皆さんはキノコの中に、アリから生えているキノコがあることをご存じだろうか?

今回はそんなアリから生えるキノコについてのお話。

アリタケの生態とキノコの種類

アリタケはアリに寄生し、アリの中で菌糸を伸ばして成長するキノコのこと。

ニホンにはタイワンアリタケやマルミアリタケという種類のキノコが分布しています。

 

そもそもキノコ類というのは、腐生菌、菌根菌、寄生菌の3種類に分けられます。

腐生菌は倒木や枯れ葉、植物の死骸などに寄生するしいたけやマイタケなどのキノコ。

菌根菌は植物の根を通して栄養を補い、無機物を与えて植物と共生する松茸やポルチーニなどのキノコ。

そして、寄生菌は昆虫やクモ、一部の菌類や植物の種子などに寄生して養分を得るキノコのこと。

 

寄生菌の中でも、特に昆虫やクモに寄生して欧文を得るキノコの総称を冬虫夏草と言います。

アリタケは、この冬虫夏草の一種ということになるわけです。

 

冬虫夏草の名前の由来は冬は虫で夏になるとキノコになるという意味。

菌の種類や寄生するアリの種類によって寄生からキノコの発生までは様々で、必ずしも冬に寄生して夏にキノコが発生するという訳ではありませんが、ニュアンス的にはそういうこと。

アリタケ発生のプロセス

アリタケの種類はアリの体に胞子を付着させ、外骨格を破って脳内に寄生します。

脳を支配した菌はアリの本来の生息場所である土の上を放棄させ、自分自身が繁殖しやすい場所にアリを誘導します。

それは一般的には木の上だったり、葉っぱの陰だったりするようです。

 

体内で菌糸を伸ばした菌はアリの体がパンパンになるまで増殖、のちに再び外骨格を破って子実体を外に出します。

この時はすでにアリは死んでいて、アリタケの中にはアリの死ぬ時間帯さえも自分が最も繁殖しやすい時間帯になるように操作しているものもいるのだとか。

外に出た子実体は胞子を降らせ、再び死んだアリの体を床にして新しい寄生をはじめるという・・・・・

 

更にアリの誘導に関して細かくみていくと、アリが脳を支配されて菌が繁殖しやすい場所に誘導され、最後の場所を決める(完全に決めさせられているのですが)のは、その場所から落ちないように顎で葉や枝などに噛みつくことで完結するのですが、この噛みつくという行為さえも、既にアリ本来の能力ではないようなのです。

 

本当なら、噛みつくという行為は口を開けて閉じるという2つの動作が含まれます。

しかし、最後の場所として葉などに噛みつく場合、閉じるという一つの動作しかしていないのだそう。

 

これは、すでに口を開けっぱなしにしている状態のアリを誘導し、筋肉の中のカルシウムを吸い上げることで、筋肉のゆるみを防ぐ死後硬直のような状態を作り出すことによって、好みの場所に噛みつかせ、固定していると考えられているのだそう・・・・・

 

ここまでくると、何だか菌に対して憎しみが湧いてくるような気にさえなるわけで・・・・。

人間の視点で見ると、何とも表現しようのない、エグイというか、グロイというか・・・生きる事への執念のようなものを感じてしまうのが、この冬虫夏草であり、アリタケなのです。

アリタケのまとめ

アリタケはアリに寄生する冬虫夏草の一種。

ニホンにもアリタケやタイワンアリタケなどのキノコが自生する。

 

アリタケの胞子はアリの脳内に菌糸を伸ばすことで、アリの脳を支配してコントロールする。

アリタケの繁殖しやすい場所や時期、時間帯をコントロールしてアリをその場に連れていく。

 

アリタケはアリの外骨格を突き破って、アリの体外に子実体を伸ばす。

冬虫夏草にはアリだけでなく、ハチやセミなどに寄生するものもいる。

(ライター ナオ)