秋の夜長を彩る虫の声。

マツムシやスイッチョン等に混じって、キリギリスの存在も忘れてはいけません。

そんなキリギリスに関するお話です。

キリギリスの特徴

キリギリスはバッタ目キリギリス科キリギリス属に分類される昆虫のうち、日本の本州から九州地方に分布するヒガシキリギリスとニシキリギリスの総称です。

ヒガシキリギリスは青森県~岡山県、ニシキリギリスは近畿地方~九州地方に分布しています。

それぞれの成虫の体長はヒガシキリギリスが24.5~37.0㎜、ニシキリギリスが29.0~39.5㎜で、どちらもメスの方がやや大きい傾向にあります。

緑色を基調とする緑色型と褐色を基調とする褐色型に分かれ、翅の長さなども個体群によって長短の変異があります。

一般的に葉ヒガシキリギリスでは翅が短く側面に黒斑が多く、ニシキリギリスでは翅が長く黒斑が1列程度かあるいは全くありません。

 

両者とも触角は長く、前脚には脚の直径よりも長い棘が列生しています。

オスは前翅に発音器を持ち、メスは腹端に長い産卵器を持っています。

 

夏に成虫が現れ、他の昆虫などを捕らえて食べます。

鳴き声はギーチョンやギーギーチョンなど、ギーとチョンの組み合わせ。

キリギリスの生態

キリギリスはバッタ類と比べると体が短くて体高が高く、脚と触覚が長いのが特徴です。

翅の形は雌雄や種類によって違いますが、音の受容体が前脚の中程にあります。

 

比較手に日当たりの良い草原を好み、トノサマバッタなどと比べると草丈が高い所にいることが多い昆虫です。

ススキやセイタカアワダチソウなどの茂みに潜み、危険を感じると擬死により落下して落葉の下に潜ろうとしたり、茂みの深い方へ深い方へ、下へ下へと素早く逃げ進んでいく性質で、むやみに人間の前に飛び出してくるようなことはありません。

 

特にメスは鳴かず、オスでも人間の足音を聞いて鳴くのを止めるので、居場所を特定するのが難しいと言われています。

卵は3~4月に地中で孵化し、地上に脱出した初齢幼虫は草本上で生活を始めます。

 

初齢では体が小さいので、主にイネ科草本植物の種子や花粉を食べて生長しますが、成長するにつれて鱗翅目の幼虫や小型の他の直翅目なども捕食するようになり、共食いもします。

縄張りを形成し、侵入してくる同種同性の個体や他種に対して激しく攻撃を仕掛けたり、捕食したりします。

 

幼虫が成長したり、メスが産卵できるようになるには肉食は欠かせず、飼育下でも削り節やドッグフードなどを与えるのが一般的です。

早い地域では6月頃から成虫に羽化し、寿命は約2ヶ月程度。

遅くても11月までにはすべての野生個体が死亡します。

キリギリスの飼育

鳴く虫の代表的存在のキリギリスですが、実はスズムシなどと違って繁殖飼育方法は確立されていません。

キリギリスの孵化には未解明な点も多く、適切な温度の上下が適切な回数加わらないと休眠プロセスが完了せず、孵化しないのではないかと言われています。

そのため、孵化が産卵の翌年のこともあれば、最大4年後になることもあるのだそうです。

キリギリスの呼び方や漢字表記

古くはコオロギのことをキリギリスと呼んでいたと言われていますが、その漢字の表記がなかなか難しい。

「螽斯」や「蟋蟀」

 

これがキリギリスの漢字なのですが、どうしてこのような字があてられたのかは定かではありません。冬にはすでに死んでいるはずのキリギリスに冬のつく漢字が充てられているのも謎です。

 

キリギリスはその独特の鳴き声から機織虫(はたおりむし)や機織女(はたおりめ)と呼ばれていた時代もあり、東北地方では今でもぎっちょ、ぎすなどと呼ばれているそう。

漢字で表記されることは一般的にはほとんどありません。

(ライター ナオ)