バッタは日本を含む東アジア、アフリカ大陸など広域に生息するごく普通の主に体色が緑色の昆虫です。

しかし体色が茶色になる事もあるようです。

バッタとイナゴ

ごく普通の草むらや河川敷、特にイネ科の植物の付近によくいるトノサマバッタの体色は緑色です。

トノサマバッタは、イネ科の植物を食べてしまう為に農業被害がある昆虫です。

トノサマバッタの活動期は7~11月、大きさはオスで5cm、メスで3,4cmです。

どっしりした体つきで発達した後脚をもつ緑色の体が特徴です。

 

それより大きいバッタの仲間は、ショウリョウバッタです。

オスで約7cmにはなります。体は細く黄緑色です。

外見はキリギリスに似ています。

 

バッタ目はバッタ亜目とキリギリス亜目に大別されています。

バッタとキリギリスは近い種であり、草食性です。

 

では時折大群を作ったり佃煮になるイナゴとは何でしょうか?

漢字では「蝗」、皇帝を思わせるような立派な漢字です。

 

この漢字は中国では虫の中の虫とされ、高密度の群衆をつくり群れを率いて長距離移動ができる昆虫という意味です。

トノサマバッタを含むバッタ亜目バッタ上科にはバッタ科もありますが、イナゴ科もありイナゴも入っています。

 

バッタとされる昆虫が大部を占めるバッタの仲間ですが、緑のバッタとイナゴは近い種類の昆虫です。

このような分類は、新事実あるいはそれまでヒトが知らなかった事実の発見などにより急に変わる事があります。

バッタの大群

イナゴは時折大群となって空を黒く埋め尽くし襲来し、農作物だけではなく地上に出ている草のようなものを全て喰いつくします。

現代でも中国、ロシア、アフリカなどで発生する事があります。

 

アフリカで群衆となるバッタはサバクトビバッタです。

砂漠の砂のような体色が特徴で、バッタ亜目バッタ科に分類されるバッタです。

 

渡りを行い移動しながらアジア中東部にまでやってくる事があるバッタです。

別名のひとつにエジプトツチイナゴという名があります。

 

日本では、明治13(1880)年8月頃北海道において300億匹以上ともいわれているイナゴの大群を経験しています。

その大群は十勝地方で発生し、二手に分かれ石狩地方にまでやってきました。

 

バッタはアイヌ語で「パタパタ」といわれます。

バッタ塚というものも北海道には存在します。

明治10年代の北海道開拓時代は、寒さと貧しさとバッタの大群との闘いでした。

 

この農業被害をもたらす虫については、バッタとされていたり、イナゴの大群と呼ばれたりします。

そこまで大群ではないものの、2016年には、神奈川県相模原市付近でバッタ科の昆虫緑色のコバネイナゴが数百匹ほど確認されています。

バッタの性質

体色が茶色になったバッタは、巨大な群れと化し体力的にタフになり性質も狂暴になっています。

この状態は「群衆相」といわれます。

普段の緑色のバッタは「孤独相」とされます。

 

このような大群はバッタが相変異を起こした状態であると考えられています。

相変異については説明が難しいのですが、バッタ目の虫に関しては緑色のバッタがある状況下に置かれると、茶色になり獰猛になり群衆を率いるような性質となって作物を食い荒らすような状況に変異する事です。

 

この相変異という現象は、バッタ目の昆虫において特に顕著にみられ、甚大な農業被害をもたらすことから昔から研究がされていました。

1912年には大群のイナゴと普通のイナゴは同じ昆虫なのではないかという研究結果が発表されました。

 

それより以前には別の研究者によって、大群を率いる群衆相となるイナゴと孤独相といわれるイナゴは違う種であると確認されていたようです。

しかし、今ではイナゴは(またはバッタ目の昆虫は)、ある一定の条件下では相互に変異するものであるというような観点から研究されているようです。

その後も蝗害(コウガイ)はおき、今ではゲノム情報、遺伝情報などからも何故そのような現象が起こるのか研究されています。

変異するバッタ、もしくはイナゴ

相変異の要因として、外的要因とバッタたちに潜む内的要因があると考えられます。

外的要因としては餌の不足があげられます。

 

生物は環境や餌の状況などにより姿や生存方法などを変える事もあります。

ただ、いくら餌がないからといってもちょっと大きい群れではなく、空が暗くなるような大群になり体の色まで変えて性質も変わっているというのは、外的な環境要因のみでは説明がつかない現象です。

 

もともとバッタはそのように大群をつくる昆虫ではありません。

緑色の草むらにいるバッタは、ぴょんぴょん飛び跳ねますが、空を飛ばずだいたいの場合は一匹です。

このようなことから、バッタの相変異という現象は、一概に環境による密度変化や餌の不足からのみでは説明し難い部分が残っています。

茶色になったバッタ

群衆相と化したバッタのあまりの豹変具合に、緑のバッタと大群になる茶色の昆虫は別の種であるという事もやはりいわれます。

全ての種類のバッタが群衆相になるというわけでもありません。

 

はっきりした事実は分かりませんが、とても面白くゾッとする現象です。

茶色のバッタと緑のバッタはどう違うかと聞かれたら、あまり違いはない、と答えても良いように思います。

(ライター:おもち)