アメリカ大陸北部では一部シロクマとグリズリーの棲息域が重なり、食料や縄張りを巡って、たびたびシロクマ(ホッキョクグマ、ポーラーベア)とグリズリーベア(ハイイログマ)の戦いが発生していると言います。

両者の体格的なスペックを比較すると明らかにシロクマの方が強そうですが、実際のところどうなのでしょうか?

ホッキョクグマとグリズリーの対決動画

次の動画にはホッキョクグマとグリズリーが遭遇する珍しい2つのシーンが収録されています。

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餌場を巡っての攻防のようですが、いずれのシーンにおいてもグリズリーの方がホッキョクグマを威嚇し、ホッキョクグマが後ずさりして逃げています。

この動画だけを見るとグリズリーは好戦的でホッキョクグマは気が弱そうに見えますね。

ただし、ホッキョクグマはメスの体重が200~350kg、オスは400~800kgと言われており、グリズリーは170kg~500kgと言われています。

この動画を見る限り、グリズリーとホッキョクグマは同じくらいの大きさですので、グリズリーがオス、ホッキョクグマがメスであったと考えられます。

従ってこの動画ではホッキョクグマが逃げていますが、オスのホッキョクグマだった場合には全く逆の展開になるのではないでしょうか?

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実は争うばかりではない、シロクマとグリズリーの関係

シロクマとグリズリーは、遺伝的に近い生物でアメリカ大陸北部ではその棲息圏が重なりますが、実はお互い無駄な争いは好まず、避けあう関係にあるようです。
陸上での生活や繁殖を主とするグリズリーに対して、シロクマは水中での生活や氷上での繁殖に適応しています。

ですが、地球温暖化の影響で氷が溶け出しているからなのか、シロクマが徐々にその生息域を拡大して陸上にも進出して来た事で両者が遭遇する頻度が上がっています。

シロクマとグリズリーのハイブリッド マクファーレンズ・ベア

動物園などではその繁殖が行われている、シロクマとグリズリーのハイブリッド(混血)ですが、自然界でもその存在が確認されています。

2006年にカナダでハンターがシロクマと誤って狙撃したことがきっかけでその存在が確認されています。

シロクマとグリズリーのハイブリッド

このハイブリッド種には正式な名称はまだ与えられていませんが、ピズリー (pizzly)、グローラー (grolar bear)、ポリズリー (polizzly) 、ナヌラーク (Nanulak)などと呼ばれています。

そのスペックはいまだ不明ですが、ライオンやトラのハイブリッドのライガーがタイゴンなどが、元になる種のどちらよりも大きい事から、その体躯は地上最大の肉食獣であるシロクマ(ホッキョクグマ)を 上回る事が想像出来ますね。

ホッキョクグマは単一種だが19のグループがある!

ホッキョクグマは食肉目(ネコ目)イヌ亜目クマ上科クマ科クマ属に分類されるヒグマとごく近い種で、クマ属では最大種になります。

ホッキョクグマと呼ばれる種はただ1つだけですが、生息地域ごとに独立したグループに分けられており、その数は19にもなると考えられています。

このグループは亜種までの違いはありませんが、それぞれが微妙に異なる遺伝的な特徴を有しているようです。

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ホッキョクグマは地上最大の肉食獣!

ホッキョクグマはヒグマ(グリズリーなど)とともに、地上最大の肉食獣でもあります。

体長はオスで2~2.5メートル、メスで1.8~2メートル。体重はオスで400~600キロ、メスで200~350キロにもなり、大きなものでは、800キロに達する個体もいます。

記録に残る最大の個体は、1960年にアラスカで捕えられたものでなんと1002キロもあったそうです。

ホッキョクグマは個体差が大きい!

ただし、ホッキョクグマでは個体差が非常に大きくなり、生息域によってというよりも、その場所でのエサの影響により大きく変わるといえます。

ロシアのチュクチ海付近に生息する個体群がエサに恵まれており、もっとも大型化しているといわれています。

またホッキョクグマでは雌雄差も非常に大きくなります。

場合によっては倍以上の差になりますが、これほどの雌雄差が見られるのは、哺乳類ではホッキョクグマとアシカくらいです。

ホッキョクグマは海に住むクマ!

ホッキョクグマの学名『UrsusMaritimus』は『海に住むクマ』という意味です。

海(流氷上を含む海上)で長時間活動しているということからの由来です。

ですから、クマ類の中でもそういった生活スタイルに合わせて独自の発達や進化を遂げています。

たとえば、鼻孔を完全に閉じることができるということも、泳ぐなど水中での活動を主体にしている結果から獲得したものだと考えられています。

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ホッキョクグマは環境変化に強い!?

1990年代ころから北極の環境悪化が叫ばれ始めていましたが、ホッキョクグマは環境適応力が強いので絶滅の可能性は低いと考えられており、保護の必要はないとされてきました。

ところが、生息数の減少は顕著で、とうとう2006年に絶滅危惧種に指定されてしまいました。

ホッキョクグマは寒冷地仕様のクマ!?

ホッキョクグマにはいくつかの特徴があります。ヒグマなどと較べると、その多くはより寒冷地に適応したものだと考えられています。

ホッキョクグマの毛は白ではなかった!!

ホッキョクグマの最大の特徴は、吻端(口の周り)と足蹠(足の裏)の肉球をのぞくほぼ全身が白い体毛で覆われているということです。

それゆえに別名を『シロクマ』とも呼ばれているのですが、実はこの体毛は白色ではなく、無色透明なのです。

ホッキョクグマの体毛の秘密!!

ホッキョクグマの全身を覆うこの透明の体毛は、内部が空洞になっている特殊な構造をしています。

このため光を透過しながらも、反射して散乱するために、その身体が白く輝いて見えるのです。

この白い体毛は、氷の世界では保護色となって働きますので、ホッキョクグマの隠密行動を可能にしますので、見渡す限りの氷の世界であっても、狩りをするのに非常に有利なのです。

ホッキョクグマの体毛は二重構造だった!

ホッキョクグマの体毛は、長さ5センチ程度の短い『下毛』と呼ばれるものと、15センチ程度の長い『上毛』の二種類からなり、これらが密生して折り重なる二重構造になっています。

またこの透明な体毛は、極北のわずかな太陽光を最大限に通過させて皮膚に届きやすくする効果がありますので、ホッキョクグマは弱い陽光からでも熱を得ることが容易にできるのです。

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ホッキョクグマの皮膚は黒かった!!

そしてまた、意外にもホッキョクグマの皮膚は黒いのです。これも熱の吸収を効率良くするためだと考えられています。

こうして得られた貴重な太陽光による熱源は、最大12センチとも言われる分厚い脂肪層と内部が空洞になっている保温性の高い体毛によって保持され、逃げにくくなっているのです。

ですからホッキョクグマの身体からは赤外線の輻射が非常に少なくなっています。

このため、ホッキョクグマを赤外線カメラで撮影しようとすると、赤外線輻射の少なさと雪の反射光の影響により、写りが悪くなったり、まったく写らなかったりします。

このことは写真家などの間では、よく知られています。

ホッキョクグマが黄色や緑色になる!?

動物園などで飼育されているホッキョクグマでは、この特殊な体毛の空洞に汚れが入り込んでしまい、黄色っぽく変色することがよくあります。

また気温が高くなると、空洞内に藻が発生して、緑がかった色になることもあります。

『白クマ』ではなく、『黄グマ』や『緑グマ』になってしまうのです(笑)

こうした場合には、薄めた洗浄剤や消毒剤の入ったプールで泳がせるなどして、色を落とさなければならないのです。

もちろん自然下であっても、夏季には汚れや脂肪の酸化により黄色っぽく変色することがあります。

ホッキョクグマの足の構造!

ホッキョクグマの四肢には、それぞれ5本の指がありますが、体温低下防止と氷上での滑り止めのために足の裏にも長い毛がびっしりと密生しています。

表面にむき出しになっているのは肉球の部分だけなのですが、この肉球にも大量の皮下脂肪が貯蔵されており、熱の放散を防いでいるのです。

また指と指の間の一部には水かきが張ってありますので、効率よく泳ぐのに適している構造をしています。

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ホッキョクグマには意外にも瞬発力がある!

太く短い足と大きな足の裏は、ホッキョクグマの過大な体重を分散させることができます。

ですから、薄い氷の上に乗っても割れにくく、ホッキョクグマの氷上生活におおいに役に立っているのです。

またホッキョクグマは、意外にも瞬発力があります。滑り止めが付いた四肢を活かして、氷上でも俊敏な動きを見せるのです。

瞬間的にではありますが、最高時速55キロものスピードで走りまわることができますので、アザラシなどにとっては油断のならない存在なのです。

ホッキョクグマの前足の毛は、ライオンのタテガミ!?

ホッキョクグマのオスの前足の毛は、15歳頃まで長く伸び続けます。

どうやらこれは、ライオンのタテガミと同様に、強いオスのシンボルとして存在するようです。

ホッキョクグマの主食はアザラシ!

ホッキョクグマは、主食といってもよいほどアザラシをよく食べます。

ですからその体型は、アザラシを捕食するために特化して進化したという考え方があるほどなのです。

ホッキョクグマは、泳ぎが非常に得意です。

水中でアザラシを追いかけ回すほどのスピードを出すことはできませんが、アザラシを探すために延々と数時間以上も氷の浮かぶ海を泳ぎ続けることができますし、氷上に居るアザラシに海から近付くために、氷の下を潜水することもできるのです。

ホッキョクグマは泳ぐのに適した進化をした!

ホッキョクグマの頭部は、その身体の大きさに比べて小さくほっそりとした流線型をしています。

そしてそれに続く長い頸部を持っています。

ヒグマのように肩は盛り上がっておらず、すっとした『なで肩』になっているのです。

これらの特徴は、長時間の長距離の遊泳に適して進化したものだと考えられています。

小さな頭やなで肩は遊泳時に水の抵抗を減らす効果がありますし、長い頸は遊泳中の呼吸を容易にすることが可能だからです。

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ホッキョクグマの驚くべき遊泳能力!

ホッキョクグマは、氷の浮く冷たい海を延々と何時間も泳ぎ続けることが可能です。

非常にスタミナがあるということもそうなのですが、空気の入った軽い毛には浮力がありますのでその泳ぎをサポートしていますし、分厚い皮下脂肪とともに保温力に優れていますので、氷結寸前の海水中に長時間さらされても凍えることはありません。

また、呼吸を止めて潜水する場合、2分以上も潜ることができます。ですから、かなり離れた場所からでも、流氷の下から獲物に近づくことができるのです。

ホッキョクグマは遠泳が得意!

また一部ではありますが、ホッキョクグマの四肢の指の間には水かきがあります。

それを活かすことで、泳ぐスピードは瞬間的には時速10キロ以上にもなります。

長距離でも時速6~7キロ以上をキープしながら泳ぎ続けることができるのです。

ですからホッキョクグマを沿岸から100キロ以上も離れた、何もない海上で目撃したという例も、しばしばあるのです。

また泳ぎ疲れると流氷を見つけ、その上で過ごすことも多く、そのまま海流に流されながら果てしない長距離を移動することもあります。

ホッキョクグマは目も耳も小さいが聴力は抜群!

ホッキョクグマの目は頭の大きさに比べて小さく、視力はあまり良くないと言われています。

耳は丸くて小さいのですが、聴覚には優れているといわれています。

これは耳が大きいと体温を奪われやすいためだと考えられ、寒冷地に住む動物の耳は大抵小さくなっていることと同じであると思われます。

爪も他のクマ類に比べると、余り鋭くなく、小さいのが特徴です。

ホッキョクグマの嗅覚は、犬よりも優れている!

ホッキョクグマの嗅覚は非常に鋭く発達しています。研究者によっては、イヌの数倍以上も優れているという研究成果もあります。

氷上では、およそ1500メートル離れた獲物のニオイを嗅ぎ分けることができますし、氷の下を泳ぐアザラシのニオイを嗅ぎつけることができるとも言われています。

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ホッキョクグマはほぼ肉食性!

ホッキョクグマは、雑食性といわれるクマ類の中で、最も肉食性が強いと言われています。

その証拠として、歯の特殊化が挙げられています。

歯はその動物が何をよく食べるのかによって、それに適した形で発達しますので、歯の形を見れば、その食性を理解することができるのです。

一般にクマ類は肉食動物の特徴である裂肉歯(前臼歯と後臼歯の境目付近にある上下一対の巨大な歯で骨ごとかみ砕くことができる)があまり発達していません。

むしろ草食動物に近い、植物をすりつぶすのに適応した形態をしているモノが多いのですが、ホッキョクグマの裂肉歯は大きく鋭く、肉食に適応していることがわかります。

ホッキョクグマは植物も食べる!

ホッキョクグマは、主食と言ってもよいほどアザラシをよく食べます。種としては、ワモンアザラシ、アゴヒゲアザラシガが特に多いと言えます。

その他に、魚類を捕えたり、鳥類の卵を狙ったり、ときにはイルカやクジラの死がいを見つけるとそれも食べます。

夏季には陸上に上がりますので、そこに生えている植物を食べることもあります。

ノイチゴやスゲなどを食べますが、その量はあまり多くありません。

夏季は狩りをせずに絶食する場合も多く、線維質のものを中心に摂取することで、消化管の掃除をしているのではないかと言われています。

ホッキョクグマはとにかくアザラシが大好物!

ホッキョクグマは雑食性でなんでも食べると言いますが、要は極地では食べるものが少ないので、口に入るものはなんでも食べざるを得ないということなのです。

むしろホッキョクグマは、アザラシさえいればその他の獲物(食べ物)にはあまり興味を示さず、アザラシしか食べないと言ってもよいほどのアザラシ好きなのです。

ホッキョクグマは氷上を歩きまわったり、流氷に乗って海上をさまよいながら、つねにアザラシを探し求めています。

鋭い嗅覚をたよりに、遠方からそのニオイを嗅ぎつけて近付いていくのです。

ホッキョクグマのアザラシ狩り!

ホッキョクグマがアザラシを捕食する方法はさまざまです。

アザラシが氷上に居る場合には、海中を潜って進み、氷の下から近付いて、隙を突いて一気に襲いかかります。

アザラシは出産時には氷雪を掘って巣穴を作ります。

この巣穴は閉じられて外界から隔絶されているのですが、ホッキョクグマはその鋭い嗅覚でこれを見つけ出し、氷の壁を突き破ってアザラシの親子に襲いかかるのです。

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ホッキョクグマは待ち伏せが得意だった!

ホッキョクグマの狩りで特筆すべきは、流氷上にあるアザラシの呼吸穴で待ち伏せをするということです。

アザラシは海中を泳ぎ回っていますが、クジラなどと同様に呼吸するためには海上に顔を出さなければなりません。

氷の張った海では、呼吸ができる場所が限られていますので、呼吸穴と呼ばれる氷の裂け目をよく利用します。

ホッキョクグマはそこでアザラシが呼吸をしに来るのを待ち伏せしているのです。

アザラシが氷の下から顔を出したところをすばやく捕えてしまうのです。

また、呼吸穴から出て氷上で一服しているアザラシに対しては、海中を潜って呼吸穴から飛び出していき、氷上で襲いかかることもあります。

こうしたホッキョクグマの狩猟の方法は、母子での生活中に母クマから学習して会得するものなので、その後の狩りの上手下手はこの時に決定されるとも言われています。

アザラシが減るとホッキョクグマが飢え死にする!

体重500キロのホッキョクグマの個体では、その身体を維持するためには1日当たり1万2千~1万4千カロリーが必要だと言われています。

これは1週間に1頭の割合でアザラシを捕食しなければならない計算になります。

食料確保の状況によって同種であっても、各個体の大きさに違いが出るのは当然なのです。

近年では地球温暖化の影響を受けて、アザラシの生息数が減ったり、生息地域やその分布が大きく変わるなどしています。

これにより、アザラシを十分に捕食することができないホッキョクグマが飢え死にするというケースも増えているのです。

ホッキョクグマはおいしいところしか食べないグルメだった!

実は、ホッキョクグマは肉食性だといっても、アザラシを捕まえて頭から尾まですべて食べてしまうわけではありません。

アザラシの腹周りを中心としたカロリーの高い脂肪が集中する部分しか食べないのです。

マグロでいえばトロなどのおいしい所だけを選り好んで食べるグルメだったのです。

ッキョクグマの消化器官は、脂肪を分解・吸収するのに適していますが、タンパク質の消化吸収は効率が悪いのです。

したがって脂肪の多い部分でないといくら食べてもホッキョクグマの身体にとってはあまり栄養にはならないようなのです。

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ホッキョクグマは食べ残した獲物を貯蔵しない!

ホッキョクグマには、ヒグマのように食べ残した獲物を土に埋めたりして貯蔵する習慣がありませんので、食べ残した部分はそのまま廃棄してしまいます。

氷上では、隠すような場所がないですし、氷の中に埋めても見つけ出せないからなのでしょう。

ですからホッキョクグマが廃棄した食べ残しは、極北に生きるホッキョクギツネや鳥類たちの貴重なエサになるのです。

このような習性ですから、ホッキョクグマにとっては、定期的にアザラシを捕食できるかどうかが生きる鍵を握っていると言っても過言ではありません。

呼吸穴にはイルカもやってくる!

また氷上の呼吸穴で待ち伏せをしている場合、アザラシ以外にも呼吸のために海棲動物がやってくることがあります。

特にシロイルカなどの小型の哺乳類は、ホッキョクグマにとっては手ごろな大きさの獲物だと言えますので、かまわずに捕食してしまいます。

セイウチには反撃されて、死に至ることも!

ホッキョクグマはときにはアザラシよりも大きなセイウチを狙うことがあります。

ただしこれは、これはセイウチの幼獣に限られます。

セイウチは群れをなして生活していますので、たとえ目の前にいたとしても、警戒心が強くなかなか幼獣を狙うチャンスはありません。

ましてやオスのセイウチはホッキョクグマよりはるかに大きく、その牙は長く鋭いので、反撃されてホッキョクグマの方が負傷したり、最悪死に至る場合もあるのです。

ホッキョクグマはヒトを捕食するか!?

もしヒトとホッキョクグマが偶然に出会ってしまったとしたらどうなるでしょう?

冬の海氷上で出会うことなどは皆無でしょうから、夏の陸上でという想定で類推してみましょう。

ホッキョクグマは陸上ではほとんど絶食をしているので、狩りをすることがありません。

ヒトの肉は脂肪が少なく、ホッキョクグマにとってはあまり栄養にはつながらないはずです。

よほど飢えに苦しんでいる場合でなければ、ホッキョクグマにヒトが捕食される可能性は低いのではないでしょうか。……たぶんですが(笑)

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ホッキョクグマは長距離移動する

ホッキョクグマは、流氷とともに移動することが多く、おもにアザラシを求めて冬季には北上し、夏季には逆に南下するようなルートで北極周囲を周回しています。

一日の移動距離は歩行や遊泳の場合は70キロに達することもありますし、年間では記録の残る限りで1120キロもの長距離を周回した個体もいます。

また歩行や遊泳以外でも、流氷に乗って海流まかせの移動もしますので、わずか4か月で5千キロ以上も移動した個体もいたそうです。

ホッキョクグマも巣を作る!?

ホッキョクグマは、通常は巣を持ちませんが、夏季の日差しが強過ぎる場合や暴風雪などの悪天候を避けたり、シャチや巨大なホッキョクグマのオスなどの外敵から逃れる場合、氷雪や土中に穴を掘ってこもることがあります。これはおもに子どもを連れたメスに見られる行動です。

ホッキョクグマの生殖活動!

ホッキョクグマは、春季にあたる3月~6月にかけて交尾をします。

受精卵は、メスの体内ですぐに着床しない場合もありますので、妊娠期間は6~9か月ととても幅があります。

メスは、子育てをしている場合には発情しないと言われています。

ですから通常では、その出産は2~4年間隔になるのですが、食料が豊富な場合には、毎年出産することもあるようです。

ホッキョクグマは厳冬期に出産する!

妊娠したメスは、通常11月~翌1月の厳冬期に出産をします。

交尾をした後、メスは出産に備えて氷雪の中に巣穴を掘っておきます。

ホッキョクグマは冬眠をすることはありませんが、妊娠したメスは巣穴の中でじっとして冬季を過ごすことが多く、そのまま巣穴の中で出産します。

ホッキョウグマの幼獣はとても小さい!

ホッキョクグマの出産は、通常2頭でまれに3~4頭の場合もあります。

生れた子どもは体長30センチ程度で体重は600グラムほどですので、ホッキョクグマのあの大きさからは想像もできないほど小さなものです。

生れた直後は、眼はまったく見えず、短い体毛がある程度です。

幼獣は、およそ3カ月間は、巣穴の中にいて母乳で育てられます。1か月ほどで目が見えるようになり、2カ月で歯が生えはじめます。

この間に一気に10キロほどの大きさにまで成長します。

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ホッキョクグマは30年以上生きる!

その後、春を過ぎると巣穴から出て、母子での活動を始めます。

母クマと同じ獲物を食べられるようになると、幼獣は急激に成長していきます。

食料事情にもよりますが、4か月で22キロ、半年で40キロにもなります。

およそ2~3年までは母クマ、兄弟と行動をともにし、そして独立していきます。

ただし兄弟のうちの半数近くは、成獣になれません。それだけ厳しい世界なのです。

独立した子は生後5~6年で性成熟して、生殖活動を始めます。

ホッキョクグマの寿命は30~35年程度と考えられていますが、野性下では20~30年ほどだといわれています。飼育下ではアメリカの動物園で45年生きた個体もいます。

ホッキョクグマは陸上ではゴロゴロしているだけ!

北極では、6月を過ぎると氷盤が割れ始めるので、ホッキョクグマは氷上や海上での生活ができなくなってしまいます。

そこでアザラシ狩りを諦め、陸地へと移動を始めます。

氷のない夏の時期、通常であれば4~5カ月ほどの間、ホッキョクグマは陸地での生活を余儀なくさせられます。

陸上でのホッキョクグマはほとんど狩りをせず、何も食べない絶食の日々が続きます。

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ゴロゴロと寝転がりながら体力の温存を図り、極力その活動を低下させてエネルギーの消耗を防ぎます。たまに植物などを食べることがありますが、これはエネルギーの獲得にはつながらず、消化管の清掃などの目的があるようです。

あまりの空腹から、鳥類やカリブなどを狙うこともありますが、狩りをして消費されるエネルギーが、その捕食によって補われるほどではありませんので、空腹を紛らわす行動だとも言われています。

また人家が近くにある場合、生ゴミのニオイを嗅ぎつけてゴミ捨て場に現れることもあるようです。
こうして再び氷が出現し、海に出てアザラシを狩る日をじっと待っているのです。

ホッキョクグマとヒグマの交雑種がいる!

ホッキョクグマは分類上、ヒグマときわめて近い関係であることがわかっています。

生物学的には、およそ15万2千年前にホッキョクグマとヒグマが枝分かれしたと考えられています。

そのため、両者の遺伝子レベルでも、まだ亜種といえるほど近い関係にありますので、お互いに交配して、生殖能力のある子孫を残すことが可能なのです。

アラスカやカナダ北部の沿岸部などホッキョクグマとヒグマの生息域が重複する地域では、野性下でもこの交配種が実際に存在しており、『ハイブリッド』と呼ばれています。

『ハイブリッド』は、ホッキョクグマのような白色(透明)の体毛を持ちますが、体型はヒグマに似て盛り上がった肩と鋭く長い爪を持っているようです。

地球温暖化のホッキョクグマへの影響は!?

ホッキョクグマがヒグマと枝分かれをしたと考えられる15万年前以降、地球では氷期と間氷期を何度も繰り返しています。

北極の環境も現在以上に激変しておりますので、その中を生き抜いてきたホッキョクグマは、環境の変化に強い動物だと考えられてきました。

現在の地球温暖化の影響で、北極の高温化による氷の減少が現れていますが、これがホッキョクグマにどのような影響をもたらすのかはまだ判然としません。

ただし、データ的にはその個体数は減少しており、ホッキョクグマが絶滅危惧種に指定されているのは事実なのです。

陸に上がっても海に居続けても生き残りは難しい……

ホッキョクグマが、今後氷のない海での生活が困難になり、陸上に上がって生活スタイルを変えていくのか、それとも氷のなくなった海に固執して残り、ひたすらアザラシを求めてさまよい続けるのでしょうか……。

ただし、水中ではアザラシの泳ぐスピードにはとてもかないませんし、陸上ではヒグマとの生存競争が待ち受けていますので、どちらにしても生き残りは容易ではありません。

北極圏の環境変化とともにホッキョクグマの絶滅の危機が叫ばれているのも当然と言えば、当然のことなのです。

ホッキョクグマは共食いをする!

ホッキョクグマの特徴的な行動の中で、『共食い』ということが挙げられます。

その愛嬌のある姿からすれば、イメージダウンになるかもしれませんが、このことはその生活環境において、いたしかたないものだと考えられています。

夏は省エネで乗り切るホッキョクグマ!

夏から秋にかけて、アザラシの群れはあまり陸に上がらず、氷のなくなった海で活発に活動をしますので、ホッキョクグマにとってはその捕獲が難しくなります。

ホッキョクグマは、この間陸上に上がり、絶食を強いられますので、極力エネルギーの消耗を防ごうと活動を低下させてしまいます。

夏になる前に十分な食料を確保できたホッキョクグマは、この厳しい夏の季節を乗り切ることができますが、十分にエサを食べられなかった個体は、狩りをすることもできずに飢えていきます。

こうして飢餓に陥ったホッキョクグマは、他のホッキョクグマを捕食の対象にするしかなくなってしまうのです。

ただしこれは夏の時期に限ったことではなく、いつの季節であっても、他に獲物が見つからなければそうせざるを得ず、生きていくためには仕方がないともいえる行動なのです。

狙われるのは、やはり弱い子グマ!

動きが早く、攻撃的で巨大なオスのホッキョクグマは、子どもを連れたメスのホッキョクグマを見つけると、まず子どもを狙って襲いかかります。

そのために、天敵がいないと言われるホッキョクグマであっても、子どもを連れたメスは常にオスのホッキョクグマの接近を非常に警戒しています。

オスのニオイを嗅ぎつけると、メスは子どもを連れてさっさと逃げます。

その時一時的に氷雪を掘って身を隠すこともありますが、ニオイを消すために海中に逃げ込むことが多く、尾に子どもをつかまらせて、なるべくオスから離れるように泳いで逃げるのです。

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メスは子どもを助けられない!

実際にオスのホッキョクグマに子どもが襲われると、メスは自分の子どもを助けようとする行動を取りますが、それがムリだとわかるとさっさと諦めて退散してしまいます。

子どもの次に狙われるのが、自分自身だからです。

メスのホッキョクグマはオスに比べておとなしいと考えられていますし、子に対する愛情にあふれた行動を取りますが、それでも極限状態になると自分が生き残るために、自分の子どもを食べてしまうことがあります。

ホッキョクグマの天敵はホッキョクグマだった!

ホッキョクグマの子どもは、通常2頭で生まれてきます。

しかしそのうち半数は、オスによって捕食されてしまうともいわれており、成獣になるのがいかに難しいかがわかります。

ホッキョクグマには天敵というものがほとんど存在せず、北極の氷上においては無敵とも言える存在なのです。

しかし、子グマやメスグマにとっては、ホッキョクグマのオスが強烈な敵となるのです。

その他には、ごくまれに流氷上や海中でシャチに狙われることがあるくらいです。

温暖化の影響で海氷が減り、必然的にホッキョクグマが海中を泳いで移動することが飛躍的に増えています。

長距離を長時間かけて泳ぐことになりますので、シャチなどの大型の肉食の海棲哺乳類に捕食される危険性が高まっているとも言われています。

ただしシャチは偏食傾向がとても強いので、ホッキョクグマを好んで食べるかどうかはよくわかっていません。

哺乳類も共食いをする!

自然界での同種同士の共食いは、エサのない状況であれば、仕方のないことだと言えます。

昆虫やクモなどでは比較的頻繁に起こりますし、狭い飼育ゲージで飼っていれば、共食いシーンを目撃する機会も多いことでしょう。

哺乳類での共食いの事例はかなり少ないと言えますが、まったくないわけではなく、特に飢餓状態に陥った場合には、非常手段としてほとんどの肉食性および雑食性の動物に起こりうる事態だと言えるのです。

飢えていなくても共食いをする!?

ナショナルジオグラフィックによれば、共食いは比較的頻度の高いホッキョクグマばかりでなく、チンパンジーでも見られ、その動画が発表されています。

また本来は草食性であるはずのカバでも、仲間の死体を食べる映像が記録されています。

またインドなどに生息するナマケグマは、アメリカの動物園でその母グマが自分の子どもを2頭も食べてしまった事例がありますが、これは飢餓という状況ではありませんでした。

したがって単純に食べる物がなくて飢えているという理由以外でも共食いが発生しうることが考えられるのです。

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共食いは栄養学上理にかなっている!

自然界において、共食いにおける最大の利点は、自分の身体に必要な栄養素がすべて存在していることなのです。

同種の健康な動物であれば、臓器から各細胞に至るまでほぼすべてが揃っているといえます。

それらを食べたからといって、それがすべて消化吸収されて再利用されるとは限りませんが、栄養面から言えば理にかなっていると言えるのです。

共食いのリスク!

ただし、当然弊害もあります。まったく健康な状態で争い、どちらか一方が相手を倒し、倒された方が食われるという状況であるならともかく、自然界においては一方が病死したり、不健全で弱っている状況で共食いが起こる可能性の方が高いと言えます。

その場合捕食する側は、その病気を引き起こした病原菌や寄生虫に感染する可能性が非常に高いと言えますし、衰弱した状態であれば、他の病原菌に感染する可能性もあります。

ですから哺乳類などの大型の動物では、そういったリスクがあることからも、そう頻繁に共食いが起こっているわけではなく、切迫した状況でない限り極力共食いを避ける傾向にあると考えられています。

ホッキョクグマは道具を使う!

ホッキョクグマは、クマ類の中でも特に知能が高いとされています。

南紀白浜アドベンチャーワールドで飼育されている個体は、道具をつかってエサを取ることで知られています。

棒や筒などを使い、ぶら下げてあるエサの肉をたたき落とすという行動を取るのです。

こういった道具を使う行動は、類人猿以外ではほとんど見られることがありませんので、世界の動物学者を驚かせました。

ホッキョクグマは、動物園で人気者!

ホッキョクグマは一般のおとなにも、子どもたちにも人気がありますので、国内の多数の動物園や施設で飼育され、展示されています。

日本の動物園では、人工飼育下での自然繁殖が成功しており、飼育記録も34年9カ月を達成しています。

動物園では、さすがにホッキョクグマに好物のアザラシを与えることはできませんので、そのエサは馬肉が中心です。その他にサケやオオナゴなどの魚類を与えているそうです。

また、野菜や果物も合わせて与えることで栄養バランスを保っているようです。

特に線維質の豊富な植物として、クロ-バーの葉を好んで食べているそうですし、サツマイモが好物だったという個体もいるそうです。

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ホッキョクグマのストレス解消には魚獲り!

またニジマスなどの魚をプールに放すとホッキョクグマは喜んでそれを捕えようとします。

これが狭い畜舎での生活のストレス解消にもなっているようです。

ホッキョクグマは暑さには弱いですから、夏はぐったりとしています。

日陰で休んだり水中に潜ったりして暑さを凌いでいます。

ときどき大きな氷の塊をプレゼントされ、喜ぶ姿がテレビで放送されることもあります。

ホッキョクグマの保護!

ホッキョクグマが生息する5つの国(カナダ、アメリカ、ロシア、ノルウェー、デンマーク)では、1973年からその保護を目的にした協定を結んでいます。

アラスカ先住民のイヌピアトは、クジラを捕獲して必要な肉を解体して得ると、その残りをわざと海岸に残していき、ホッキョクグマなどのエサにしています。

一種の自然信教に近い考え方からのようです。

ホッキョクグマが食料に!

ただしホッキョクグマは、伝統的にイヌイットの食料にもなってきました。

またヨーロッパの北極探検隊もホッキョクグマを捕獲して食料にすることがよくありました。

ホッキョクグマの肉は好んで食べられましたが、肝臓には高濃度のビタミンAが含有されています。

ヒトが食べるとビタミンAの過剰症を起こし、最悪死に至ることがあります。

ですからそれを熟知しているイヌイットたちは、けっして肝臓は食べませんし、飼いイヌにも絶対に与えることがありません。

ビタミンAは過剰摂取すると死亡する!

ビタミンAはレチノールという物質で、人間が生きていく上で必要不可欠な栄養素です。

欠乏すると夜盲症(鳥目)や骨の変形、皮膚の異常などを起こします。

かなり多数の食品に含まれていますので、現在ではよほどの偏食でない限り欠乏症は起こりにくく、逆に過剰摂取による中毒症状がよくみられるほどです。

特にホッキョクグマやクジラの肝臓を始めとして、サメなどの南方の魚類にも多く含まれていますので、ときどき過剰摂取による食中毒症状を起こすことがあります。

ビタミンAの過剰症では、まず頭痛や嘔吐から始まり、やがて皮膚症状が出ると、顔面や全身の皮膚が徐々にはがれるという恐ろしい症状を呈し、死に至ります。

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ホッキョクグマの生肉は危険!

また、ホッキョクグマの肉にはセンモウチュウ(旋毛虫)が寄生している場合が多いので、生食は非常に危険です。

センモウチュウがヒトの体内に入ると小腸で繁殖して、浮腫や筋肉痛を起こします。やがて呼吸困難を起こして死に至る場合もあるのです。

ホッキョクグマの毛皮は有用な防寒具!

ホッキョクグマの毛皮は、厳寒の北極の気候に十分耐え得るほどのものですから、人間にとって非常に有用な防寒具になります。

古来よりとても人気があり、毛皮の価格は高騰し続けています。
かつてはその毛皮目的でも狩猟の対象になってきました。

ホッキョウグマは南極でも生きられる!?

ホッキョクグマはもちろん北極にしか生息していませんが、ワシントン条約でその移動が禁止される以前に行われた実験では、南極でも問題なく生活できることがわかっています。

考えてみれば、北極と南極では、大陸か海かの違いはありますが、その環境はほぼ同じだと言えますし、ホッキョクグマの好むアザラシも種類こそ異なりますが、十分な頭数が生息しています。

『シロクマ』と呼ばないで……

正式な和名はホッキョクグマですが、『シロクマ』と呼ばれることもあります。

和名がホッキョクグマと付いた由来なのですが、面白いお話しなのでご紹介しましょう。

ホッキョクグマが日本にはじめて連れて来られたのは1902年です。

場所は上野動物園ですが、当時ツキノワグマのアルビノ種(白色個体)がすでに展示されており、『シロクマ』と名付けられていたそうです。そのため展示にあたっては、『ホッキョクグマ』と表記することになったそうです。

かつてホッキョクグマが日本に流れ着いた!?

かつて国内に『白いクマ』が流れついた記録があります。

しかし、これはどうやらホッキョクグマではなく、ヒグマのアルビノ種だと考えられています。

確かに北海道には流氷がやってきますが、そこにホッキョクグマが乗っかって来たのかどうか疑問です。

現に北方領土である国後島には、ヒグマの白色個体群が生息していることが判明していますので、おそらくこちらかではないかと思われます。

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ホッキョクグマの異常行動!

ホッキョクグマは、現在極地におよそ2万5千頭生息していると考えられています。

前述したように、海氷のない夏の時期は陸上で生活しますが、それ以外は主となるエサのアザラシを探し求めて、海氷上で生活をしています。

しかし近年この氷の消える時期が長引いているので、必然的に陸上で待機する時間が延長されています。

陸上では狩りをせず、ほぼ絶食に近い状態で過ごしますので、それが長引くことで飢えに苦しんだり、異常な行動を取ることにもなります。

今までけっして見られなかった行動として、妊娠中のメスのホッキョクグマを追跡し、その巣穴を襲うことが挙げられます。最悪とも言える共食い行動です。

クズリのような獰猛な動物が、冬眠中のクマを襲うことがありますが、それに近いかそれ以上の行動です。ホッキョクグマの生活環境がもはや危機的な状況にあると言えるのかもしれません。

極地も化学物質で汚染されている!

このほかにホッキョクグマの生活環境に深刻なダメージを与えているのが、ヒトが排出したさまざまな化学物質(公害物質)です。

一般に北極や南極などの極地では、定住する人もほとんどなく、環境汚染はないと考えがちですが、実はおおきな間違いなのです。

中緯度や低緯度の人口密集地域から排出された汚染物質などは、風や海流に乗って、世界中に分散していくのです。

また北極の環境を考える場合、特にロシア北西部には原子力発電所や油田が数多くありますし、北極海を航行する船の数もかなりの数に上ります。

こういった施設や船がひとたび放射能漏れや原油流失などの事故を起こせば、北極圏の生態系は壊滅的な被害を受ける可能性があるのです。

現在、極地の環境汚染が徐々に進み始め、そこに住む動物たちにも深刻な影響を与え始めているのです。

PCB汚染が拡がっている!

特に深刻なモノは、過去に猛威をふるった毒性の高いPCB(ポリ塩化ビフェニール)です。PCBは電気の絶縁性が高く、かつて絶縁体や塗料などに安易に大量に世界中で使用されてきた化学物質です。

ダイオキシンに似た化学構造で、発癌性が強く、脂肪組織内に蓄積しやすく、この結果皮膚疾患や内臓疾患、ホルモン異常などを引き起こします。

日本国内では1970年代に使用禁止になりましたが、現在でも大量に残されていると考えられています。

食物連鎖の上位に行くほどそのダメージは深刻!

PCBは体内で分解されませんので、食物連鎖の上位に行くに従って濃縮されていき、大型の動物ほどその被害を受けることになります。

つまり1匹の小魚などに含まれる量はたいしたことはなくても、それを大量に食べる大型魚類では濃縮されて蓄積し、さらにそれを大量に食べるアザラシでは、高濃度で蓄積されていきます。

最終的に汚染されたアザラシを食べるホッキョクグマにいたっては、より深刻な影響が現れるといったことになるのです。

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ホッキョクグマの生殖が不可能に!?

2015年にデンマークの学者が「PCBが、ホッキョクグマの陰茎骨をもろくしている」と発表しました。

ホッキョクグマの各個体を複数調べたところ、その脂肪組織内に高濃度のPCBを含む個体では、陰茎骨の骨密度が低く非常に折れやすい状態にあることがわかりました。

他の骨も同様の状態にありますが、陰茎骨は小さくとてもダメージを受けやすい骨なのです。

そして当然のことながら、この陰茎骨が弱く折れやすい個体では、生殖が不可能になることが考えられます。

したがってこのままPCB汚染が広がれば、ホッキョクグマの繁殖に影響を及ぼすことは必至であり、個体数の減少に拍車をかけることにつながってしまうのです。

化学物質の汚染は極地に深刻な影響を招いている!

PCBの他にも、フッ素化合物、DDTや水銀、重金属などの化学物質は、現在極地に拡がりつつあります。

人間の少ない極地で生息する動物たちの生活環境にも少なからぬ影響を与えていると考えられ、深刻な状況を招きつつあるようです。

衰弱したホッキョクグマは見ることができない?

こういった北極の環境汚染や環境変化に実感がわかず、あまり人々の目が向けられないのは、その代表格であるホッキョクグマの衰弱した弱々しい姿を我々が見ていないせいだと指摘する科学者もいます。

衰弱して、やせ細ったホッキョクグマがいても、ヒトのカメラに捉えられる前に他のホッキョクグマやホッキョクギツネなどにすぐに食べられてしまうので、私たちはその姿を見ることができないのだと思われます。

野生のホッキョクグマを見に行こう!

ホッキョクグマの自然下での観察ポイントとして有名なのがカナダのマニトバ州にあるチャーチルという街です。

ここには毎年10月下旬に数百頭~千頭ものホッキョクグマが集まってくるのです。

チャーチルは北緯58度75分、ハドソン湾に面した港町です。

チャーチル川という大きな川の河口になっており、川の水と冷たい海流とがぶつかり合うことで、ハドソン湾内では、最初に氷結を開始する場所でもあるのです。

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ハドソン湾のホッキョクグマ

海に氷がなくなる6~7月ごろになると、ホッキョクグマは陸地に上がります。

チャーチルに集まってくるホッキョクグマたちもハドソン湾周辺などカナダ北部の各地に上陸して夏を過ごします。

他の地域のホッキョクグマと同じように陸上ではほとんど狩りをせず、ほぼ絶食の状態で過ごします。

ホッキョクグマは冬眠をしませんが、冬眠中のヒグマ同様この時期は体温が下がり、身体の機能は低下して基礎代謝量が下がり、身体全体がいわゆる『省エネモード』になります。

ただしこの地域のホッキョクグマは、ゴロゴロ寝ころんでいるのではなく、ゆっくりと歩きまわるので、『歩く冬眠』などといわれることもあります。

こうしておよそ3~4カ月かけて、ゆっくりとチャーチル付近に移動していくのです。

11月上旬になり、しっかりした氷ができ始めるとホッキョクグマたちは流氷に乗り、アザラシを探し求めて極地方向へと移動しはじめます。こうしてまた6~7月ごろまでホッキョクグマたちは海上(氷上)で暮らすのです。

ホッキョクグマの観察と研究!

ハドソン湾に面したチャーチル付近では、ホッキョクグマの観察や研究が進んでいます。

地球温暖化といわれ、その影響で北極付近の氷にも大きな変化が見られます。

解氷が進んで、夏季に陸へ上がるホッキョクグマの移動が早まると、その体重は一週間当たり10キロほど軽くなると言われています。

陸上ではほぼ絶食状態になりますので、ヒグマとは逆に食物の豊富な春に集中して獲物を捕えて体脂肪を蓄えておかなければならないのですが、体重が軽いということは十分なエサを食べていない状態ということになります。

10キロ以上も軽いまま夏を迎えると、ホッキョクグマの体力は落ち、活動能力も著しく低下してしまうので、場合によっては夏を乗り切ることができず、飢え死にしてしまうこともあります。

何とかして生き延びようと、子グマを狙った共食いがよく見られるのもこの時期です。

1982年から1992年のデータですが、ハドソン湾で生まれたホッキョクグマの子グマの生存率はわずか44%しかありませんでした。

半分以下なのです。これに環境悪化や環境汚染が加わればさらに低下するのは必定で、ホッキョクグマが絶滅の危機を迎えてもおかしくありません。

シロクマ効果というものをご存知ですか?

心理学に、『シロクマ効果』というものがありますが、ご存知でしょうか?

人間は、「シロクマのことを考えないで下さい」と言われると、かえってシロクマのことを考えてしまい、それが頭から離れなくなってしまうという不思議な現象のことです。

被験者を3グループに分けて、それぞれ『シロクマ(ホッキョクグマ)』の映像を見せます。

そのうち一つのグループにはその映像をしっかり見てシロクマのことをよく覚えておくように言い、もう一つのグループには、白クマについては覚えないようにしてすぐ忘れてくださいと言い、

さらに対照として何も言わずに見せるグループに分けました。

一年後に、このときに見せた『シロクマ』の映像についてもっともよく記憶していたのは、覚えないようにしてすぐ忘れてくださいと言っておいたグループだったのです。

このことから人間の記憶は、忘れようと努力すればするほど、かえってそのことが強く印象付けられ、長くそれが残ってしまうということになるようです。

シロアメリカグマ

ホッキョクグマとは別に、『白いクマ』が存在します。
かつて上野動物園にいたツキノワグマのアルビノ種(白色個体)などの特殊な個体ではありません。
アメリカグマの亜種で『シロアメリカグマ』と言います。

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シロアメリカグマはカナダに居る!

シロアメリカグマは、カナダのブリティッシュ・コロンビア州の限られた地域にのみ生息しています。

実際には、毛色が白い個体よりも黒い個体が多く、白い個体は十頭に一頭ほどだとも言われています。

それなのに白い個体ばかりが目立ちますし、よく取り上げられますので、『シロアメリカグマ』と名付けられ、黒い個体であっても『シロアメリカグマ』として扱われます。実質上、両者の違いは毛色だけなのですから仕方がありません。

シロアメリカグマはごく普通のクマだった!

面白いことに、このアメリカグマの亜種には、毛色の違いによって、『シロアメリカグマ』『クロアメリカグマ』『クリイロアメリカグマ』『アオアメリカグマ』などがいます。

シロアメリカグマは、体長は120センチから180センチ、体重は70~140キロの中型のクマです。

ツキノワグマとヒグマのほぼ中間ほどの大きさです。

一般的なクマ類同様に雑食性で、木の実や果実から昆虫、サケ、小型の哺乳類などなんでも食べます。

ごく普通に、私たちがイメージするクマと変わりありません。

シロアメリカグマは新種のクマではなかった!

シロアメリカグマは、1900年ごろにアメリカの動物学者がカナダでのクマの毛皮を調査中に白い毛皮があるのに驚き、現地調査をして発見したとされています。

ただし現地人の間では、以前からこの『白いクマ』の存在が知られていましたので、『コロンブスのアメリカ大陸発見』と変わりありません。

シロアメリカグマは、当時は新種のクマと考えられていましたが、その後の研究で、アメリカグマの亜種であることがわかりました。

白くなるのは毛色の劣性遺伝が理由だった!

シロアメリカグマは、『岩国のシロヘビ』などのような、いわゆるアルビノ種から派生したものとは異なる成り立ちであると考えられています。

アルビノ個体は、突然変異によりメラニンなどの色素が欠乏したものです。

ですから、アルビノ種のクマでは瞳孔などにも色素がありませんので赤い目をしていますし、通常

では鼻の先端が黒くなりますが、色素が欠乏すると白っぽい色になるのが特徴なのです。

ところがシロアメリカグマでは、目も鼻も通常のアメリカグマと変わりありません。

どうやら体毛を白くする遺伝子の働きによって、体が白くなるのです。

この白い毛を発現させる遺伝子は劣性であると考えられますので、黒い個体が多いのは当然なのですが、黒い毛をもつ両親からも白い毛の個体が誕生することがあります。

(ライター オニヤンマ)

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