オツネントンボという名前のトンボをご存知でしょうか。

オツネンの名前は越年。その名前の通りトンボのまま冬を超える珍しいトンボです。

 

冬にどこかでトンボを見かけたことがある人はもしかしたら、それはこのオツネントンボかもしれません。

今回はそんな日本では珍しい越冬型のオツネントンボについて詳しくお話していきます。

オツネントンボの特徴

オツネントンボはトンボ目アオイトトンボ科オツネントンボ属に分類されるイトトンボの一種です。

多くのトンボがヤゴの状態で越冬しますがオツネントンボは成虫のまま越冬することで有名です。

 

ヨーロッパやロシア、中央アジア、中国、朝鮮半島、日本では北海道、本州、四国、九州北部に分布し、大分県が日本の分布の南限とされています。

平地から山地にかけて抽水植物が多く生育する池や沼が生息場所。

 

体色は淡い褐色で雌雄共に成熟過程で複眼が青くなるだけでほとんど体色は変化しません。

体長はオスが37~41㎜、メスが35~41㎜。翅には青銅色の斑紋があり、後翅長はオスが20~24㎜、メスが21~24㎜です。イトトンボの中では割とがっちりとした体型が特徴的です。

 

ヤゴの尾にある鰓は3枚で木の葉の形状をし、河川や池などに生息していて、全長は27㎜程。

成体のオスはなわばりを持ち、翅を閉じて水辺で静止しています。

 

卵の期間は1~2週間ほどで年に1回産卵を行います。

ヤゴの期間は1.5~3ヵ月で7~9月にヤゴが羽化して成虫となり未熟のまま越冬して翌年交尾をし、植物の組織内に卵を産み付けます。

党機関は主に山林の木の皮の間や建物の隙間などで越冬し、年によって生存率が変動するとされています。

ホソミオツネントンボとの見分け方

ホソミオツネントンボは北海道から九州まで分布するトンボで成熟すると綺麗な青色になり、越冬する冬場は体色が枯草色に変わります。

オツネントンボよりも細身なことからこの名前が付きたとされています。

 

本州、四国、九州では田植えを終えたばかりの丘陵地の田んぼに沢山現れますが、東北や北海道で見かけることは稀です。

オツネントンボとの見分け方は、ホソミオツネントンボの胸部前面の濃褐色部の縁紋が大文字状に張り出している点と後翅と前翅の縁の紋がぴったりと重なる点。

オツネントンボは逆に胸部前面の濃褐色部分が直線的で張り出しておらず、前翅の縁紋より後翅の縁紋が付け根側にずれています。

ホソミイトトンボ

ホソミイトトンボは尻尾が細くスマートで胸部側面と腹端が青いイトトンボです。

頭部後部にある紋が大きいのも特徴で体長はオスが30~38㎜、メスは31~38㎜で関東以西の本州、九州、種子島に分布しています。

 

ヤゴは平地から山地の植生豊かな池沼屋湿地、緩やかな流れなど煮生息しています。

越冬型は8~10月にかけて、夏期型は6月下旬~8月上旬にかけて出現し、それぞれに外見が異なり、未熟なうちは淡褐色の地に黒色の斑紋があり、成熟すると褐色部分が越冬型は鮮やかな青色に、夏型は淡青緑色に変化します。また、越冬型に比べ夏期型は小柄です。

 

越冬型は羽化後水辺を離れて雑木林などに移動し、未成熟のママで冬を越し、越冬中は日当たりの良いがけ下の枯草や根に止まってじっとしている姿が観察されていますが気温が高い日は飛び上がって摂食活動も行います。

 

成虫のまま越冬する個体がいることでホソミオツネントンボやオツネントンボなどと比較されることも多いですが、オツネントンボと比べるとサイズが一回り小さく華奢であることと、生息域や発生時期などが微妙にずれていることから見分けることができます。

オツネントンボのまとめ

冬を越すトンボたち。細い体で冬の寒さをじっと超す姿は生き物の逞しさを感じます。

皆さんも冬にどこかでトンボを見かけたらそっと見守ってあげてください。

(ライター ナオ)