マッコウクジラは、偶蹄目・マッコウクジラ科・マッコウクジラ属に分類されるクジラ類です。

ここでは「人食いマッコウ クジラは実在するのか?」その謎に迫ります。

マッコウクジラの生態

マッコウクジラは、ハクジラ類のなかでもっとも大きく、歯のある動物では世界最大です。

北極から南極まで世界規模で分布しています。日本では小笠原諸島近海にメスと子供の群れが定住しており、知床半島近海ではオスが見られます。


マッコウクジラは、クジラ類のなかでもっとも大きな性差があります。

オスの体長はおよそ16メートルから18メートルで、メスの12メートルから14メートルと比べて30%から50%も大きくなっています。

成長したオスには体長が20メートルを超えるものもいます。

マッコウクジラの人食いの事例はあるのか?

マッコウクジラは、ヤリイカやダイオウイカなどのイカ類を主食としています。

そしてその食事量は、年間で9000万トンから2億2800万トンと推計されています。

 

そんな大食漢のマッコウクジラですが、人間を食べたことはあるのでしょうか?

と、その前に。
おそらくもっとも有名なマッコウクジラは、小説「白鯨」に登場するモービー・ディックです。

 

白鯨(はくげい)とは……メルビルの長編小説。1851年刊。

白い大鯨に片脚を食い切られた捕鯨船の船長エイハブは、復讐のために白鯨を追い求め、ついには一人の水夫(この物語の語り手)を残し、乗組員全員を滅亡に追いやる。

「白鯨」は神・悪・自然などを象徴する多義的存在として描かれる。《出典:大辞林 第三版 三省堂》

 

エイハブ船長は、期せずしてモービー・ディックとの再会をはたします。

もちろん彼の瞳には、激しい復讐の炎が宿っています――というお話なのです。

 

が。

しかしマッコウクジラの歯は、とても小さく、下あごにしか生えていません。

エサは吸いこんで捕食します。

 

人食いの事例も確かなソースは見つかりませんでした。

マッコウクジラは、人間の足を食いちぎるような動物ではないのです。

 

では、白鯨に描かれたマッコウクジラの人食いは、創作だったのでしょうか?

実はそうとも言えないのです。

古代マッコウクジラの化石を発見

ベルギー王立自然科学博物館のオリビエ・ランベールらは、ペルーのピスコでマッコウクジラ類の頭とあごの骨を発掘しました。

あごの上下には、人間の前腕ほどの長さの太い歯がびっしりと生えていました。

 

この古代マッコウクジラは、小説「白鯨」の作者名にちなんで「レビアタン・メルビレイ」と名づけられました。

全長14メートルのこの巨大クジラは、1200~1300万年前に生息していました。その頑丈な歯で大きな獲物をしっかりととらえ、鋭い歯先で体を引き裂いて捕食していたとみられています。

 

この古代マッコウクジラは、海における食物連鎖の頂点の座を巨大サメと分け合っていたと推測されています。

もしかしたらエイハブ船長たちは、この古代マッコウクジラの生き残りと戦ったのかもしれません。

マッコウクジラのその他雑学など

マッコウクジラの漢字表記は「抹香鯨」です。

その昔、龍涎香という、アラビア商人が取り扱い、洋の東西を問わず珍重されてきた香料がありました。

 

龍涎香の正体は、マッコウクジラの結石です。

このマッコウクジラの「龍涎香」が、抹香(まっこう)に似た香りなので、近代日本の博物学では中国語名「抹香鯨」にならって「抹香(のような龍涎香を体内に持つ)鯨」という意味合いで呼ばれ、そのまま生物学名として定着しました。

 

ちなみに英語名のsperm whaleを直訳すると「精液くじら」です。

「精液(のような液体である鯨蝋が採れる)鯨」という意味です。

マッコウクジラのまとめ

以上、人食いマッコウクジラについていかがでしたか?

現在のマッコウクジラは、人や船に体当たりすることはあっても、人を食べるようなことはまずありません。

 

しかし古代マッコウクジラなら人間を食べることもあるでしょう。

海は人類にとってまだまだ未知の世界です。

古代マッコウクジラは、もしかしたら絶滅していないかもしれません。

(ライター ジュン)