アシナガバチは、国内でよく見かけるハチの代表格

アシナガバチは膜翅目(ハチ目)スズメバチ科アシナガバチ亜科に属するハチの総称で、日本国内では11種(12種と数える場合もあり)、世界では何と1000種以上もの仲間がいます。

スズメバチ、ミツバチとならび、国内でよく見かけるハチの代表的な種であると言えます。

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アリとハチの違い

そもそもハチは膜翅目に属する昆虫のうち、アリでないものと定義されています。

アリはハチの仲間の一部であるというわけです。

アリとハチは同じ膜翅目に属し、両者の区別はとても複雑でありますので、ここでは割愛しますが、ちょっと乱暴な言い方をすれば、翅のあるものがハチで、翅のないものがアリだということです。

もちろん例外はあります。

翅を持つアリもいれば、翅のないハチもいます。

しかし翅がないということが前提のはずのアリが、膜翅(まくし)目に属しているのは、とても不思議な気がしますが・・(笑)

アリバチってアリなの?ハチなの?

アリバチという名のアリなのかハチなのか紛らわしい種がいます。

アリバチのオスはきちんと翅を持ち、見た目がいかにもハチなのですが、アリバチのメスは翅がなく、歩くことしかできませんので、行動はアリそのものに見えます。

しかしアリバチのメスは腹部に毒針を持っていて刺しますので、一見アリなのですが、やはり中身はハチです。

う~ん・・どうなっているんでしょうか(笑)

 

アリバチの仲間は世界には4230種もおり、日本にも17種いるとされていますが、実はオスメスがはっきりと特定されていません。

また混同されている種もいるようなので、その実態はよくわかっていません。

また逆に社会生活を営むアリでは、生殖活動をするために、その頂点にいる女王アリにもオスのアリにも翅があり、繁殖期には飛び回ります。

オスのアリなどは、どう見てもハチにしか見えませんので、実に紛らわしい存在です。

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いかにもハチですが・・

ハチと言えば、集団で社会を構成している、毒針を持っていて刺す、花にやって来て蜜を集めると言ったイメージがありますが、こういった特徴があるのは、ミツバチやアシナガバチなど、ごく一部のハチだけです。

ハチの仲間は種類も多く(日本国内だけで4千種、世界では20万種以上!)その生態や特徴は非常に多様で、あえて共通点を述べるなら、卵から孵化して幼虫になり、さなぎに変化して羽化をする「完全変態の昆虫である」ということと、一対の複眼と3個の単眼を持つこと、四枚の翅を持つことくらいです。

膜翅目の昆虫の特徴は、その名の通り膜状の薄い四枚の翅を持つことです。

大きな前翅と小さな後翅は、開くと鈎状の突起が引っかかることで前後が連結され、大きな翅となり飛行能力が向上するのです。

ちなみにハチによく似ているアブは、双翅目(ハエ目)に属し、翅は二枚しかありません。

刺すハチと刺さないハチ

すべてのハチが巣を作って社会を構成していたり、毒針を持っているわけではありません。

ハチには、外敵を刺すハチと刺さないハチがいます。

刺すハチを細腰亜目、刺さないハチを広腰亜目に分類しています。

同じハチの仲間でも身体の構造そのものが違うのです。

そもそもハチの持つ毒針は、産卵管が変化したものです。

従って針はメスにしかありません。

スズメバチもミツバチも働きバチはメスのみなのです。

働きバチは生殖活動をせず、産卵しませんので、産卵管は不要なので毒針に変化していったのでしょう。

アシナガバチだけ例外的にオスの働きバチがごく少数存在しますが、こういう個体は生殖能力もありませんし、当然毒針を持っていませんので、外敵を刺すこともできません。

また刺さないハチ(広腰亜目)も針を持つには持っていますが、それはもっぱら本来の産卵管として、木や土などの中に卵を産みつける場合に使われます。

 

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ハチのひと刺し

さて、スズメバチの襲撃シーンなどを見ると、これでもかというくらい、何度も何度も相手に毒針を刺しまくり、執拗に攻撃をしています。

ハチの持つ毒針は強靭で平滑なので、何度でも抜き差しが可能なのです。

ところが、ミツバチの毒針だけはのこぎり状になっており、逆棘と呼ばれる返しが付いています。

これによりヒトの皮膚などの弾力があるものに深く刺してしまうと、構造上抜けなくなってしまうのです。

ミツバチ自身がこれを引き抜こうとすると、毒針は抜けずに腹部が引き裂かれてしまい、やがて死んでしまいます。

したがって、ミツバチのひと刺しは、命がけなのです。

ちなみに毒を貯留している毒嚢は毒針と一緒にミツバチの身体から分離されます。

毒針が刺さったままであると、毒嚢は収縮していきますので毒は注入し続けられてしまいます。

 

ハチの腰のくびれは・・

さて、同じハチの中でもその身体の構造で分類される広腰亜目と細腰亜目ですが・・・

ハチが外敵を刺すためには、針のある腹部がより大きく自由に動く必要があります。

たとえば、カブトムシの腹部に毒針があったとしても頭を押さえてしまえば、あの硬い身体と大きさですから、まず刺されることはありませんよね。

逆にサソリのように・・腹部というより尾ですが、自由に広範囲に動かすことが可能ならば、的確に相手の急所を狙い、確実に仕留めることができます。

こうした目的のため、細腰亜目のハチの体節間は非常に細くくびれた構造なっており、腹部の可動範囲が非常に広く、自由に動くようになっているのです。

ちなみに、スタイルの良い、腰のくびれた女性を「蜂腰(ほうよう)」と呼ぶのも、このハチの体節間のくびれに由来しているのです。

 

くびれの境を正確に言うと・・

正確に言いますと、実はこのくびれは胸部と腹部の境界ではありません。

くびれているのは腹部の第一節と第二節の間なのです。腹部の第一節は前伸腹節といい、胸部に癒合しているのです。

したがってこのくびれから下は膨腹部と呼ばれており、厳密には腹部の第二節以下の六節を指します。

くびれのおかげで獲物を捕食できない!

毒針を自由に動かすためのこの腹部の構造には、重大な欠点があります。

細くくびれた腰のおかげで、働きバチの食道は非常に細くなってしまい、固形物を飲み込むことができないのです。

つまり人間でいうところの流動食しか摂取できないのです。

ですからせっかく狩りをして獲物を捕えても、自らそれを食べることができません。

スズメバチやアシナガバチなど肉食系の働きバチは、捕えた獲物をかみ砕いて、それを適当な大きさに丸めた肉ダンゴを作って巣に持ち帰ります。

獲物自体が重たくて運ぶのが大変だということもありますが、幼虫が食べやすいように、その下ごしらえをしているともいえるのです。

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幼虫からごほうびが!

幼虫はエサを与えられると、そのお礼というわけではありませんが、口から栄養液を分泌してこれを働きバチに与えます。

この栄養液の中には各種アミノ酸をはじめとした有用な栄養素が豊富に含まれていて、働きバチの活動を支えているのです。

某スポーツドリンクはこのことに着目し、その成分を解析して開発されたものです。

そのようなわけで、ハチの社会では、幼虫は働きバチ(成虫)がいなければエサを食べることができずに死んでしまいますが、働きバチ(成虫)もまた幼虫がいなければ栄養が得られずに死んでしまうという、相互依存の関係であるのです。

 

働きバチはメスだけ!

社会生活を営むハチには、役割に応じて女王バチ、オスバチ、働きバチなどがおり、その生活は同じ種であっても、まったく異なります。

女王バチは、最初にまずメスばかりを産み続けます。

これが働きバチになるのです。

働きバチが一定数を超え、巣の運営がうまくいくようになってから、ようやくオスを産むようになります。

オスはおもに生殖のために存在しているので、秋の繁殖期に向けて育てられますが、アシナガバチではまれに働きバチとして存在することもあります。

 

ハチの姉妹が力を合わせて母を支える!

通常一つの巣では、一匹の女王バチが産んだ働きバチですべて構成されるので、働きバチはすべてその女王バチの子どもであり、お互いに姉妹ということになります。

女王バチは一度交尾すると、その精子を蓄えておくことのできる特殊な器官を持つので、連続した産卵が可能なのです。

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女王バチは群れの中心

女王バチはその名とは異なり、群れを率いて統率するような存在ではありません。

唯一生殖をおこなうことができる、群れの中心的な存在に過ぎないのです。

他の働きバチたちは、生れた当初から生殖能力がまったくないのではなく、女王バチの出すフェロモンによってその生殖能力を抑えられていると考えられています。

卵を産めなくなった女王バチは捨てられる!

また女王というその地位も、特権階級のように思われがちですが、老化してしまったり、病気になってしまい産卵能力を失うと、すぐに巣から追い出され、見捨てられてしまいます。

巣を追い出された女王バチには生活能力がまったくありませんので、すぐに飢え死にしてしまいます。

こういった例はごくまれですが、残された働きバチたちは、すぐに次の女王バチを選定し、育成していきます。

 

女王になるためにローヤルゼリー

ミツバチの社会では、働きバチやその幼虫は蜜を食餌とするのに対し、女王バチはローヤルゼリーによって育ちます。

これにより他の働きバチよりも大きな女王バチとなることができるのです。

アシナガバチでは、女王バチと働きバチの形態的な差はほとんどなく、一回りほど大型であること以外にはほとんど区別がつきません。

アシナガバチは、国内でよく見かける中型から大型のハチです。

特にセグロアシナガバチは、北海道を除く全国各地でよく見られます。

体長は25ミリほどで、黒地に黄褐色のシマ模様に近い斑紋があります。

その他キアシナガバチ、フタモンアシナガバチ、コアシナガバチがよく見かけられます。

 

スズメバチに似ているけれど・・

アシナガバチの生態は、同じスズメバチ科のスズメバチとよく似ています。ただしスズメバチに比べ小型で非力なので、その攻撃力はずいぶん劣ります。

アシナガバチはスズメバチに比べて飛ぶスピードが遅く、また小回りの利く素早い動きができないので、動きの速い昆虫を捕らえることが苦手です。

したがって狩りをする場合も動きの緩慢なイモムシやケムシなどをよく狙います。

捕えた獲物を咬み砕いて肉ダンゴを作り、それを巣に持ち帰り幼虫に食べさせるのです。

また植物ではヤブガラシの花を好み、蜜を集めます。

 

アシナガバチの天敵は・・

アシナガバチの最大の天敵は、何あろうか、同属のスズメバチなのです。

スズメバチの仲間は、アシナガバチ、ミツバチ始め、他のスズメバチであろうともその巣を容赦なく襲い、幼虫をエサとして持ち去るばかりでなく、成虫もエサとしてしまうのです。

 

集団のスズメバチに狙われた場合、巣は壊滅し、成虫も幼虫も全滅させられてしまうことが多いのです。

特にヒメスズメバチは、アシナガバチの巣をよく狙います。

その他にアリもアシナガバチの巣を狙う天敵です。

アシナガバチの巣は低い場所に作られることが多いので、アリに狙われやすいのです。

巣作りに際して、アシナガバチの女王はアリの侵入を防ぐため、巣の上部や巣と木の枝のつなぎ目などにアリの嫌うニオイを付けておきます。

 

女王バチの活動

アシナガバチは秋に交尾をし、単独または集団で冬眠をして冬を越します。

スズメバチに比べると活動期間はやや短いと言えます。

4〜5月にかけて冬眠から目覚めた女王バチは、しばらくは集団になって過ごし、時期をみて四散してそれぞれ巣作りを始めます。

アシナガバチは記憶力がよい!?

アシナガバチは、自分自身の産まれた巣を強く記憶していると言われています。

したがって冬眠から目覚めた女王バチは自身が産まれた巣の近くに戻ることが多いようです。

またヒトに巣を破壊されてもそれに懲りずに同じ場所に巣を作ることがあり、それがかなわない場合でも近くにとどまり、あらためて巣作りを始めることも多いのです。

最初は女王自ら子育てをする!

集団から飛び立った女王バチは、手ごろな場所を選んで巣作りを始めます。

まずは小さめの三部屋ほどの巣を作り、その段階で最初の産卵をします。

その後はたった一匹で、巣を拡げると同時に子育てもする忙しい日々を送ります。

幼虫は20日ほどで蛹を経て羽化し、最初の働きバチになります。それ以降、女王バチは産卵に専念し、幼虫の世話はお姉さんである働きバチに委ねることになります。

 

いかにも・・なアシナガバチの巣

アシナガバチの巣は、いかにも「蜂の巣」という形をしています。それはわたしたちがよく見かけるからでもあるのですが・・。

ハスの花托(ハスの実)を「はちす」と呼びますが、これはその形がアシナガバチの巣によく似ていることから来ているそうです。

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巣は強靭で弾力がある!

アシナガバチの巣の大きさは直径10センチ程度で、その規模は最大でも100匹程度がせいぜいです。

熱帯地方ではスズメバチのように大型で30センチもあろうかというような巣がよく見られますが、国内ではそれほどの規模のものは見つかっていません。

巣は、樹皮の繊維を素材としており、それを唾液で固めて作られるので、スズメバチの巣に比べてとても強靭で弾力に富んでいます。

オスの働きバチがいる!

他の種では働きバチがほぼ100%メスであるのに対し、アシナガバチではごく少数ですが、オスが働きバチとして存在します。

アシナガバチのオスは、その体色がメスよりも薄く、体型はがっちりとしたマッチョ系をしています。

ただし毒針を持っておらず、人間に攻撃してくることもありません。

 

アシナガバチの活動は7~8月ごろがピークで、それ以降は女王バチ候補とオスバチを育て、これらが巣立つとやがて活動終了となります。

巣は解散してしまいますが、生き残った働きバチやオスバチは巣の周りでウロウロしていることもあります。

新女王バチは交尾をし、その年の活動を終えて越冬の準備に入ります。

越冬できるのは交尾を終えたメス(新女王バチ)だけで、働きバチやオスバチはすべて死滅します。

こうして女王バチは木の洞や石の隙き間など、おもに自分の育った巣の近くで冬眠します。

アシナガバチは益虫!

アシナガバチはおとなしい性格で、巣に近づいたり、いたずらをしかけたりしなければ、ほとんど刺してくることはありません。

むしろ、ガの幼虫(ケムシ)などの害虫を駆除してくれる益虫であるといえるのです。

 

女王バチは攻撃性がないので、単独で巣作りをしている時期にはほとんど危険性はありません。

その後巣が大きくなり、働きバチの数が増えるにつれ、羽化した働きバチが攻撃性を増してきますので、巣に近づくと攻撃される(刺される)危険性が増します。

特に巣の大きさが最大になる7〜8月にかけての被害が目立ちます。秋以降、活動は低下していきますので、まったくといってよいほど危険性はありません。

アシナガバチの駆除経験

かつて私の家のベランダにアシナガバチが巣を作ったことがあります。

その時は、子どもたちに危害が及ぶのを避けるため、やむを得ず、自ら殺虫剤を撒いて働きバチを駆除し、巣を取り除きました。

スズメバチと違い、巣を直接攻撃してもこちらに向かって反撃してくることはなく、生き残ったハチたちはそのままどこかへ逃げ去って行きましたので、むしろ拍子抜けしたくらいです。

ところが翌年も・・というか、ほぼ毎年のように、ほぼ同じ場所に、同じように巣を作っているので驚きます。

懲りないというべきか、よっぽど気に入った場所なのでしょうかねえ・・もちろん私も見つけ次第、同じように駆除してしまいましたが(笑)

ヤブガラシがお好みのようで・・

アシナガバチは「ヤブガラシ」の花の蜜を好むようです。

そういえば庭のあちこちにこの「ヤブガラシ」が自生していました。だからなのでしょうか、毎年懲りずにわが家に巣を作るのは・・

ヤブガラシは、「薮枯らし」と書くブドウ科の多年草で、つる草です。

日本中どこにでも生えているので、恐らくみなさんも見たことがあるはずです。

ヤブガラシの由来は、薮を枯らすほど生育が旺盛であることから来ているようです。

 

小さな房状の白い花を咲かせ、オレンジ色の花托があるのが特徴です。

根茎は幅広く伸びていくので、駆除が非常に困難な雑草で、根ごと取り除かなければ、すぐに芽を出してきます。

若芽は食用にもなり、漢方名で「烏斂苺(うれんぼ)」という利尿や解毒に効果のある生薬として利用されることもあります。

別名をビンボウカズラ(貧乏葛)とも言うそうですので、厄介な雑草として、相当嫌われているのでしょうか・・(笑)

ハチと遭遇してしまったら・・

アシナガバチを含めてハチはいつでもどこでもヒトを刺すのではありません。

超攻撃的なスズメバチを除けば、自分の身に危険が迫った時か、巣を攻撃された時に限られるのです。

ですから偶然ハチと遭遇したとしても、何もせずにすっとかわせばよい話ですし、巣が近くにあることが分かったなら、すぐにそこからそっと立ち去れば、まず攻撃される(刺される)ことはありません。

巣作りと子育てに過敏になっている夏の時期に、むやみに巣に近づいたり、攻撃してしまった場合の反撃が怖いのです。

人間の生活圏にいる!

アシナガバチの巣は、民家の壁や軒下など、人間の生活圏で作られる場合が多く、それゆえにヒトとの関わりも多いのです。

巣はヒトの目線よりも低い場所を選ぶことが多いので、オトナではその存在になかなか気付きにくく、作業などをしている時に巣に近づき過ぎてしまった場合に刺されることがあるのです。

また洗濯物に紛れ込んでいるなど、偶然刺されてしまうこともあります。

逆に子どもは目線が低いので、アシナガバチの巣を見つける機会が多いので、巣を発見して棒で突っついていたずらをしたり、素手で触ったような場合に刺されることがよくあるようです。

襲撃されたらまず逃げる!

アシナガバチに刺されないようにする予防策は、まず巣に近づかないこと、巣のそばにいる見張り役のハチを刺激しないことが第一です。

もし敵と認識されて攻撃を受けた場合には、とにかく逃げることです。

直線的に逃げてもアシナガバチの方が速いですので追いつかれる可能性があります。

また、逃げるときに大声を出すとかえってハチを興奮させてしまい、いつまでも追いかけられてしまいますので、なるべく姿勢を低くして、ジグザグに動いて逃げる方が有効です。

実はアシナガバチは猛毒を持っている!

おとなしい性質のため、あまり危険視されていませんが、実はアシナガバチは、スズメバチに匹敵する猛毒を持っているのは確かです。

ハチの毒針から分泌される毒素は、酵素毒といわれるものが中心で、複数の物質から構成されています。

これにより痛みや腫れを引き起こし、場合によってはアレルギー症状や血圧の低下、組織の破壊などが進みます。

またアナフィラキシーショックを起こすと、命に関わることがあります。

 

恐怖のアナフィラキシーショック!

アシナガバチの毒は『アミン』と呼ばれる痛みやかゆみを起こす成分、血球を破壊する『低分子ペプチド類』や『各種酵素』など複数の物質からできています。

毒そのものの強さよりも、これらの成分によるアレルギーの急性症状である「アナフィラキシーショック」が怖いのです。

アシナガバチの毒はスズメバチよりも弱めだと言われていますが、アナフィラキシーショックは毒の強さとはかかわりなく起こります。

またスズメバチよりもアシナガバチの方が、刺された時の痛みがより強いと言われています。

最近10年間(2005〜2014年)の、日本国内のハチ刺傷による死者は189人でしたので、平均で毎年約19人の方が亡くなっていることになります。

ただしそのほとんどはスズメバチによるものであると考えられています。

刺されたら応急処置をしてすぐ病院へ!

万が一アシナガバチに刺されてしまった場合、すぐにその場を立ち去らなければなりません。

巣が近くにあるということで攻撃してきた可能性が高いからです。

その場に居続けて応急処置を始めてしまうと、仲間が集まって来て、第二第三の攻撃を受けることになりかねません。まずは安全な場所に避難して下さい。

それから傷口をきれいな水で洗いながら、毒を皮膚から絞り出して下さい。毒素を取り除くことが先決です。

そこまでが応急処置といえるものです。

アシナガバチに限らず、ハチに刺された場合はけっして応急処置で止めず、傷口を冷やしながら、必ず病院に行き医師の診察を受け、手当てをしてもらって下さい。

アシナガバチの巣の駆除

前述したように、アシナガバチはケムシなどを退治してくれる益虫でもありますが、ヒトを刺して危害を加える可能性のある害虫という認識もあります。

家の周囲などで巣を見つけたら、やはり駆除することを考えなければなりません。

私のように、自分で駆除することを考えてもよいですが、危険を伴います。

住所地の自治体では対応してくれないところも多いので、民間の駆除業者に連絡をしてみてください。通常は迅速に対応し、駆除してもらえるはずです。

アシナガバチの駆除は、巣が小さいほど容易であるといえます。

女王バチのみの場合、一切攻撃をしてきませんし、働きバチが数匹程度では連携も取れていないので、攻撃性も低いといえます。ただし油断は禁物です。

駆除の実際は・・

業者では、スプレー式の殺虫剤を使うことが多いようです。

通常、風のない穏やかな日に、働きバチが少ない時間を狙ってスプレー式の殺虫剤を巣に向かい吹き付けます。

 

この一撃で働きバチは逃げ出してしまいます。

働きバチがいなくなって刺される危険性が無くなったら、あとは巣をもぎ取ってしまえば、駆除はそれで完了です。

実に簡単に終わってしまいます。

巣に戻ってきた働きバチたちも、巣がなくなっていることに気付くと、四散してしまうようです。

もし全滅を狙うのならば、夕方以降の時間帯に駆除することになります。

アシナガバチは昼行性なので、周囲が暗くなる夕方にはほぼすべてが巣に戻ってきます。

ここで一気に片を付けてしまおうというわけです。

夜間に駆除する場合、懐中電灯などを使うとアシナガバチは明かりに向かってくる性質があるので危険です。

電灯に赤いセロファンを貼り付けるなどすると、気付かれないようです。

アシナガバチに限らず、ハチを駆除する場合には、万一を想定して、肌の露出を避けるなど万全の準備をしてから取りかかるように心がけてください。

アシナガバチの毒がガンに効く!?

昨年、海外の医療雑誌に興味深い記事が載りました。

南米のアシナガバチの毒素中に含まれている「MP1」という成分が、ガン細胞を破壊する作用があるというのです。

しかもガン細胞だけを狙い打ちにできるので、副作用のほとんどない有用な治療薬になる可能性があるという論文の内容だそうです。

毒と薬というものは紙一重の存在です。まだまだ研究の段階ですが、今後大いに期待できるかもしれません。

(投稿者:オニヤンマ)