アシナガバチは、スズメバチによく似た、スズメバチ科・アシナガバチ亜科に属するハチの総称です。

ここではアシナガバチが益虫なのか、その謎に迫ります。

アシナガバチの生態

アシナガバチは、1000種以上が知られており、日本には11種が生息しています。

そのなかでも、セグロアシナガバチ、キアシナガバチ、フタモンアシナガバチがよく見られ、都市部や市街地ではコアシナガバチを見ることができます。

アシナガバチの生態は、スズメバチに似ています。

アシナガバチは、スズメバチ同様に、チョウやガの幼虫(芋虫)を捕食します。捕らえた芋虫は、かみ砕いて肉団子にして巣に持ち帰ります。

 

アシナガバチとスズメバチの巣の材料は、ほぼ同じです。

その構造は、スズメバチの巣が、光沢のある立派な外皮があるのに対して、アシナガバチの巣にはそれがなく、ハスの花托のようです。

 

また、アシナガバチの巣は、ホオナガスズメバチ属と同様に樹皮の靭皮繊維を素材とします。

それに唾液由来のタンパク質などを混入して巣材とするので、スズメバチの巣よりも強靭な傾向にあります。

そのため、スズメバチの巣は洋紙に、アシナガバチの巣は和紙にたとえられることがあります。

 

アシナガバチのなかでも熱帯地方に生息する種は、直径30cm以上の大きな巣を作ります。

ところが、日本では、直径10cm程度の巣しか作りません。

 

アシナガバチの女王蜂は、比較的低い乾燥した物陰や樹幹に巣をかけます。

3部屋も作るとすぐに卵を産んで、幼虫は20日ほどで成虫になります。

 

この蜂の巣は、蓮の実のような形につくられて100部屋を超える巣もあります。

中央部の幼虫が巣立つと、新たに卵が生み付けます。

ミツバチのように蜜をためることはありません。

アシナガバチに刺されたら?

アナフィラキシー・ショックにより、死亡することもあります。

アシナガバチの性質は、スズメバチに比べればおとなしく、巣を刺激したり蜂を素手で触ったりしない限りは、まず刺してきません。

 

アシナガバチの毒は、スズメバチに比べれば弱く、毒そのものによる死亡はまれですが、しかし、アナフィラキシー・ショックにより死亡することもあるので、過去に刺されたことがある人は注意してください。

アシナガバチの巣の除去

アシナガバチの巣は、4~5月頃に見つけた場合は、比較的容易に除去することができます。

ただし、万が一に備えて、厚手のシャツや手袋、帽子、長靴などを着用して、肌の露出を極力抑えます。

 

アシナガバチの巣の除去は、市販の殺虫剤でおこないます。蜂専用の殺虫剤は、ガス圧が高いのでオススメです。

巣の除去は、暗くなってから風上から殺虫剤を吹きつけます。

 

朝になって巣の状態を確認し、アシナガバチがいなければ巣を落としてゴミに出します。

その際も手袋などを着用して、蜂や巣に直接ふれないように気をつけます。

なお、アシナガバチの巣は、6月頃からどんどん大きくなっていくので、少しでも不安に感じたら、無理はせずに、自治体や業者に相談をしましょう。

アシナガバチは益虫?

アシナガバチは、農作物や庭木につく毛虫やカメムシ、イモムシなどさまざまな害虫を幼虫のエサとします。

害虫を狩ってくれるので、実は益虫とされています。

 

特に、初夏の頃までに、アシナガバチの巣があると、モンシロチョウの幼虫が増えないので、殺虫剤やネットを使用しないでキャベツ等の栽培・収穫ができます。

多少の食痕が残りますが無農薬なので、家庭用として重宝されています。

 

というわけで、アシナガバチは益虫なのですが、その一方で、子供の遊び場や通学路などに巣がある場合に、子供がイタズラをして刺される被害も発生しています。

子供がよく通る場所にアシナガバチの巣を見つけた場合は、益虫ではありますが、巣の駆除を依頼したほうがよいでしょう。

アシナガバチのまとめ

以上、アシナガバチについていかがでしたか?

アシナガバチは、巣を刺激しない限りはおとなしい蜂です。

 

とはいえ、毒をもってますし、アナフィラキシー・ショックで死亡することもあります。

もし見かけた場合は、イタズラなどせず、駆除を依頼するか遠くから観察するにとどめておきましょう。

(ライター ジュン)