某グルメリポーターが海鮮丼を見て「宝石箱」と例えたことは有名な話です。

宝石のように美しい外見で、食材としても非常に美味であるタイワンガザミは、彼のコメントを裏付けるような存在です。

今回は、そんなタイワンガザミの生態、そして食材としての魅力をみなさんにご紹介していきます。

タイワンガザミってどんな生き物?

タイワンガザミは、エビ目ワタリガニ科に属するカニの一種です。

ハサミや脚に鮮やかな青色を呈することから、「青手蟹」または「青蟹」と呼ばれていますが、単に「ワタリガニ」と言うこともあります。

 

また一部地域では、その派手な外見から「花魁」と呼ばれているそうです。

その名に「台湾」という地名が入っていることから外来種であると思われがちですが、れっきとした在来種であり、日本でも古くから親しまれてきました。

タイワンガザミの生態

その名のとおり、タイワンガザミは台湾に生息していますが、それ以外にも中国や韓国、日本といった東アジアをはじめ、南アフリカやインド、スリランカやオーストラリアなど世界中の海域に広く分布しています。

 

甲幅は最大15cmにも達し、大きなハサミとヒレ状の脚を持ちます。

台湾ガザミは肉食性で、甲殻類や貝類を好んで捕食します。食欲は旺盛で、共食いをすることも少なくありません。

タイワンガザミの近縁種

「ガザミ」はタイワンガザミと同じように、エビ目ワタリガニ科ガザミ属に属します。

外見や生体が非常に似ているため、しばしば混同されることもありますが、ハサミと関節の間にあるトゲの本数が異なるので確実に見分けることができます。

 

タイワンガザミのトゲが3本であるのに対して、ガザミは4本のトゲを持っています。

ガザミは全国的に食用として非常にポピュラーな種で、「ワタリガニ」という名で広く流通しています。

別名まで一緒だなんて、紛らわしい限りですね。

タイワンガザミと人間との関わり

広い水域に分布するタイワンガザミは、重要な水産資源として各地で古くから親しまれてきました。

日本でも年間を通して食用されていますが、冬季は卵巣の詰まった雌の個体が、夏季は身の詰まった雄の個体がそれぞれ重宝されています。

食材としてのタイワンガザミ

タイワンガザミは国内では房総半島以南に生息しており、特に島根県や鳥取県などで好んで属されています。

身に甘味があり、味噌や卵巣も濃厚な味わいを持つタイワンガザミは、茹でガニや焼きガニ、蒸しガニや味噌汁、炊き込みご飯など、どのように調理しても非常に美味です。

地元漁師の方が特におすすめする食べ方が、茹でガニです。

 

熱湯にそのまま投入すると脚が落ちてしまうため、塩水で茹でる前に生きたまま氷水に浸しておくのがコツだそうです。

はじめに氷水でしめるという工程は、焼きガニや蒸しガニなど他の調理法を行う上でも有効とのことですので、覚えておくと良いでしょう。

 

また、同じくタイワンガザミの水揚げ地であるシンガポールでは「チリクラブ」にして食されることが多いそうです。

油でからりと揚げたタイワンガザミに甘辛いチリソースを絡めたチリクラブは、まさに絶品。

 

「マントウ(饅頭)」と呼ばれるパンの一種をソースに浸して食べるのがシンガポール流です。

タイワンガザミは、その他にもソテーしたタイワンガザミにオイスターソースと塩コショウを絡める「ペッパークラブ」や、唐辛子のたっぷり入ったタレに漬け込んで作る韓国のソウルフード「ケジャン」など、その地域によって多種多様な調理法で食されています。

 

綺麗な外見と美味しい身を持つタイワンガザミは、まさに“食べる宝石”です。

食べたことがないという方は、ぜひ味わってみては如何でしょうか。

(ライター:國谷正明)

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