アコヤ貝は体内で宝石の一種である真珠を作り出しますが、世の中には宝石のように美しい貝殻をもつ貝が存在しています。

それが、ミドリイガイです。

今回は、そんなミドリイガイの知られざる生態とわたしたち人間との関わりをご紹介していきます。

ミドリイガイってどんな生き物?

ミドリイガイは、イガイ目イガイ科に属する二枚貝の仲間です。

まるでエメラルドのような色鮮やかな貝殻が目を惹きます。

 

「イガイ」という言葉に馴染みのない方も多いかもしれませんが、フランス料理の食材として有名なムール貝も実はイガイの仲間です。

ムール貝の和名を「ムラサキイガイ」といいます。「カラス貝」という別名があることは広く知られていますが、和名を初めて聞いたという方も多いのではないでしょうか。

ちなみに、イガイは漢字で「貽貝」と表します。

 

「異貝」「否貝」という意味を持つ音であり、シジミやアサリなど一般的に知られる二枚貝の仲間とは異なる模様や形であることを表しており、日本ではそれほど一般的な食材でなかったということが窺い知れます。

ミドリイガイの生態

ミドリイガイは、インド洋から西太平洋の熱帯域に分布しています。

大きさは最大10cm前後で、ムール貝とほとんど変わりません。

 

貝殻の隙間から足糸と呼ばれる細長い繊維のようなものをだして、岩礁などに活着しますが、足糸を切り離しては付け直すという作業を繰り返すことによって、少しずつ移動することができます。

ミドリイガイの近縁種

イガイ科ミドリイガイ属には、ミドリイガイの他に「モエギイガイ」と「ペルナイガイ」が属しています。

モエギイガイは、最大25cmにも達する大型のイガイで、ニュージーランドでは大規模で養殖されています。

 

国内では「パーナガイ」ととして流通していますが、目にする機会は決して多くありません。

ミドリイガイと同様に、色鮮やかな緑色の貝殻が特徴的です。

 

ペルナイガイも、ミドリイガイやモエギイガイと同じように、貝殻の縁が鮮やかな緑色を呈します。

国内では流通しておらず、他の二種と比べると知名度も著しく低いといえます。

ミドリイガイと人間との関わり

ミドリイガイは非常に強い生命力の持ち主であり、環境への順応性も高いことから、外来種として様々な海域に定着しています。

外国ではカリブ海及びオーストラリア沿岸、国内でも北海道を除いた全国各地の沿岸で生息が確認されています。

 

養殖されている牡蠣に付着している例が各地で報告されており、在来の生態系を脅かす恐れのある要注意外来生物として指定されています。

食材としてのミドリイガイ

原産地である東南アジア諸国では食用貝として広く知られていますが、日本において食用として流通することは非常に希です。

近縁種であるムール貝(ムラサキイガイ)と比べて味に大きな違いはなく、国内でも食用として流通する日が来るのもそう遠くないかもしれません。

 

ムール貝と同じように、酒蒸しやバター焼き、塩茹でやスープとして調理すると非常に美味だそうです。

また、ミドリイガイは近年、その健康効果に大きな注目を浴びており、ミドリイガイを主原料としたサプリメントが製品化されているほどです。

 

ムール貝の仲間であり食材として非常に美味、そして日本沿岸にも生息しているということで、見かけたら採取して食べてみよう!

とお考えになった方もいらっしゃるかもしれませんが、ミドリイガイは「サキシトシン」という有毒物質を蓄積していることがあり、食すと食中毒を引き起こす恐れがあります。

ムール貝や牡蠣、ホタテなども同様ですので、天然の二枚貝を食される際には十分お気をつけください。

(ライター:國谷正明)

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