現在知られていません。

そしてタコは、複数の吸盤がついた8本の触腕を特徴とします。

タコが悪魔とされる理由

タコは欧米では、昔から「悪魔の魚(devilfish)」などと呼ばれて忌み嫌われていました。

 

その大きな理由として、キリスト教の原点でもあるユダヤ教の戒律(旧約聖書の記述)があげられます。旧約聖書では、魚類はヒレとウロコを持つものだけしか食べてはならないとされており、タコ、イカ、カニ、エビ、ウナギ、エイ、貝類、(昔は魚に分類されていた)イルカや鯨などは食べません。

 

具体的には、旧約聖書(『レビ記』第11章)のこの記述です。

119

水の中にいるすべてのもののうちで、次のものをあなたがたは食べてもよい。すなわち、海でも川でも、水の中にいるもので、ヒレとウロコを持つものはすべて、食べてもよい。

1110

しかし、海でも川でも、すべて水に群生するもの、またすべて水の中にいる生き物のうち、ヒレやウロコのないものはすべて、あなたがたには忌むべきものである。

1111

これらは、さらにあなたがたには忌むべきものとなるから、それらの肉を少しでも食べてはならない。またそれらの死体を忌むべきものとしなければならない。

1112

水の中にいるもので、ヒレやウロコのないものはすべて、あなたがたには忌むべきものである。

ユダヤ教・キリスト教・イスラム教は、姉妹宗教と呼ばれていて、いずれも聖書を正典としています。

ユダヤ教:紀元前2000年  旧約聖書

キリスト教:西暦1年    旧約聖書・新約聖書

イスラム教:西暦700年   旧約聖書と新約聖書の4福音書・コーラン

 

キリスト教徒は約21億人、イスラム教徒は約13億人、ユダヤ教徒は約1500万人です。

というわけで、姉妹宗教を信仰する人の多い欧米では「タコが悪魔と言われている」という状況となりました。

 

ちなみにキリスト教は、ガイアの辺境(イギリスやドイツ)など貧しい土地で布教する際に、食に関して寛大になったという歴史をもちます。

だからなのか、姉妹宗教のうちキリスト教徒だけは、タコやイカなどを食べることに宗教的な禁忌をそれほど感じていないようです(宗派によって異なります)。

タコのその他雑学 その1

上述のように、タコといえばデビルフィッシュ、すなわち悪魔の魚だったのですが、現在の欧米では、そのイメージは次第に薄れてきているようです。

 

たとえば「devil fish」でgoogleの画像検索をすると、タコはあまり出てきません。

見た目が恐ろしい魚(デビルフィッシュの字義のまんま)の画像がほとんどで、それ以外ではエイの画像が比較的多いです。たしかにエイの顔は恐ろしいですし、タコよりも悪魔って感じがしますよね。

タコのその他雑学 その2

北欧伝承には「クラーケン」という海の怪物がいます。

これは巨大なタコやイカのような姿で描かれることが多く、中世から近世にかけて、ノルウェー近海やアイスランド沖に出現したとされています。

 

19世紀に描かれたイラストは、どうみてもタコの姿なのですが、しかし現在では「ダイオウイカ属」がクラーケンのモデルではないかという意見が主流のようです。

タコのまとめ

以上、タコが悪魔と言われる理由についていかがでしたか?

筆者はタコに対して特に忌避感をもっていないので、いつも美味しく食べさせていただいています。

ただ、ユダヤ教やキリスト教、イスラム教の方と食事をする機会があれば、そのときはメニューに気を配りたいなと思いました。

(ライター ジュン)