この記事を見てキノコムシの存在を初めて知った、という方も多いのではないでしょうか。

まるでファンタジー作品にでも登場しそうな可愛らしい名前ですが、実はキノコムシはわたしたちの身近に生息しています。

キノコムシってなに?

キノコムシとはその名のとおり、キノコに集まる習性があります。

カブトムシやカナブンと同じ甲虫目に属していますが、実はその種類はバラバラで、広義にはキノコの周辺で活動する甲虫類を総称してキノコムシと呼ばれます。

そう言われると少しややこしく感じるかもしれませんが、キノコに付いている小さな甲虫がいたら、それはキノコムシだと思って問題ないでしょう。

キノコムシの代表的な種類

オオキノコムシは、オオキノコムシ科に属し、北海道から九州にかけて分布しています。

全長3.5cmほどに成長する本種は、小ぶりな種が多いキノコムシの中では最大種にあたります。

オレンジ色の斑紋が特徴的で、6月から8月にかけて、サルノコシカケやツリガネタケなどでよく見られます。

キノコゴミムシは、オサムシ科に属し、北海道から九州にかけて分布しています。

全長1.5cmほどの小ぶりな種で、黄色の斑紋が特徴的です。

春から秋にかけて、カワラタケや樹木の表皮などでよく見られます。

モンキゴミムシダマシは、ゴミムシダマシ科に属し、日本全国に分布しています。

全長5.0mm前後とかなり小ぶりで、テントウ虫のような赤い斑紋が特徴的です。

春から秋にかけて、マスタケやサルノコシカケなどでよく見られます。

ハラグロキノコハネカクシは、ハネカクシ科に属し、本州から九州にかけて分布しています。

ハネカクシという名のとおり、羽が非常に小さく、一見するとシロアリのようなフォルムをしていますが、これでもれっきとした甲虫です。

全長は1.0cmほどの小ぶりな種で、一年を通してヒラタケやベニタケなどでよく見られます。

ケシツブムクゲキノコムシは、ムクゲキノコムシ科に属し、本州での生息が確認されています。

世界最小の甲虫として知られ、その全長は0.5mm程度しかありません。

キノコだけでなく朽木や腐葉土にも生息していますが、あまりに小さいので見つけることは難しいでしょう。

キノコムシの幼虫はどんな姿?

幼虫時代のキノコムシは、他の甲虫の幼虫と同じくイモムシのような見た目をしています。

野生のキノコを採集すると、中からイモムシが出てくることも珍しくありませんが、それはキノコムシの幼虫である可能性が高いです。

キノコムシの幼虫はやがてサナギになり、その後立派な甲虫の姿へと変態を遂げます。

キノコムシと人間との関わり

前述したように、キノコムシはキノコに集まる習性があります。

キノコムシの仲間の多くがキノコを食べ、産卵し、そこで産まれた幼虫もまたキノコを食べて成虫へと成長します。

そのため、キノコ栽培の現場では害虫として忌み嫌われており、農薬を極力使用しない自然栽培では、防虫ネットをかけることでキノコムシによる虫害を防いでいます。

ほとんどのキノコムシは山野のキノコの周辺にひっそりと生息しているため、人間と関わる機会は決して多くありません。

キノコムシを飼ってみる

採集したキノコの中からキノコムシの幼虫らしきイモムシを見つけたら、腐葉土を敷いた飼育容器にキノコごと入れておきます。

キノコを腐らせてしまわないように、飼育容器は風通しが良く直射日光の当たらない場所に置くとよいでしょう。

腐葉土は常に湿り気を帯びていることが好ましいです。

乾燥してきたと感じたら、軽く霧吹きをかけてやりましょう。

霧吹きをかけすぎるとカビが発生する原因になってしまうのでご注意ください。

適切な環境を保つことが出来ていれば、幼虫はキノコの中でサナギになり、やがて甲虫となって姿を現します。

 

キノコムシの生態については、まだあまり研究が進んでいないため、解明されていない部分も多いと言われています。

キノコムシの一生を観察することで、新たな発見が生まれるかもしれません。

みなさんの手で、神秘のベールに包まれたキノコムシの生態を覗いてみては如何でしょうか。

(ライター:國谷正明)

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